妻が友人からもらったゆりの匂いが部屋に立ち込めている。またトイレに入ると先日買ってきたトイレットペーパーからのいい匂いがしている。
そういえば、半月くらい前になるか隣の家の庭にきんもくせいが咲き、独特のにおいを放っていた。また、仕事場に行く途中の道すがら塀の中から落ちたきんもくせいの花びらの上を車の通った跡がくっきりとついていた。
le nezとはフランス語で鼻の意味だが、香水の匂いを調整する技師の調香師(この場合はun nezと不定冠詞を用いる)の意味もあるといつか聞いた。
人間の感覚として視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚があるが、始めの二つは物理学の対象になっているが、残りの3つはまだきちんとした学問にはなっていないと思う。味覚は主に料理の分野の問題であり、嗅覚は香水とかの分野の問題であろう。
color(色)とflavor(香り)というのは素粒子物理学で最近使われている用語である。色という量子数を素粒子に導入したのは今年ノーベル物理学賞をもらう南部さんである。
baryonと呼ばれる陽子の仲間は3つのquarkからなり、mesonと呼ばれるpi中間子の仲間はquarkとその反粒子antiquarkの1個づつでできているというのが定説である。その法則に反する粒子が見つかったというのが最近の話題ではあるが、一応の定説はこういうものである。
このbaryonを構成する3つのquarkは光の3原色にあたる赤、緑、青だったかの量子数をもっており、全体では無色になっている。いわゆるcolor singlet(1重項)になっている。
そして0以外のcolorの量子数をもった粒子は現れない。mesonの場合もquarkと反quarkが反対の量子数をもつ結果として全体では無色の粒子となっていると考えている。
これがcolorといわれる量子数だが、もう一方ではflavor(香り)という量子数もある。こちらの方はあまりよくは私は知らないのだが、小林-益川両氏が6つのquarkを導入した後でこれらのquarkは2つづつ組になっていることがわかってきて、それらは(u,d), (c, s), (t.b)と名づけられている。
これらはいわば二人兄弟(doublet)が3つある。(u,d)は第1世代, (c, s)は第2世代, (t.b)は第3世代といわれる。flavorはこれらの世代間を区別する量子数なのかそれともそれぞれのquarkを区別する量子数なのかいまはっきりと覚えていないが、ともかくこういう粒子の区別をする量子数だったと思う。
具体的な香りから話がとんだ方向に入ってしまったが、香りもいろいろである。