どうも続けて同じテーマで書くのは少し気が引けるが、要するに竹内均さんの考えとしては少しづつでもいいから継続して何かを続けていると長年経つと次第にモノになるということかと思う。
そういう生き方を私に直に教えてくれた方がいた。愛媛大学工学部に長年勤めておられた数学者の佐々木重吉先生である。彼はいつも「積み重ねで仕事をするのです」といっておられた。
彼のライフワークは微分方程式の問題を解くことであった。これはこのごろの研究者が言う意味での研究という名にはしないかもしれないが、積み重ねが重要だったらしい。たとえば、微分方程式の外国の書とかを読んで、新しい微分方程式をあるのを見れば、ルーズリーフのノートに問題だけ書き写しておく。
そして少しでも暇ができたら、それを一日一問解くことを日課にしていると言っておられた。それは勤務としての大学に出勤される前のひとときであったり、または風呂上りのひとときであったりした。または就寝前であることもあったという。
そうして解かれた微分方程式の解を書かれた膨大なノートの一部をいつだったか見せてもらったことがある。それらのノートをフルに使って「微分方程式概論」上、中、下(槙書店)を書かれた。全部の問題は佐々木先生の手塩にかけた子どものようでもあった。
また、佐々木先生ご夫妻には子どもさんがおられなかったので、学生をことのほか愛されて自分のお子さんのように感じておられた。
そういっては悪いがオールドスタイルの数学者であり、カタカナ交じりの手紙をもらったこともある。上記の本の、先生の原稿もカタカナと漢字交じりのものであったが、これはさすがに印刷会社と出版社の方の尽力ででひらかなと漢字交じりの書籍に出来上がった。
そういう積み重ねという生き方を少しは私も学んだかもしれない。