宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【衆院予算委】流れを変えた恒三さん

2008年02月09日 23時30分53秒 | 第169通常会(2008年1月~6月)ガソリン国会

【国会傍聴記2008-2-8衆院予算委・2008年度本予算に対する基本的質疑】

 本予算を審議する通常国会は自民党ペースで始まりましたが、やはり私の予想通り恒三さんが流れを変えました。

 ことし1年間の政治の基本方針を議論する予算委の基本的質疑が始まりました。

 民主党は岡田克也さん(予算委筆頭理事)がトップバッターで、前日の岡田質問はかなり好評でした。

 そして、厚生大臣、自治大臣、通商産業大臣、国家公安委員長、衆議院副議長を務めた当選13回生、渡部恒三さん(福島4区)の登場です。

 メリハリのきいた聞き応えのある代表質問でした。

 私が民主党に足りないと思うのは、メリハリです。
 民主党議員はまじめすぎるので、押し相撲一辺倒。押したり引いたりしなきゃダメですよ。その技を恒三さんが見事に披露しました。
 

 まずは和やかに始めた恒三さん。
 後ろの議員(全員が自民党)もにこやかな表情。

 恒三さんは道路特定財源に関する福田内閣の議論の感想を述べました。

 「あれおかしいな、小泉君の改革は道路公団民営化、道路特定財源の一般財源化、郵政民営化で、2005年の総選挙で大勝したと記憶している。福田君の内閣で方針が変わったのかな?」

 「答弁してください、あのーそこの大蔵大臣・・・あっ俺も古いなあ、財務大臣だったっけ・・・」

 これに対して伊藤公介さん(自民党清和会)が

 「あんたが副議長の時に決めたんだろ(中央省庁再編基本法)!」とマジなヤジを飛ばしました。

 伊藤さんは、流れが読めない人ですね。

 小泉内閣と福田内閣の「論理のすりかえ」に気づいている恒三さんなんだから、わざと言い間違えたに決まっているでしょう。

 恒三さんはすかさず後ろを振り返り、「静かに聞きなさい!」と一喝。



 シュンとする伊藤さん(恒三さんの左肩のグレーの背広)に追い打ちをかけるように、「論理のすりかえ」の理由を解明するため、小泉純一郎さん(清和会)の参考人招致を要求しました。

 大田弘子担当相が本会議での「経済演説(もはや経済一流ではない)」で言及した「取り残される日本」の資料を配付。

 竹下内閣の通産大臣として、一人あたりODAを「3位から2位に上げた」恒三さん。

 「私が自民党を飛び出したら、こんなに落ちた」

 ここで自民党議員から失笑が漏れたのは不愉快でした。

 恒三
 「これから若い人が未来に希望を持てますか!」

 まさに本質、正論です。拍手喝采したいです。




 次は「中央と地方の格差」。

 「東京はビルの林になった。これでは東京の人も幸せではない」

 恒三さんが、中学生ではじめて東京にきたときは、国会議事堂が一番高いビルで、国会議員になったときは「霞が関ビル」に抜かれていたとのこと。

 今の皇居周辺では、国会議事堂はほとんど埋もれてしまいました。
 「それだけ国会の存在感も落ちたということかな」としんみり。

 「ある区」として東京都足立区の例を挙げ、「給食費を40%の人が払えない。かわいい子に学用品も買えない」

 「あるビル(六本木ヒルズ)は、1億円もするというじゃないか。地域格差の是正こそ、政府がやるべきことではないか、どうだ!」



 福田首相はタジタジ、狼狽しながら答弁しました。

 自民党御用達新聞の日本農業新聞も翌日は写真入り囲み記事で
 「恒三節 健在 農業いじめを追求 衆院予算委で32年ぶり」という見出しを立てました。

 恒三質問で、流れは完全に民主党に来ました。

 さあ、流れを加速するならこの人、長妻昭さんが登場。

 まずは中国製毒餃子問題で、昨年末に小売店が保健所に送ったメールの写しを公開。

 厚生労働省の初動の遅さを徹底追求。

 消えた年金記録では、首相は「ですから何度も言っていますように・・・」を連発。
 同じ議論が続くのは、自民党政府の無責任な対応に全責任があります。

 

 長妻さんも60分。

 この後の原口一博さんも60分。

 佐賀県警が5人がかりで知的障害者を取り押さえ死亡させたとされる事件に関して、友人の手紙を代読。

 ネクスト総務大臣として、地方財政の現状をデータを使って糾しました。

 財政力指数(総務省がつくったベンチマーク)が厳しい自治体ほど、一般会計総額の減少率が大きいということで、正直驚きました。

 私は2002年ごろ、「財政力指数」などの調査、取材、分析をして「日経地域情報」に特集記事を執筆していました。

 ただ、ここ数年、あまり情報をアップ・トゥー・デートしていなかったので、原口質問にはがく然としました。


 秋の国会の基本的質疑では、前原誠司さんが午前と午後をまたいで質問に立ちました。最近のNHKは午前11時54分に国会中継を打ち切り、気象情報を放送します。前原さんはこれを見越して、午前の質疑を早めに切り上げるという手慣れたところを見せていました。

 8日は午後は武正公一さん、笹木竜三さんが登場しましたが、午前中と午後とで流れが切れていた感があり、残念でした。が、武正、笹木両氏も、部門会議などで取り組んでいるテーマを内閣にぶつけることができたので、良かったと思います。

 岡田・恒三・長妻・原口・武正・笹木の6人衆で、「本質論」の民主党を見せつけました。

 暫定税率が政局の争点から外れ、道路特定財源のあり方全体が前半国会の目玉となってきましたね。

 「ガソリン国会」という言葉は消えました。

 第169通常国会は「本質国会」と名付けたらいいのかなあ、というのが現時点での感想です。