竹内均の「私の知的鍛錬法」を最近通読した。なかなか興味深い書である。これは個人的な経験を書いた本であり、30年以上も前の本である。
竹内さんは方法についても述べているのだが、それでもその方法に凝るよりも実際に行動をすることを重視しておられる。その姿勢からか面白いことを書かれていた。
それは「知的生産の技術」で有名となった、梅棹忠夫さんが優れた仕事をできたのは彼の提唱したカード法でカードをあまり立派にはつくらなかったからだとの梅棹さんの友人か知人が言っていたという皮肉な批評であった。
これは実際になにかをすることを日夜にわたって、実践した竹内さんらしいリマークであった。この書「私の知的鍛錬法」は出版されて間がないころにみすず書房のPR誌「みすず」で物理学者の山口嘉夫氏が印象に残った本ということで紹介されていたが、ごく最近まで本書を読む機会がなかった。
もっとも竹内さんの似たような別の書を読んだことはあったのだが、実際にこの書を読むのは初めてであった。これもインターネットで一年ぐらい前に古書で購入したのだが、積読であった。
それがテレビで大地震と大津波の被害の様子をこれでもか、これでもかと見せられたので、読んでみる気になったのだから不思議なものである。
なかなか役に立つアドバイス満載の書であるが、結局はそれを自分でどれくらい実践できるかであろう。
竹内さんの勧めることは断片(なにか関心のあるテーマの4,5ページ文書)を暇を惜しんでつくるということにある。そういう断片をまずは10くらいつくる。それが100くらい集まれば、出版するかどうかは別として1冊の本ができるくらいの材料が集まったことになるという。