物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

慣れない用語を使うと・・・

2010-07-17 13:24:46 | 数学

e-Learningのコンテンツでフレーズ型とセンテンス型の式という語を「等式の種類と性質」の節の説明のときにつかった(注)。

数学教育協議会での議論を知らない閲読者の一人(電気工学者)からそんな概念を説明するとかえって混乱を学習者に与えてしまうから、やめた方がいいのではないかとコメントがついた。

それも一理はあると思ったので、そこをスキップするのもありだとの注釈を入れて対応した。「なぜ聞きなれない用語を使う必要があるんだろう?」と閲読者は疑問に感じたことは間違いがない。 

方程式と恒等式の式変形の性質は同じではない。それがどう違うかということも昔から問題なのであろう。

私の存じ上げていた、故矢野寛(ゆたか)先生の書いた『中学・高校における水道方式』(愛媛県数学教育協議会ブックレットNo.1, 1995)によれば、式が表す量が変わらないのが恒等式であり、各辺の表す量は変わるが、両辺が等しい(図的に表せば、天秤がつりあう)は変わらないと言葉と図が示されてあった。

こういう方程式と恒等式の式変形を両方とも図で表すというのは他では見たことがない(もちろん、方程式の式変形を天秤のつりあいとして表すのはたくさんある)。

『大道を行く高校数学』(現代数学社)でも恒等式の変形と方程式の変形の説明は工夫がされており、これはe-Learningのコンテンツ閲読者で現役の技術者のbreezingさんのコメントともよく似ていた。

それをe-Learningのコンテンツに取り入れさせてもらったが、それでもまだ十分とはいえないと感じていたから、この矢野先生の説明には納得させられた。

前にもこの矢野先生の説明を読んだことがあるのだが、私の読み方が悪くて、式の変形が文字タイルで描かれており、この説明があることに気がつかなかった。

(注)フレーズ型とセンテンス型の式変形は数学教育協議会ではそれぞれフレーズ型とクローズ型式変形と言われている。クローズ型式変形をセンテンス型式変形といい直されたのは故矢野先生である。