ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

民主党、“マル特融資”10年ぶり復活迫る 中小企業の年末資金繰りが改善か

2008年10月15日 21時10分24秒 | 第170臨時会(2008年9月~12月)麻生兵糧攻め

【民主党が金融危機対応案を決定】

 民主党はきょうの政務調査会(次の内閣)で、日銀出身の大塚耕平さん(参院愛知)が座長を務めた金融対策チームがまとめた金融危機対応案を了承しました。

 この中に次の一文があります。

(引用はじめ)
2.信用収縮対策(企業対策)
(1)企業の信用(資金繰り)対策として、公的金融の拡充を行う。1998年度に実施した中小企業金融安定化特別信用保証制度を復活させ、原資3,500億円で与信枠(信用保証枠)10兆円の拡充を行う。(引用おわり)
 
 つまり、10年前に“マル特融資”と呼ばれた「特別保証」(中小企業金融安定化特別信用保証制度)の復活です。

 最近の金融機関は中小企業への融資姿勢をますます厳しくしています。運転資金名目ではなかなか借りられない深刻な状況になっているようです。年を越せないとの不安を持つ中小企業主が多いようです。

【マル特融資の10年ぶりの復活で中小企業は年を越せる】

 マル特融資(特別保証)とは何かかんたんにご説明します。

自治体の制度融資とは(リンク先は東京商工会議所のHPです)。

 自治体には制度融資というしくみがあります。その名の通り、自治体の制度ですが、自治体があっせんし、銀行がお金を貸すので、「あっせん融資」とも呼ばれています(このエントリーでは、「銀行」という言葉を「金融機関」という意味で使います)。

 中小企業は自治体の経済課と相談しながら申込書を書き上げていきます。このとき、自治体ごとに使える銀行の一覧表がありますから、その中で、自分が好きな銀行を選んで、申込書に記入します。経済課にはんこをもらって銀行にいけば、銀行から融資を受けられます。

 このとき、信用保証協会に保証してもらいます。言ってみれば、協会に“連帯保証人”になってもらうということです。例えば神奈川県には、「神奈川県」「横浜市」「川崎市」と3つの名を冠した信用保証協会がそれぞれあります。どんな都道府県でも必ず1つ以上の信用保証協会があります。銀行には利息を払い、信用保証協会には保証料を払います。かなり有利な条件でお金を借りることができます。

 中小企業主は自分の口座にお金が振り込まれたら、それで商品を仕入れたり、事務所を借りたりします。商売が軌道に乗ったら、元金+利子+保証料を返していきます。仮に商売が上手くいかず、お金を返せない(融資が焦げついた)場合は、信用保証協会が代わりに払います(借金の肩代わり=代位弁済)。

 マル特融資では、このときの信用保証協会の審査がやさしくなります。審査がやさしくなることで代位弁済が増えますが、それを見越して、国が税金で3,500億円を用意しておくということです。

 そうすると、仮に返済が滞り融資が焦げ付いても、保証協会が代位弁済してくれますから、銀行は、安心してどんどん中小企業に融資することになるでしょう。

【マル特融資が始まった日の取材の思い出】

 マル特融資は1998年秋の第143臨時国会(いわゆる金融国会)で、民主党(菅直人代表)が国会に提出した「金融健全化法案」に盛り込まれた政策で、拓銀、日債銀、長銀が相次いで破たんした戦後最大の金融危機から中小企業を救った“良薬”です。

 私は同年9月1日、政治部から横浜支局に異動しました。マル特融資が始まった10月1日は、はじめての経済取材に悪戦苦闘していた時期です。マル特融資の記事を書くために、朝早く、横浜市役所別館の会議室に設けられた窓口に行くと、紺スーツ姿の若者数十人が行列をつくり、書類にはんこをもらうのを待っていました。

 支局に帰ってから、経済部出身の支局長に聞いたら、「それは、みんな銀行員だよ」と言われてびっくりしました。市の金融担当課長に電話したら、「その通りです」と言われました。

 銀行は事前に、中小企業主に「借りてください」と頭を下げてお願いして、必要な書類もほとんど銀行が用意していたのです。つまり、銀行にとっても「焦げついても代位弁済してもらえる」というビジネス・チャンスだったのです。取材の際も、企業の社長さんにマル特融資の話をむけてみると、「あのときは、急に銀行の態度がそれまでと変わって『借りてくれ、借りてくれ』と言ってきたから断ったよ」という声も聞かれました。

 一部の人間によるモラル・ハザードが問題になったとはいえ、マル特融資は金融危機を救いました。

【民主党は政策で勝ち、政治に負けた】

 第143臨時国会では、小渕恵三首相(自民党総裁)が民主党案をほぼ同じ文面のまま、閣法として再提出するという丸飲み戦術をとりました。危機的だった自民党支持率が底を打ち、さらに翌年には公明党と連立を組むことで再浮上。民主党は政権交代のチャンスを逃しました。民主党にとっては政策で勝って、政治で負けたという苦い経験です。

 菅民主党の金融国会での対応については、歴史的に賛否両論があります。菅さんは今でもこのときのことを自画自賛していますが、私は厳しい評価をしています。

参考)第143臨時国会を振り返って 民主党国対委員長 石井一=当時

 そういう意味では、今回の民主党案は一か八かの賭けだと思います。
 政権交代を目前にして、徹底的に政府を批判する戦術もあると思います。しかし、民主党は国民の急場をしのぐために、政府・自民党に10年ぶり2回目の「丸飲み」を迫ることをきょう、決断しました。

 ※おことわり このエントリーでの「マル特融資」とは、1998年10月~翌年3月までの中小企業金融安定化特別信用保証制度(特別保証)のことです。たまに高利貸しや詐欺師が「マル特融資」という言葉を使うことがありますので、ご注意下さい。

政権交代でもう一度輝いていた日本へ!

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