物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

「さらば財務省!」

2008-05-11 20:01:30 | 社会・経済

高橋洋一著「さらば財務省!」を読んだ。といっても財務省の中の話とか経済に仕組みとか金融の知識とかが私にまったくないので、お話としてだけである。

この著者は合理的思考の持ち主ではあるが,市民の苦労はあまり知らない人ではないのだろうか。まあ、それは著者が超エリートなのだから仕方がないだろう。またご自分の能力があることから、そうでない人のことを慮ることは少ないようである。

世間の人が年金のことで怒っているのも少しの年金ももらえなくなった人が社会保険庁に行って申し出ても記録とか書類が不十分だとか言われて門前払いされるからなのだ。このような官庁の体質こそがいま問われているのである。

「役所を国民が信用し過ぎだ」とかいってもそういうシステムをつくってきた官庁や国が十分に異議申し立てを出来るようなシステムを作って来なかったことに起因している。それを単に国民の咎とするのはなんといっても無理がある。

そういう点からいって、この書の終わりの方で著者が書いているように「ミス必ずは起こるのだから、毎年各人に確認のための書類を発行するべきだ」との指摘は、もしそうしていれば5,000万件の間違いとか不明とかの記録の多くは正せたであろう。むしろそういう観点がもっと早く出てこなかった点に現在の政府とか官庁のどうしようもなさが浮き彫りになる。

もちろん、その提起はいいが、責任のない国民に責任転嫁をすることは止めたがいい。そういうことをいうのは残念ながら今となっては遅すぎる。

大体、年金は戦争中に軍備の資金が足りなくなってその資金調達のために、年金の制度をつくったとかいわれている。そういう不純な動機がはじめにあるのに、だまされていた国民こそかわいそうである。そして、官庁のそういう事情をもらせば、秘密保持の観点から罪に問われるという体質がある。

著者は民主党を非難しているが、民主党がいろいろの事実を明らかにしてきたということから国民はやっと不誠実な政府とか官僚の実態を知ることができたのである。その役割を完全に無視してしまっているようである。それではあまりにも一面的にしかすぎないのではないか。ともあれ、読み物としては結構面白いものである。