先週金曜日(10月17日)のラジオ番組で印象的な場面がありました。
関東ローカルの文化放送「くにまるワイド ごぜんさま~」に民主党衆院議員の河村たかしさんが出演しました。
「ごやっきゃあになります(ごやっかいになります)」の常套句から始まる河村さんは、月1回の“レギュラー・ゲスト”として、国債800兆円の危機感をあおる財務省や議員特権などを豪快に斬りまくります。CM時間が足りなくなりそうになっても、しゃべり止まらない河村さんをなだめて、必死にCMに行こうとする野村邦丸アナウンサーとのやりとりは毎回、笑えます。
午前8時半、この日の放送はちょっと違った雰囲気で始まりました。
直前の番組は私と同じ下町生まれの吉田照美さんが担当しています。照美さんは関東ラジオ界の“横綱”です。新しくアシスタントに付いた女性アナウンサーが福島・会津にゆかりがあるということで、「○○は“会津弁”ではなんて言うの?」と矢継ぎ早に質問。いつもながらの小気味の良さで、「それでは今日のゲストの河村たかしさん、○○は名古屋弁ではどう言うんですか~?」と番組をバトンタッチ。
ところが、邦丸さんが番組をスタートするのを制した河村さんが「ちょっと今のアナウンサーの方に申し上げますがね~~」としゃべり出しました。
「名古屋弁というのはないんですよ。名古屋ことばっていうんです。標準語と方言ではなく、共通語とお国ことばなんです」と持論を展開しました。
河村さんは衆院逓信委員会(現在の総務委員会)でNHK会長に質問した成果で、現在、NHKでは「標準語」とは言わずに「共通語」と言うことなどを披露しました。
邦丸さんが機転を利かし、番組は急きょ、「お国ことば」をテーマにメール・ファクスを募集しました。
8時台後半は、金融危機を分かりやすく解説した河村さん。
この後、「お国ことば」をテーマにした投稿が集まり、邦丸さんが軽快に読み上げていきました。
「名古屋に住んでいたころ、驚きました」という投稿。名古屋地方でとても有名だというアナウンサーの名前を挙げた上で、
「いつも、番組でやっとかめと言うのに面食らいました」。
「やっとかめ」は広辞苑にも載っていて、「(愛知・岐阜県で)久しぶり」という意味だそうです。河村さんによると、「やっとかめ」は漢字では「八十日目」と書くそうです。
末広がりの「八」(や)+「十日目」(とおかめ)=やっとかめ。八十日ぶりに会うから「やっとかめ(久しぶり)」。
私は初めて知ったのですが、実にすばらしい日本語です。
河村さんは「やっとかめ、といえば、学校のころ、先公がよぉ!」と国会議員からはあまり聞かれない「先公」という言葉を使い、思い出を語りました。
ある時、教師が黒板に次のように書いたそうです。
×やっとかめ
教師は「みなさん、きょうからやっとかめという言葉を使ってはいけません」。理由は「名古屋でしか使わない言葉だからです」。
河村さんの心の中は土砂降りだったようです。邦丸さんが話を引き取った後も、マイクの向こうから「とんでもねえ。たわけだ」という河村さんの声が聞こえました。
(ラジオ部分のやりとりは記憶から再現しました)
河村さんの愛知1区には、JR名古屋駅、県庁、市役所、名古屋城があります。【追記】JR名古屋駅は愛知5区です(コメント欄参照)、訂正します。【追記おわり】
河村さんは著書「おい河村! おみゃぁ、いつになったら総理になるんだ―反骨のサムライ世直し十番勝負」の56~58ページで学校教育を次のように振り返っています。
(引用はじめ)
[“日本は犯罪国家だ”という「左翼教育」に洗脳されていたワシが今言いたいこと]
(略)
ワシらのように団塊の世代の人間というのは、“日本というのは過去に侵略戦争をして大陸で殺人や強姦から略奪からありとあらゆる犯罪を犯してきた、恥ずべき民族だ”ということを学校の先生によって、徹底的に教え込まれたのである。(略)
アメリカが広島・長崎を落としたおかげで、どうにか終戦を迎えられたというわけだ。(略)
学校では左翼教育がすべて、他はないとセンセイは言っていたし、事実それが試験にも出た。
“右でも左でも関係ない。こういう話がある”ということを子供たちに教えて視野を広くしてほしかった。それがあの当時、教師だった人々にワシが言いたい唯一のことである。
(引用おわり)
日教組(日本教職員組合)の解体をさけんだ威勢のいい国交相が話題になりました。民主党は4人ほど日教組出身の参院議員がいますが、様々な考え方の集合体=徒党(Party)です。民主党が日教組の言いなりであるかのようなイメージは、プロパガンダ(政治的宣伝)です。
ことしのノーベル賞受賞者4人のうち、3人が名古屋大学にゆかりがあることが話題になりました。優秀な人材を輩出し続ける名古屋の玄関、新幹線・名古屋駅には「胴上げ禁止」という看板があるそうです★★要確認★★。ホームの胴上げが春先の風物詩になってしまい、危ないからJR東海がこういう看板を出したようです★★要確認★★。
私は生粋の東京っ子ですから、早大在学中、郷土愛の強い地域の出身者から噛みつかれることがよくありました。名古屋周辺もそういう傾向がありました。
そういう交流の中で、私は件の「胴上げ禁止」を知りました。名古屋自慢と東京けなしを続ける友人にその話をむけると、「友人の門出を祝うために、愛知中から名古屋駅に集まるんだよ」とご満悦。そこで私が、「なぜ東京の大学に行くことがそんなにめでたいのか?」「なぜ上りホームにだけ看板があって、下りホームにはないのか?★★要確認★★」と反撃すると、たいてい黙り込んでしまいました。
皮肉にも、国交相は日教組批判の材料として「全国統一学力テスト」を引き合いに出しました。「全国統一」の錦の御旗を振りかざすことこそ、「国土の均衡ある発展」の発想にほかなりません。その国交省の外局として10月1日、観光庁が発足しました。3泊4日で十分な画一的な風土をつくりだした自民党に何を期待すればいいのでしょうか。
人より道に税金を使う自民党。優秀な人材はクルマと新幹線と飛行機を使って東京に集まっています。いわゆる「ストロー現象」です。
「ナイター中継終了の時間ですが、一部の地域を除き、延長してお送りします」という日本“テレビ”放送網系列のアナウンスの「一部の地域」だという劣等感で、東京に出てきたという話をよく耳にしました。
名古屋組など大志を抱いて東京に出てきた人たちと違い、こういった「一部の地域」組は、東京であまり成功していない傾向があるように何となくですが、感じます。
故郷のことばに誇りを持てない人の存在が、日本文化を衰退させ、日本語の乱れを生んでいるのではないでしょうか。八十日目ぶりに会うから、やっとかめ。漱石の「二百十日」「彼岸過迄」に通じる美しい響きです。こんなきれいな日本語にもっと早く出会いたかったと思います。「国土の均衡ある発展」という自民党53年長期独裁政権こそ、「×やっとかめ」という言葉狩り教室を生み出したのだと考えます。解体すべきは自民党です。