矢野健太郎氏は微分幾何学が専門の有名な数学者である。
若いときにフランスで学位をとられた方であるが、その後アメリカ、オランダ、イギリスと世界の至るところで研究生活を送り、また軽妙なエッセイを書いて出されている。
もちろんのことだが、彼の名のついた大学程度のテキストとか受験参考書の類も事欠かない。
私の学生時代の高学年には東京大学から東京工大に勤務先がすでに変わられていたと思う。
私が使った大学での数学のテキストは彼の著書で「代数学と幾何学」「微分積分学」の両方とも東京大学の助教授の肩書きだったが、今私のもっているこの本たちは後の版で東京工大の所属になっている。
ちなみに「線形代数」と「微分積分学」が大学の基礎教育の定番として定着するのは私などよりも数年後のことである。
矢野先生が亡くなってからずいぶん経つので彼の書いた書籍が書店にたくさん並ぶという状況ではないが、私の学生時代は書店に彼の書いたエッセイ本がたくさん並んでいたものである。文章も上手な数学者という定評があった。
これもいつかのブログに書いたことだが、矢野先生の講義はおもしろくてその授業の時間が経つのが早かったと彼の授業を聞いた私の大学のときの物理の大内先生から聞いた。残念ながら私自身はそんな授業をあまり経験したことがない。
ちょっと違った経験だが、物理の授業で体感的に感じることができた講義は私の先生、小川さんの講義であった。
この講義でも毎時間そんな風だということではなく、いくつかの授業でそうであったというにすぎない。だが、それでもそういう講義ができる先生は少ない。