ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

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解散へさざ波 下村博文影の文科相が3党合意の政策効果の検証糾す 中井予算委員長で初の審議ストップ

2012年02月13日 20時22分43秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

(未定稿)

[画像]「政策効果の検証は省内でやっています」と不可解な答弁をした前民主党国対委員長の平野博文さん、現文部科学大臣、2012年2月6日、衆院予算委、衆議院インターネット審議中継から。

【衆院予算委員会 平成24年度本予算案の基本的質疑3日目 2012年2月6日(月)】

 平成24年度の本予算(案)の基本的質疑の3日目となりました。以前はNHKは本予算の基本的質疑は3日間とも中継していましたが、NHK側の要請で2日間となりました。既に与党第1会派から、野党の最少会派まで質問は一巡しましたが、きょうは与党・第1党民主党から再びNHKなしで基本的質疑の最終日の審議がありました。民主党は予算委理事でもある若泉征三・元福井県今立町長(現在は越前市に合併)、逢坂誠二・元北海道ニセコ町長という町長コンビが登場し、内容の濃い議論が展開されました。

 この後、自民党に移り、吉野正芳さんが原子力災害について。何度も書いていますが、「3・11」以降、国会においてもまさに「正念場」で、人間というものが「仕分け」されていますが、私はこの1年間の、第一委員室(予算委、東日本大震災復興特別委)で、吉野さんはステイツマンだと感じることがたびたびありました。

 そして、この後、自民党の武闘派である、下村博文・影の文科大臣が登場しました。

 ところで、中井洽さんは平成22年10月の第176臨時国会冒頭から予算委員長を務めています。5会期連続で、とくに通常国会2会期連続で予算委員長を務めるのは珍しいことです。この間、平成22年度1次補正、平成23年度当初予算、「3・11」を経て、同1次補正、2次補正、3次補正をやって、この国会で4次補正を通過させ、平成24年度本予算審議に臨んでいます。合計7回目の予算審議ということで、「余人をもってかえがたい」状況になっています。とくに昨年2月の本予算審議では、ノンストップに成功し、安住淳・民主党国対委員長(当時)は、たしか三十数年ぶりだとかそのくらいぶりの快挙だと讃えていました。これは中井さんもかなり意識しているようで、下村質問で審議がストップした後、お昼の休憩前に、「下村さん、さっき時計は1分ちょっと止まりましたけど、答弁に繰り返し部分が多かったこともありますから、自民党の持ち時間を10分あげます・・・ということも含めて昼の理事会で協議します」と語りました。しかし、午後の委員会は開かれないまま、午後5時過ぎに散会しました。これで中井さんの記録はとまってしまいました。また、あすは一般質疑といって、財務大臣以外は、質問者から指定された大臣だけの出席で良かったのですが、このままだと野田佳彦首相も出席しなければいけなくなります。

 国会というのは相手がありますから、誰が悪い、ということではありません。仮にNHK中継があったら、審議は続行していたでしょう。その366日間でたった1日だけの「テレビ無しの本予算の基本的質疑」をまさに自民党が突いたわけで、いずれにしろ、第45期衆議院も解散に近づいてきたということになるでしょう。

 で、ここまで書いて、何が審議されていたか書いていませんでしたので、書きます。

 下村影の文科大臣は、8月9日の「3党合意」に、バラマキ4kのうち、高校授業料無償化(と農業者戸別所得補償)の「平成24年度以降の政策効果の検証にもとづく予算計上の見直し」について、昨秋に民主党側に協議を持ちかけたのに、「梨の礫だった」と指摘します。これは、このブログをお読み頂いている方には、何度も繰り返しの説明になりますが、菅直人首相の平成23年度特例公債法成立と引き換えの退陣は第22回参院選(おととし7月11日)の選挙結果判明時から予想されていたこと。それが「3・11」で国政が大混乱になったわけですが、岡田克也・民主党幹事長(当時)は、本質をしっかり見すえ、直近の民意である第22回参院選で国民に否定された第45回衆院選マニフェストのバラマキ4k(高校無償化、戸別所得補償、子ども手当、高速道路無料化)の見直しを条件に平成23年度特例公債法案の採決・成立を自民党と公明党に約束してもらいました。この政治状況の変化を小沢グループは理解していなくて、例えば、三宅雪子議員のツイッターなど見なければいいのですが、たまに見てしまうと腹が立ちます。なぜ、参議院で民主党と国民新党の議席が110議席で、過半数の121議席に足りないのに、09マニフェストを法律化できるのでしょうか。これを理解できない民主党の一部の議員は、脳みそが足りない。

 この8月9日の3党合意は、民主党では、岡田幹事長、玄葉光一郎政調会長、城島光力幹事長代理(ともに当時)がサインしました。ただ、岡田さんが、小沢グループで自治労の皆吉稲生衆院議員や三宅議員らに激しく辞任要求されたこともあり、8月末の野田内閣発足で、無役になりました。城島さんは入閣説がありましたが、3党合意の経緯を知る人物が必要なので党に残り、現在は国対委員長となっています。

 下村さんから、なぜ「平成24年度以降の(予算の)政策効果の検証に基づき所要の見直し」をしないか。この質問は、昨秋(予算原案編成期の)文科大臣だった中川正春・内閣府特命大臣でも、今の文科大臣である平野博文さん、どちらが答えてもいいですよ~と下村さんは質問します。これは見事なひっかけ質問でした。やはり現文科大臣としてのメンツがあるのか、平野さんが答弁に立ってしまい、「政策効果の検証は文科省内でやってきました」と述べ、縷々答弁してしまいました。これにより、平野さんが国対委員長在任中の4ヶ月間「政策効果の検証による予算の見直し」の意味を理解していなかったことが確実になりました。つまり、「政策効果の検証」を平成24年度以降も続ければ、自民党ないし公明党は本格的に倒閣しない、というヒントが3党合意に潜んでいたんです。それを、輿石東幹事長、平野国対委員長らが不誠実な対応をとったので、自民党は怒っているんです。

 岡田さんは「政策効果の検証時は私は幹事長ではなく党の役職を離れていた」「予算の編成時は政府にいなかった」と答弁します。忸怩たるものはあるでしょうが、かみしめました。このとき、松本剛明・国対委員長代理が第一委員室にいたようで、自民党から「松本ゴーメーに聞けよ!」との大きな野次が飛びました。輿石執行部は、わざとすっとぼけて、政策効果の検証をやっていないのかな、と思っていましたが、どうやら文脈を理解できない無知が最大の理由だったようです。

 下村さんは「誠実に対処するのを確認する」という3党合意に書かれたことは何だったのかと問い、「次の幹事長(輿石東氏)に申し送りするなり、引き継ぐなりすべきであって、3党合意はその場限りの確認事項に過ぎなかったのか」と糾しました。

 ここで、上でふれたように、政権交代後では珍しく、審議がストップしました。この後、場内協議の後、民主党の鉢呂吉雄筆頭理事、武正公一理事、西村智奈美理事らが委員室から走って飛び出す、という珍しい光景がありました。民主党国会対策委員会や政策調査会に確認に走った、と岡田さんらが答弁しました。中井委員長は下村さんに「質問通告していたのか」と聞きました。中井委員長は「事項だけ通告したのではないか」という風に言いましたが、下村さんはそれも含めてちゃんと通告しているとしました。

 平野さんは閣僚席にいますが、後は、輿石さん、樽床さん、城島さん、前原さんに参考人として出席して答弁して貰った方がいいのではないか。半分冗談ですが、そう感じます。やはり英国のように、幹事長は閣僚兼務で答弁に出席しなければいけない。戦後初めて与党第1党の幹事長に参議院議員で就任した輿石さんですが、このような稚拙な与野党協議では、参議院は廃院にした方がいいのではないでしょうか。橋下徹市長はこのやりとりをみてどう思うでしょうか。

 来年7月に参院選があるので、来年は「平成25年度の特例公債法案」を自民党は人質にできないでしょう。だから、ことし平成24年度の特例公債法案(第180閣法2号)を人質にとるんですよね。だから、民主党はもうちょっと3党合意をすすめて、解散の直前に壊してしまうという作戦をとると思われましたが、どうやらもっと早く壊れてしまいそうな気配です。それが戦術ではなく、どうやら無知によるものとなりそうなのは、何とも残念な限りです。しかたがありません、これが政治です。民主党はそれほど未熟だったということです。

 とはいえ、責任与党として、本予算を仕上げる前の解散はゼッタイにできません。しっかりと緊張感をもって、歯を食いしばって、本予算を通さなければいけません。

 それとどうでもいいことですが、平野博文(ひろふみ)リアル文科大臣も、下村博文(はくぶん)影の文科大臣もともに博文ですね。別にどうでもいいのですが、あくまでもこのブログが個人として書きたくてしょうがないことを書いているだけに過ぎませんので、書いておきます。お休みなさい。

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