原子炉の実際の運転法を私が知っているはずがない。しかし、原理的なことはわかっている。
原子炉を定常運転することは原子炉の中の核分裂の連鎖反応を定常的にほぼ一定にしておけばよい。
核分裂を1回すれば、その1個の核分裂の際に平均として中性子が2.43個放出される。
この2個内外の中性子がすべてつぎの核分裂反応に使用できるわけではないので、そのうちの幾分かはU238に吸収されてしまう。
その中でつぎの核分裂反応に使える中性子の数が減りもせず増えもせずになると臨界に達したいわれる。詳しいことは忘れたが、中性子有効増倍率K=1であれば、なんとか中性子が増えもしなければ減りもしない。
しかし、これでは原子炉の持続運転はできないので、普通はKを1よりも僅かに大きくしたり、また小さくしたりして、原子炉内の中性子の数をコントロールしている。
これを行うには原子炉の中にある、カドミウムでできた制御棒をコンピュータ制御で少しづつ入れたり、出したりする。これが原子炉の定常運転である。
何十年か昔大阪府の熊取にある、京都大学の原子炉実験所で原子炉を見せてもらったときには制御棒は上から吊り下げられていたように思うが、原発では制御棒は原子炉の下の部分から挿入されているようである。
そして、電源が切れたら、フェールセーフ(fail safe)となるように制御棒はすべて炉の中に挿入されるように設計をされていると聞いた。
今回の福島第一原発事故では確かにこの制御棒は直ぐに挿入されて炉の停止はされたが、問題はそこ以後で「止める、冷やす、閉じ込める」の止めるだけはできたが、冷やす、閉じ込めるには失敗した。
はじめにテレビに出ていた東京大学の原子力工学専攻の教授が原子炉は止めるができたので、原子炉としては最低のことはできたという評価をちょっと言っていたが、さすがにその後はそういうことを口に出していう人はいなくなった。
事故の大きさに気がついて話す言葉に慎重になったのだと思う。