【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

1回生がサシで菅総理に直談判 近藤和也さん、円高への緊急提言 

2010年09月04日 00時23分24秒 | 第175臨時国会(2010年7月)ねじれ
[写真]菅直人総理にサシで政策提言する一回生衆院議員の近藤和也さん(左)=2010年9月2日、首相官邸、近藤さんのブログから

 けさ、新聞を読んでいてあることに気付きました。

asahi.com(朝日新聞社):首相動静―9月2日 - 政治

 【午前】8時47分、官邸。9時1分、副大臣会議であいさつ。11分、植松内閣情報官。42分、馬淵国交副大臣。11時18分、防災功労者表彰式。31分、防災功労者らと記念撮影。37分、民主党の枝野幹事長。

 【午後】0時44分、東京・内幸町の日本プレスセンタービル。59分、日本記者クラブ主催の民主党代表選候補者討論会。3時16分、官邸。43分、細川厚労副大臣。4時29分、民主党の渡部恒三元衆院副議長。47分、同党の網屋信介、今井雅人両衆院議員。5時12分、中井防災担当相。44分、阿久津、寺田両首相補佐官。6時41分、民主党の近藤和也衆院議員。7時17分、公邸。

 民主党の一回生衆院議員の近藤和也さん(石川3区)が、ナント菅総理とサシで会っているではありませんか。実際には、首相補佐官の寺田学さん(秋田1区)も同席したそうです。円高局面にあたり、衆院財務金融委員で元証券会社員の近藤さんは、「意外感(サプライズ)により個人投資家の含み資産を動かして、市場にマネーを吐き出させる方策」を、「円高への緊急提言」「景気対策への提言」という、それぞれA4判1枚紙にしたためて、提出しました。近藤さんはすみやかに総理に「口頭で検討を示唆」して欲しい考えのようです。

 近藤さんは8月23日、菅事務所内の当選1回生との懇談会で、この話をしていて、寺田補佐官にアポをとってもらって、今回の「サシ具申」にいたったようです。近藤さんは、代表選の投票先を表明していない「中間派」ですが、「熟議」による「適材適所の全員参加」の「クリーンでオープンな民主党」を政見に盛り込んだ菅総理は、その振るまいで公約を実現する意欲を示しました。

 近藤案のうちイチバン面白いのは。キャピタル・ゲイン減税の一環として、

 「株式型投信(投資信託、ファンド)の売却損に限り、その所得を税額控除する特例措置を、時限措置としてやってほしい」とのアイディア。

 これは面白い。退職金などで投信を買うシニア層が多いようですが、リーマン・ショック後の運用では、おそらく購入時よりもきょう現在の基準価額が下がっている、という投信は9割ぐらいになるのではないでしょうか。それを“タンス投信”“塩漬け投信”にしないで、「所得税特別控除」の期間中に、投信を売って、現金化し、そのマネーをマーケットに動かすことで、「円安相場の先導役となる」。近藤ペーパーの説明によると、円ドル取引に限った場合は、個人投資家だけで相場が動く局面はけっこう多いんだそうです。近藤さんは野村證券に勤めていました。

 これについて、菅総理から、感想や検討の約束はなかったとのこと。しかし、説明を終えた近藤さんが最後に、「民主党はマーケット(政策)に弱い、と言われるのが悔しいんです。僕たち、金融ボーイズを使ってください」と直談判すると、菅総理は「よーし、分かった!」と元気に応じたそうです。なお、近藤ペーパーの「円高は日本が海外資源を安値で仕入れるチャンス。今こそ国家ファンドの議論を」というくだりについて、菅総理は「そうだ、その通りだ!」と大きくうなずいたそうですが、現時点での具体的な政策対応を約束した発言ではないと思われます。

 ひと晩あけた近藤さん、朝刊を読んで、自分より前の時間帯に、同じく金融ボーイズの網谷信介さん(鹿児島5区比例、元メリルリンチ日本証券副会長)と、YAMACHANが応援している今井雅人さん(岐阜4区比例、著名な金融アナリスト)のコンビが菅総理に政策提言していてビックリしたそうです。

 ただ、金融ボーイズは、“マーケット”という名の共通言語を読みながら動いているわけで、同じ日に集中することは偶然ではなく、むしろ必然です。

 近藤さんの本気度ですが、菅政権の追加経済対策や、菅さんの街頭演説などに盛り込まれなかったら、民主党政調会長で国務大臣も兼ねる玄葉光一郎さんや内閣府の金融担当副大臣の大塚耕平さんにも働きかけるなど、マーケットの動きを見ながら政策実現を図っていきたい、とのことです。

近藤和也オフィシャルサイト

金融ボーイズ、総理に直訴!
2010年09月2日
今日も仕分け
お昼に主査会議
午後に第六WG打ち合わせ

菅総理に円高・株安対策近藤私案を提出、説明。

日銀、介入の行わない大蔵省の責任を問うだけでは円高対策にはなりません。証券優遇税制をさらに拡充、実現損と所得税の緊急的な損(益)通算も行い、個人マネーの誘導をはかり円安誘導をはかる、つまり、第3の柱を活用すべし、これが円高対策の一つです。運用先に困っている個人にとっても、円高に困っている輸出系企業双方への好影響が、結果として内需、雇用の拡大につながります。円高を好機ととらえての国家ファンドもすすめる必要性も付言しました。
景気対策としては贈与税の特例を一定額以上(例えば5万円)の物品の贈与については住宅と同様特例を認める。消費旺盛世代への購入消費贈与は個人富裕層からの消費を促し、低迷する国内小売業にとって好影響をもたらします。
製造業の生産能力向上へ向けての政府保証融資の整備をする必要もあります。失われた20年の中で、国内製造業は人件費のみならず、生産設備そのものが更新時期を過ぎても設備投資が出来ず、結果としてアジアに負けてきているという現実を直視しなければいけません。金融機関にとっても預貸率が50%程度のところが出てきているで、日銀が金融緩和をさらにしたところで、なんら影響を受けません。日本の製造業の競争力強化、金融機関の機能再生へ向けた設備投資保証融資の拡充が必要です。
国内旅行クーポンの所得控除によって、地方経済で大きな影響力のある観光産業政策をすすめることで、国全体としても消費波及効果をもたらすことが出来ます。

私案は個人富裕層や経営者の視点とのご批判をいただくこともあるかと思います。
ただし、原油産出国が原油の無くなる世界を見越して、オイルマネーを次世代に向けて有効投資していこうとしていく中で、日本は学ぶことはないのでしょうか。
豊富な個人金融資産、個人個人の技術力はいつまでもあるわけではありません。
日本には今の日本しか出来ない経済政策があります。
マーケットと対話をし、そして日本の強みと弱みを直視した政策が必要です。

総理には最後に「金融ボーイズ」の活用を!ともお願いしました。「よし!分かりました。」との答え。後で聞くと、同じ金融ボーイズの網屋信介さんと今井雅人さんも総理に提案をしに行っていたそうです。政局よりもマーケット、そして国民の生活が大切です。思いが同じ議員の存在をうれしく思います。