これは私の夢であって、現実にあったことではない。まずそのことをお断りしておく。また面白おかしくするための私の創作でもない。
私の先生の一人O教授は素粒子論が専門であったが、彼がH大学で教授のころには彼の講座名は「固体物理学」であった。これは夢の話ではなく実際の話である。
ところで昨夜見た夢はつぎのようである。
Oさんが固体物理の逆格子について教えている講義に私は出ていた。その講義はそんなに悪いものとは思えないOさんらしい講義だと思ったが、途中でこれはいけないと言われて黒板に書いておられたことを全部消してしまわれた。
それで、そこから私ども学生との議論になったのだと思うが、私が数の逆数からの発想によるような逆格子の説明をOさんにした。Oさんがそれに納得したかどうかは夢ではわからないが、そうこうしているうちに夢から醒めた。
何でこんな夢を見たのかわからない。OさんはN大学の助手時代に坂田昌一教授の代講でいろいろなことを講義されたと聞いたことがあるが、それでもまさか結晶格子と関連した、逆格子の講義はしたことがないだろう。
だが、私が受講したことのある、原子核物理学でも彼の講義は彼のつかんだ物理的な内容の直観的にイメージが伝わってくるものだった。これは私のような物分りの悪い者でも断言できる。
Oさんの薫陶を十分に受けたともいえない私だが、自分がものごとを実感的にわかりたいという欲求は強い。それがこういう夢を私に見させたのだろう。以前から逆格子についてのエッセイを書きかけであるが、それが完結をしていない。それを急ぎたいという自分の内なる無意識によるのであろうか。