『四元数の発見』はあまり他人から誉められはしないが、自画自賛の自信作である。だが、それでもいくつかの章で書き換えたいと思っている個所もある(注)。一つには第 8 章の「ベクトルの空間回転」である。ここは空間回転の向きが時計まわりにとっており、普通の正の回転の向きは反時計まわりである。
したがって、ここは普通の回転の向きを反時計回りに直しておきたい。それで数日前からそのことを考えていたのだが、昨夜その草案をやっとつくった。私もはじめ反時計回りの回転の向きにするつもりであった。
だが、下敷きにするつもりであった、Altman の本の説明があまり詳しくなかったので、ゴールドスタインの『古典力学』(吉岡書店)の説明の方が詳しかったから、こちらにしたがったためである。
しかし、やはり空間回転の回転の向きを普通の反時計回りにした方がいい。草案はできたが、実際に書き換える作業はしばらく時間がかかるであろう。
もう一ヶ所だけ書き換えた方がいいかと思っているところがある。それは第6章の「四元数と空間回転3」の「直交補空間」の 6.3 節である。それを昨夜、就寝前に読み返したのだが、確かに章の冒頭の箇所はどうも唐突の感じがしている。
だが、後ろの方を読んでみると結局はこの節の記述がよくないというふうには私には思えなかった。だが、やはりなんの予告なしに「直交補空間」という名の節が現れることにはちょっと違和感がある。それでもほぼ1頁を我慢して読んでくれたら、だんだんこの直交補空間の意義が分かって来るとは思う。だが、やはりなんとかしなければいけないのかもしれない。だが、どうしたらいいかの判断がつかない。
閲読者の役をしてくれた K さんもこの箇所には何も言われなかった。もっともこの 6.3 節以外にもっと重要な問題だと思われる箇所があったから、そういうある種の唐突感などは後回しにされたのであろう。
私の計画では『四元数の発見』は英訳をして、世界の読者に供給したいと考えている。それで、出版社の海鳴社と同種の本は書かないとの約束を出版契約を結んだときにしたが、英訳を出すことは除外をしてもらった。これはそういう意図をはじめから私がもっていたから。
(注)改訂箇所として、ミスプリントとかちょっとした、書きまちがいのミスを除いている。こういうミスの正誤表はインターネットに載せることができてはまだいないが、数カ所ある。
そういうところはすでに出版社には連絡をしてあるが、残念ながら私の本の第 2 版が出版されるチャンスはないかと思うので、ミスの箇所を「数学・物理通信」に発表しておくべきかなと考えている。
アマゾンコムの書評で私のミスを指摘したものがあるが、この箇所は私のまちがいではなく、指摘は正しくはない。だが、アマゾンコムに著者の私が書評者のミスの指摘は正しくないなどということは、はしたなく、はばかられるので、その指摘には反論をしてはいない。
この指摘が正しいかどうかの判定については、私は自分で大まちがいをする可能性もあるので、念のために閲読者の K さんにも確かめてもらったので間違いがない。
(2020.9.14付記)
上に書いた第 8 章の「ベクトルの空間回転(改訂)」は「数学・物理通信」9巻9号に掲載してあるので、反時計回りのベクトルの回転の方を好む方はインターネットで検索して見てください。
それ以外に『四元数の発見』の補遺としての原稿も4つほどそれ以前の「数学・物理通信」の号に掲載してある。合わせてご覧ください。
(2022.1.13付記)
今年こそは『四元数の発見』の英訳本を出そうと思い始めた。腰の重い私にしてはかなり重大な決意である。
それで6章をどう書き換えるかについての勉強をはじめた。これは計量ベクトル空間(ユークリッド・ベクトル空間)の簡単な要約が必要なのではないかと考えている。計量ベクトル空間の説明の前に一般的なベクトル空間の概念の説明がいる。できるだけこれらを簡潔にまとめたいというのが現在の気持である。
計量ベクトル空間にはスカラー積の定義が出てくるので、それで四元数の直交性が定義できる。これはすでに『四元数の発見』では、定義してはあるのだが、補注という形で救急処置みたいな取り扱いであるのがいけないと考えている。
(2022.3.2付記)
アマゾンコムでの『四元数の発見』の悪評を書いた方は、私個人に悪意を持っている方ではなかったかと推測している。
これはあることで私がある一群の人たちから悪く思われているらしいことを知っているからである。これは基本的にはある事柄に対する意見の相違から来ているのかと思うが、他人の気持ちはわからない。
そして私に密かに悪意を持っている人が誰であるかも私にはわからないという現状である。まあ、どういう感じをもつかはそれぞれの人の自由であるので、どうしようもない。
(2023.3.7付記)『四元数の発見』の英訳は依然としてできていない。また6章の書き換えもまったく進んでいない。ただ、昨年の11月初めだったかに、第2刷が出て、ミスプリントはだいぶん解消された。
金谷(かなや)の方式の球面線形補間の導出も書き加えた原稿をつけるつもりだったが、そこは出版社の都合でカットされたので、それに言及したところがちょっと間違った記述となってしまった。
これは金谷の方法での球面線形補間の導出も修正部分に付け加えておいたのだが、その部分は実はカットされた。それへの言及をした部分だけが残ってしまったのである。
(2024.5.26付記)上の付記を書いてから、一年以上が経ったが、『四元数の発見』の改訂も英訳もまったくできてはいない。課題点が始めは1つだったのが、いまでは3つに増えている。
それらがどこかはこのブログでは述べないことにする。これは私個人の問題であり、日本語の『四元数の発見』を読む読者の問題ではないと思うからである。『四元数の発見』の第2刷はすでに出まわっており、それを読まれた読者も居られるだろう。
いくつかの改訂の原稿をつくったが、それを出版社の都合もあって出版できるには至っていない。