Nさんの論文の中の「ある不等式の一番素朴な考えでの証明ができない」といつかのブログに書いたかと思うが、それが一昨日ようやく証明できた。わかってみると、なぜ証明できなかったのか不思議なくらいである。人間の認識というのはそういうものかもしれない。
Nさんに電話をかけて明日、証明の仕方を聞きに行くからという話をしたときにx<1のときには1-xは正だから言われてようやくわかった。ちょっとしたヒントではあるが、それに気がつくのが遅すぎた。
それで、そのもやもやの経験をエッセイにまとめようとしている。わかってしまった今ではその経験が大事なのではないかと思っている。これは頭の明敏な人なら、どうでもいいことではあろうが、明敏ではない私はその経験が重要なのではないかと思う。
実は昨日Nさんのところへ行ったら、何人かの人にこの不等式は間違っているのではないかと言われたことがあるという。またNさん自身がなかなかこの不等式を見つけられなかったのだという。そしてその不等式を見つけたことによって、彼の進展が見られるようになったとか。
だから「少し丁寧に説明をしなければいけませんかね」と一昨日の電話で言われていた。証明を書き下してみると簡単であるが、それに気がつくのに時間がかかり、かつ矛盾すると思える事実に出会うような気がして戸惑っていた。
もちろん、これはある事実に気がつかなかったということだけであり、わかってみればなぜこれがわからないのだろうとむしろその方が不思議なくらいである。
よく科学上の発見をした人が「その発見がなされた後では、それがごく当然のことであると多くの人に思われる」と書いているのを読んだことがあるが、そういうことが小規模な形で起こっているのであろう。