工学部に長く勤めていたので、工学部の先生とか学生にはなんてこともないことだろうが、私にははじめての用語というか概念にいくつか出会ったことがある。その一つに「律速段階」という語があった。
これは化学反応の用語だと思うが、私がそのことの意味を教えてくれたのは冶金工学者のDさんだった。Dさんはそんなことも知らないのかともいわずに丁寧に教えてくれた。
先ほど、念のために広辞苑で律速という語があるか調べたのだが、難しい言葉でもなんでも収録されている広辞苑でもさすがにこの語は出ていなかった。それで、岩波「理化学辞典」を見たら、こちらの方にはもちろん出ていた。
一連の化学反応があって、その中で一番遅い化学反応がその全体の反応を時間的に決めている。そういう反応の関係する段階を「律速段階」という。
わかりやすい例でいえば、ゴールデンウイークの終わりごろに休暇を終えて首都圏に帰ってくるときに高速自動車道の出口付近に車がたまって渋滞を引き起こす。
要するに自動車道路では高速で車は移動できるのだが、出口付近では料金徴収とかの時間はなかなか高速処理はできないために、そこらあたりで渋滞を引き起こす。その影響で高速自動車道路自身にも渋滞が起こる。
だから、高速自動車道では出口、入口の処理の速さが「律速段階」なのである。
これは古い話で今ではあり得ないことだが、50年近くも前に、いまのパソコンよりはるかに性能のわるいコンピュータで計算をしていた。
このときに計算結果のプリントアウトがその頃まだタイプライターでラインプリンターもない頃であったので、折角コンピュータで高速に計算をしても出力がネックになるのであった。
その後、マグネティク・テープにデータを落としたり、フロッピーディスクになり、CDやDVDになったり、いまではフラッシュメモリに出力される。またはハードディスクにデータは落とされる。
入出力の速さも格段にスピードアップしている。今昔の感がある。