今週後半の一連の出来事の中で、与党議員でありながら倒閣軍に加わると、どういうことになるか、ようやく分かってきたでしょう。
2009年8月30日。私たち国民が選んだの政権交代可能な二大政党デモクラシーです。そのために、当時の与党・自民党の反対党である民主党を選んだのです。
ですから、菅直人民主党内閣を続けさせるのか、それとも谷垣禎一・自民党内閣に変えるのか、それは私たちが第46回衆議院議員総選挙で選ぶことになります。
それなのに、こともあろうか、政権政党である民主党の国会議員でありながら倒閣軍に加わった議員たち。民主党への裏切りであるというよりも、国民に対する裏切りです。
そもそも内閣総理大臣である候補者と一兵卒の候補者のマッチレースでは、その情報の非対称性(総理>一兵卒)は、政策論争は総理に不利にはたらきます。なぜなら、総理は知っていて話せないことが多いからです。「民主党らしい政策本位の選挙を」と言っていた連中に、そのことに気付いていた議員は、いったいどれだけいたのか。
倒閣軍に加わった代償は、その議員の一生の政治生命を通して取り戻せないほど重いと、私は考えます。少しでも取り戻したければ、政府外議員(バックベンチャー)として党政策調査会でドンドン内閣の文句を言ってほしいと考えます。それが内閣を助けることになります。そうやって菅さんが担う政権の重荷を400人が分担して、一緒に背負ってください。
ただ、私自身も政権交代可能な二大政党デモクラシーについて、理論や理屈で分かっていても、体に染みこんでいないな、と感じることは多々あります。
直近の英国の事例。5月、労働党のブラウン首相が任期満了まぎわの「追い込まれ解散」で敗れ、政権を保守党のキャメロン党首らに明け渡しました。実はブラウン首相は、その前に解散しようとしたことがありました。ところが労働党の支持率は高いにもかかわらず、前任のブレア首相と比べて、不人気なブラウン首相が解散に打って出ようとする気配に気付いた英国民は、突如、世論調査で、保守党の政党支持率を大幅にアップさせました。
反対党の支持率が政権党を上回ったため、ブラウン首相は解散を断念しました。だって、反対党の支持率が高い状態で総選挙に飛び込めば、負けますから。ブラウン首相はやむなく総選挙をせず、首相を続投し、任期満了直前まで追い込まれ、総選挙を実施しました。労働党は粘り腰を見せましたが、やはり負け、保守党のキャメロン党首が首相になりました。
議会発祥の地である英国民のすごさを感じます。「ブラウンが嫌いだ」、「首相から引きずりおろしたい」。だから「今すぐ辞めさせる」(早期解散)のではなく、「確実に辞めさせる」(任期満了追い込まれ解散までの首相続投)のを選んだ、それが英国民の世論だった。私はこういう風に分析しています。世論調査と政治の関係を考えたとき、これほど興味深い事例はありません。
このように衆議院任期4年間を見通して、世論をつくっていく。菅さんが好きか嫌いかの感情だけで、世論調査に答えると、それはopinion(世論・輿論)というよりも、sentiment(感情)に過ぎない結果が出てきます。一刻も早く総選挙を願っている自民党支持者は、菅内閣を「支持する」、民主党を「支持する」と答えておけば、菅総理は勘違いして、早期解散に打って出てくるかもよ? 分かる人はもう分かっているでしょうが。
とにもかくにも、政権の重荷がどういうものなのか、民主党バックベンチャーが早く自覚してほしい。それと、世論(輿論)をつくる国民の慣れとテクニックも必要です。後世、2010年9月の政権党代表選はやってムダじゃなかったといわれるように、ともに歴史をつくっていきましょう。