福島原発事故は日本では最高の技術をもっていると思われていた、東京電力の原発が最低の安全保障をしていなかったことが明らかになった。確かに原発の停止に対してECCSが働くようになっていたが、これが電源の燃料が津波でなくなったとかで作動しなかったという。
ECCS用の電源を原発構内で用意することは最低限として必要だが、それだけで十分なはずがない。その他にその構内に事故が起こったときを想定して、直ちに外部からひき込める、独立な電源を用意していなければならない。そんなことは当然ではないか。その独立に使える電源の用意は一つで不安なら、二つ以上あればもっといい。
安全装置が何重にも装備されていてもそれが同時に機能しないから、事故が起こるのであり、その安全装置は同時に機能しないことが往々にしてあるということは武谷三男が常に言っていたことである。
なんでもできるだけ別系統というか、無関係というか、独立な装置なり、設備なり、安全装置を用意しておかなければならない。企業にはそのような対策を講ずることが会社の経済的な負担になるとしても、今回のような事故が起こり、取り返しがつかなくなるよりははるかにコストが安く上がる。
想像だが、今回の事故で福島第一原発は壊滅であろう。そうすると新たにここで原発を立ち上げることは、断言はできないが、不可能に近いのではあるまいか。不可能ではなくても再建には長期間がかかるであろう。だから、そういう事故が起こるよりはそれを独立に防ぐ装置なり、電源の手当てをしておいた方が経済的であったはずである。
ところが、最悪の事故を多分日本でも一番強力で技術的にも最高と見られていた東京電力が引き起こした。そうすると他の電力会社の状態は想像してもあまり安心できる状態にはないことが推測される。
昨夜のテレビで愛媛県知事の中村氏が伊方の原発を訪ねたというニュースが出ていたが、これは県民を安心させるためのパーフォマンスではあっても、上に挙げたような別系統の炉冷却の電源の確保やそういった設備の設置を確認したことではないと思うので、もっと四国電力にそういった対応を迫るべきであろう。
というようなことを友人がメールをしてきた。彼は原子炉から発生する中性子を使って磁性体を研究する研究者であって、必ずしも原発反対論者ではない。その彼が不安を感じて私に連絡してきたということに、ことの本質が集約されているようである。
伊方原発は瀬戸内海に面しているので、福島原発のような大きな津波は受けないだろうと推測されてはいるが、伊方原発の沖数キロメートルのところに断層があることは知られており、地質の研究者によれば、この断層でマグニチュード8規模の地震が起きても不思議ではないとも言う。
ここでは一般の方の不安を煽るのが、目的ではない。そういう想定外のことを想定して、地震とかその他の災害に備えるべきだということである。そしてそれらの備えや設備が働くような災害とか機会がなければもっけの幸いであると考えるべきであろう。