大学の理工系の学科を卒業した人なら、双曲線関数を知らない人はあるまい。もうそれがどういうものであったかを詳しく思い出さないとしても。
建築家や土木工学科の専門家なら、橋がカテナリーとよばれる曲線になっていることを学校の授業で教わっているはずだ。私のいとこに船乗りだったのがいるが、彼が若いときに船長の資格試験を受けに来たことがあって、私の下宿に一日二日泊めたことがあった。そのときに、船の錨を下したときの海底にある、錨と船をつなぐ鎖がやはりカテナリー(懸垂線)となっているとかいっていた。
カテナリーのことを聞いた一番初めは高校3年生のときに数学の先生からその名を聞いたのがはじめである。その後、大学で三角関数に記号の似た双曲線関数を知ったが、その双曲線関数と三角関数とは記号もよく似ているし、その公式にもよく似た関係にあることを知った。
もっとも三角関数が有用なのはその周期性にあり、双曲線関数が三角関数ほどは有用でないのはそれが周期関数でないためだとは思ったこともなかった。そういえば、大学に勤めていたときに編集した、「電気電子工学科ミニマム」という小冊子で双曲線関数は三角関数ほどは有用ではないと同じ学科の所属の数学の先生にいわれたことがあったが、それが周期性がないためだとはついぞ思いが及ばなかった。