英語で書かれた数学書で90万部売れた数学テクストがあると先日来た友人が教えてくれた。
数学書でこんなに売れた書など他にはないであろう。詳しい書名は知らないが、MITの名物教授だったGilbert Strangの書いた線形代数の本だという(注)。
英語を読める人は世界中にいるので、こういう奇跡みたいなことも起こるのであろう。
Strangは今年の5月か6月に89歳でMITを退職した。1934年生まれというから私と比べてもたった5歳上だけである。だから、私にとってはStrangは私の世代に属すると言ってよい。
昨日、彼の最終講義のYou-Tubeを見たところである。Amazon Comでの彼の線形代数の本の評でも彼の本を読んだ人はべた褒めであり、彼の線形代数に対する愛がなみなみでないことを彼の本の日本人の読者も書いている。
Strang自身は偏微分方程式論が専門のようだが、線形代数のテクストと講義で後世に間違いなく残るであろう。
私自身もこの有名な書の日本語訳を持っているのだと思うが、その価値がわかっていなかった。
日本で有名な高木貞治の『解析概論』は長年にわたって読まれているので、数十万部が売れているであろう。また最近では吉田武『オイラーの贈物』(海鳴社)は3万部が売れたという。これは海鳴社版だけであるから、現在の東海大学出版会版まで含めるとどのくらい売れているのかはわからない。
『オイラーの贈物』は私自身は通読したことはないが、理解可能な数学書であろう。『解析概論』はこれを読んだ人も多いのだろうが、私などは半ばくらいまでしか読んだことはない。
(注)G. Strang, ''Linear Algebra and its Applications" (Academic Press)であろうか。もっともStrangはこの本の後も数冊の線形代数の著作がある。アマゾンで調べたところ、定価が9000円近い訳書がある。線形代数の応用についての記述が詳しいという。
ベクトル空間の公理とか一次独立性とか基底とか次元とかについてStrangがどのように書いているのか知りたいと思っている。