【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

まずは総務省行政評価局を廃止すべし 出先機関改革は塊より始めよ

2010年09月07日 14時45分56秒 | 第175臨時国会(2010年7月)ねじれ

[写真]原口一博総務相

 民主党の2009マニフェストの「国の出先機関は原則廃止する」に期待していたのですが、期待はずれになりそうな気配です。

 出先機関でまずメスを入れるのは、総務省の「管区行政評価局」だと私は考えています。優先順位はトップだと思います。なぜなら、行政評価局はきょう無くなってもだれも困らない役所だからです。さらに言えば、本省もいらない。そういう出先機関は、ここだけでしょう。本省で250人、出先に1000人の職員がいるようですが、その雇用さえ確保すれば、きょう無くなっても、だれ一人困らない。実にカンタンな話です。

 で、昨秋の事業仕分けの結果をみたら、驚くべきことに、行政評価局の業務は「強化する」と仕分けられています。私は事業仕分けをやって良かったと思いますが、実は仕分けの内容はほとんど知りませんでした。なぜ「強化」になったのか、推測するに、仕分け人が「行政評価局」という言葉に「事業仕分け」と同じにおいを感じたのではないか、それと、これは総務省の全事業で最後の議題だったようで、仕分け人が疲れて集中力が切れていたのではないかと思います。

 自民党政権で菅義偉さんが大臣だったときに、「管区行政評価局」に「年金記録確認第三者委員会」がくっついてしまって、これはやっかいです。が、長妻昭厚労相の下、“消えた年金記録”の修復は進んでいますから、頃合いをみて、他に移しても良いのではないでしょうか。

 管区行政評価局は、合同庁舎に入居していますから、庁舎売却などのメリットはないでしょうが、1250人は総務省統計局に移して、トレーニングして、各省に分散している統計業務を引っ張ってくれば、国益と省益ともいいのでは。1250人を自治体に押しつける必要もありません。

 原口一博・総務大臣は7日の閣議後会見で、「期待外れ。怒りにも似た思いを感じる」と述べたようですが、そっくりそのまま、彼に返したい言葉です。まずは塊より始めよ、で総務省の出先機関を本省ごと廃止してしまうと先に宣言すれば、他府省の回答も多少変わったでしょう。

 私は1997年ごろ、旧名称の「総務庁行政監察局」の取材をしていたことがあって、これはだいぶ勉強になり、お世話になったんです。監察官からいろいろ教えてもらいました。監察局を通して、霞が関の各府省の性格をだいたい勘所をつかんでいたところがあります。その恩は今でも感じていますが、取材を通して、私は、「総務庁行政監察局は、まず行政監察局を監察しろ」という持論を持っていて、他府省の官僚にこの持論を披露すると、どの官僚からも「その通り」「ぜひやって欲しい」と言われました。

 行政評価局について、2010年4月2日の外務大臣定例記者会で岡田克也さんと上杉隆さんの間に次のような楽しいやりとりがありました。

(引用はじめ)

2010年4月2日 外務大臣定例記者会見http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/g_1004.html#1-J

【フリーランス 上杉氏】先週の今日ですが、総理官邸で首相会見がオープン化しました。外務省に遅れること半年ですが、その翌日、総務省の行政管理が記者会見のオープン度合いについてランクづけをして、ここ外務省は「A」というランクづけ、総理の会見と並んで「A」になりましたが、その評価に対しての大臣の評価をお聞かせ願えますか。

【大臣】評価していただいたのはありがたいのですが、私は、なぜ総務省がランクづけするのかちょっと違和感を禁じ得ません。確かに行政監視という役割が総務省の中にあることは事実ですが、お役人が大臣の記者会見についてランクづけするのは、ちょっと私にはよくわかりません。政府として、きちんとした第三者を選定して、そこで何か言っていただくならわかるのですけれども、どういう基準でやったのかもよくわかりませんし、何で役人にそういうことで評価されなければいけいのか、よくわかりません。

【フリーランス 上杉氏】総理の会見についての御感想は。

【大臣】よかったと思います。これからも是非続けていただきたいと思います。

(引用おわり)

 「政治主導」を地で行く岡田さんの発言は、ほぼ全国民が賛同するでしょう。やはり岡田さんは、一から発想が違う。原口さんは、若手議員を省内に集めて勉強会を開いたり、赤坂で宴席を楽しむ暇があったら、はやく議員宿舎に帰って勉強をして、まずは塊より始めよ、を体現すべきだと感じます。

 基礎自治体の役所には、よほど田舎でもバス停があります。しかし、出先機関にはバス停がありません。用向きがあれば、歩くかクルマで行くしかありません。こういところにも原口さんは気付いていないでしょう。総務省政務三役のこの1年間は零点だと、私は厳しい評価をしています。 

出先機関地方移譲は1割弱=府省仕分け「期待外れ」―原口総務相 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 原口一博総務相は7日の閣議後記者会見で、出先機関の事務・権限を国に残すか自治体に移譲するかを各府省が判定する「自己仕分け」について、地方移譲を認めるとの結果は全体の事務・権限の1割弱にとどまったことを明らかにした。同相は「期待外れ。怒りにも似た思いを感じる」として、出先機関改革について各閣僚と公開討論を行い、協力を促す方針を示した。
 自己仕分けは、国土交通省の地方整備局や厚生労働省の都道府県労働局など、8府省が、13機関を対象に実施。国交省は地方整備局のうち一部の国営公園の管理について都道府県に委ねるとしたが、そのほかはほぼゼロ回答。全国知事会が移譲を強く求めているハローワークについても、厚労省は国が引き続き担うとした。


岡田外相が飛騨民主急襲、国会議員に戸別訪問

2010年09月07日 00時22分00秒 | 岡田克也、旅の途中

[画像]岡田克也さん(朝日ニュースター)

 民主党代表選をめぐり外相の岡田克也さんが4日、三重3区総支部大会を開催した後、飛騨・岐阜県に入り、国会議員の自宅を戸別訪問し、首相・菅直人さんへの投票を呼び掛けていたことが分かりました。中日新聞が報じています。

 公職選挙法では、告示後の戸別訪問を禁じていますが、民主党代表選は公選法の適用外であることを熟知した上での行動です。岡田さんは、尊敬する「織田信長」の桶狭間急襲ばりの機動力を発揮しました。

 岡田さんに同行したのは、昨年5月に当時は一新会倶楽部所属の総支部長でありながら、地元の声を聞いて上京し、小沢一郎さんに代表辞任を促した、現在の衆院議員。可児市内で岐阜4区比例の衆院議員と会い、菅支持を働きかけ、岐阜2区では衆院議員が自宅にいなかったため、携帯電話で連絡をとったそうです。

 岡田さんがなぜここまでこの選挙に執念を持つか。これは政治家・小沢一郎さんをここで歴史から退場させなければ、この国は前に進めない、との強い信念を持っているからだと思います。政治家としては、1997年12月に新進党を解党し、二大政党デモクラシーの実現を遅らせたことへの歴史的清算をつけるとの考えだと、考えられます。

 例えば、菅首相続投で、外相を続けたいためにここまでやるとは思えないし、また、人としての小沢一郎さんが憎いのなら、それは岡田さん自身を否定することになりますから、それはありません。小沢一郎さんは岡田夫妻の媒酌人ですから。政治家としての小沢さんを、ここで潰す、という覚悟でしょう。

 私もまったく同じ考えです。くどくどと申し上げません。「新進党解党」という歴史的大罪を犯した小沢さんは、その清算をしないといけません。過去20年間は細川内閣(1993年)でも、政権交代(2009年)でも小沢さんはいつも中心にいました。そろそろ一つの時代を終えないと日本は前に進めません。今回の代表選は、「一つの時代を越える戦い」です。小沢さんが「もうここらでよか」と言うところまで、徹底的に追い込まねばなりません。お願いです。それをしないと、前に進めないんです。

 岡田さんはさきほど、0泊3日の弾丸ツアーでドイツ出張に旅立ちました。その直前に飛騨を訪れたことの意味を、訪問を受けた議員にはよく考えて欲しいと思います。また、菅総理も「地方」「経済的に厳しい地域」「生活が苦しい人」をもっとしっかり取り込まないと、この先、政権を運営していけないということを認識すべきです。公務は東京だけでやると限ったことではありません。

 最後に、昨晩印象に残った、中公文庫の日本の歴史(旧版)の第20巻の448ページと、451ページを引用させてください。井上清さんの文章です。

 「十年前には、維新変革の名実ともに最高の指導者であった英雄が、変革期の歴史の歩みの早さに、ほんの一歩おくれはじめたばかりに、やがて反革命の最後の最大の首領となり、かつてみずから肝胆をくだいて建設の基を開いた政権に、武力で反抗して自滅するにいたる、ーー明治維新ていどの変革においても、変革の論理はなんときびしいものであったろう。」

 「明治元年の、人民を年来の圧制と搾取から解放するというあの倒幕の布告の精神は、いまようやく、封建的大義名分論ではなく、日本歴史上はじめて農工商の民衆と結びついた文字どおり国民的な自由民権運動にうけつがれ、発展させられてゆく。もう明治維新の時代ではない。自由民権の新しい時代がはじまった。」

中日新聞:民主代表選、未定票めぐり争奪戦 岡田外相が岐阜県入り:岐阜(CHUNICHI Web)

 民主党代表選で議員票の行方が注目を集める中、菅首相を推す岡田克也外相が4日夜、県内の態度未定の国会議員の自宅や事務所を訪れ、菅氏への支持を求めた。14日の投票までに菅派の野田佳彦財務相や前原誠司国交相も県内入りする。一方、小沢一郎前幹事長派の議員らは地方議員の切り崩しに動き、県内でも党内を二分する戦いが繰り広げられている。


 県内選出の国会議員9人のうち、態度が未定か、表明していないのは、園田康博衆院議員(岐阜3区)、橋本勉衆院議員(比例東海)、今井雅人衆院議員(同)、平田健二参院議員(岐阜選挙区)。


 岡田外相は菅派の柴橋正直衆院議員(岐阜1区)とともに、可児市内で今井氏と面会し「賢明な判断を」と力説。今井氏は「政策と実行力が大切。自分で判断したい」と答えた。自宅外にいた橋本氏には午後9時ごろ携帯電話に岡田外相から連絡が入り、橋本氏は菅氏の経済政策への不満を伝えた。


 今井、橋本両氏とも4~5日にかけて地元で党員・サポーターの集会を開き、意見交換。橋本氏は「地域の意見を聞いて決めたい」と話した。


 一方、県議出身で、小沢氏を支持する笠原多見子衆院議員(比例東海)は、菅氏支持で一本化した地方議員25人の一人一人に電話をかけ、自らが小沢氏を推す理由を説明。「地域主権を掲げる小沢さんの思いを知ってもらい、少しでも考え直してもらえれば」と話した。


 (山本真嗣、中崎裕、石井宏樹)
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