ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

自民党1期生の橘慶一郎さん、「内閣府はたこの八ちゃんだ」と批判 予算審査進む

2012年02月22日 19時42分19秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革


 平成24年度当初予算書の審査は、一般的質疑が3巡。集中審議が2日間。

 書きたいことは山ほどあります。

 イギリスの庶民院では毎週水曜日の昼に、首相(保守党党首)と政権準備党の党首(労働党党首)および若手が党首討論(Prime Minister's Question)をやります。庶民院事務局は事前にツイッターで、テレビを見てくださいと告知し、終了直後には、議事録を3時間後にアップしますとツイートします。庶民院事務局記録部(速記者)の存在意義を感じます。これには、トニー・ブレアさんも「1週間で最も憂鬱な時間」で「なぜかアメリカ人も日本人もよく見ている」という複雑な感情を持っていたようですが、野党と若手議員とマスコミと国民と庶民院事務局にとっては楽しみの一つ。現時点で、衆議院事務局の会議録には、いまだに当初予算審議の会議録は1件も上がっていません。このような組織なら、記録部は廃止して、何十もの地方議会の議事録作成の実績をもつ数多ある議事録会社に入札した方がいいのではないかと感じます。

 そのため、本人の正確な発言とは違いますが、2月9日(木)からの衆院予算委員会での本予算審査。現在ほとんど全部聞いていますが、その中から興味ある点をご紹介します。

 まずきょう22日の集中審議で国民新党幹事長の下地幹郎さんが予算審査の改革を提言しました。この2月の国会について「衆参722人のうち、何人東京にいますか?」とし、政務三役と衆院予算委員、党幹部しかいない状況を皮肉りました。例えば今の時期、参議院自民党の議員はリラックス。これまでこういった事実は衆参与野党とも隠していた“議員特権”。こういうのを積極的にバラしていた河村たかしさんはいじめられて名古屋市長に転出しました。下地さんは「12月に(政府が)予算案を出したら、1月から各委員会を開いて、予算を審議すべきだ」と述べました。我が国は、アメリカの2012会計年度の予算案により、沖縄などの米軍基地に関して右往左往されています。ただ、上院の軍事委員会なんですね。上院歳出委員長は最年長でハワイ選出の日系2世、ダニエル・イノウエ(民主党)ですが、かならずしも知日派だからといって親日派ではありません。上院軍事委員会の若手でやり手のウェッブ議員(民主党)が、レビン委員長(同)や大統領選に出たマケイン議員(共和党)と組んでよろしくやっているのを見て、そう感じる面もあるのかもしれません。ちなみに、衆議院では本予算審査の最終局面で分科会が7つ設置されますが、参議院では予算委員会が各常任委員会に「委嘱審査」をしていますから、この委嘱審査のしくみを歳出面では衆院予算委員会も活用すればいいのではないでしょうか。

 22日の集中審議では政権交代後初めて、民主党の長妻昭さんが登場。「消えた年金はその後どうなった?と聞かれます。記録が戻った人は1274万人。生涯で戻る年金は1・5兆円です」と語りました。野党から与党へ。長妻さんの仕事はすばらしい。歴史に残ります。そして、このような大規模な公文書改竄事件を最後にするために、政権交代ある政治を根付かせなければなりません。元厚労副大臣の鴨下一郎さんは同日の審議で、「私たちは消えた年金で政権を失った」と語りました。

 本予算審査である以上は、予算書の中味を審査すべきだと思います。しかし、やはり少なく、16日(木)に自民党の坂本哲志(さかもと・てつし)さんが農業の土地改良事業について詳しく聞きました。801億円の灌漑施設の事業に関して、民主党が「予算をつけるぞ」と言って選挙運動(日常活動)をしていると訴えました。真偽は分かりませんが、この選挙区は農相が自殺したこともある選挙区ですから、紳士的にやってほしいものです。このなかで、玄葉光一郎外相が「省庁再編のやり方について私は調べたことがある。ドイツでは首相に権限があり、アメリカではレーガン大統領まであったが今は大統領にない」という意外な見識を披露しました。ちなみに私は2010年7月の玄葉政調会長就任会見で質問した際、玄葉さんから「イギリスでは政府外議員は完全にバックベンチャーです。日本の場合は党組織に加えて個人後援会の力もあって当選しているから政府外議員も政策プロセスへの参加について一定の配慮をする必要がある」と聞きました。こういった玄葉さんの見識がさらに生きるときがいずれ来ます。もちろん当面は外相として全力投球です。

 玄葉さんの未来予想図が徐々に現実になりつつあるのが、自民党シャドウ・キャビネットと野田リアル内閣の大臣対決がいくつかありました。もちろん衆院議員のシャドウ大臣しか衆予算委では質問できませんので、この辺が自民党・民主党双方の課題になります。20日の一般質疑では小野寺五典シャドウ外相玄葉外相の対決で、辺野古崎沖の埋め立てについて、小野寺さんが名護市のリゾート地「カヌチャベイの地主が危機感を抱いている。30分前に会ったときも心配していた」と生々しく迫りました。「新年会に数百件出た」と切り出した菅原一秀シャドウ経産大臣枝野幸男リアル経産大臣の対決は、これは批判された持論を堂々と朗々と述べた枝野さんの勝ち。菅原さんは新年会に出るのもいいですが、理論面ももっと磨いてほしいです。次のNHK日曜討論に出るようです。ぜひ肩書きは「シャドウ経産相」ということでNHKも国家国民に貢献して欲しい。

 下村博文シャドウ文科相平井卓也シャドウ総務相も質問しました。対決が一番面白かったのは、21日(火)の柴山昌彦シャドウ法相小川敏夫リアル法相の対決。小川さんは参院議員ですが与党ですので、衆院予算委員会での対決が実現しました。柴山さんの質問に答えて、小沢一郎さんの裁判で東京地裁が東京地検がつくった調書や捜査報告書の多くを採用せず、裁判長が地検の捜査を批判したことについて、特捜部を配下に持つ法務大臣として遺憾の意を表明しました。ちなみに小川さんは2010年6月の民主党役員会で鳩山由紀夫代表・小沢一郎幹事長コンビの“抱き合い心中”につながる執行部批判の皮切りをした党広報委員長でした。その後、ともに弁護士でもある柴山さんと小川さんは「130人の死刑囚の未執行」に関して自民党内の議論も紹介しながら、かなり生々しい迫力ある議論が展開されました。

 このほか、再度になりますが、9日(木)の審議で茂木敏充・ネクスト官房長官が「平成24年度予算案(政府原案)の5つの間違い」を発表。10日(金)の西村康稔・ネクスト財務相が登場し、とくに西村さんがBOJの白川方明総裁から「BOEのターゲット(target)と思うところは同じ」という大きな答弁を引き出し、翌週のBOJ初のインフレターゲット導入への大きな圧力になりました。

 与党では、13日(月)の基本的質疑最終日(テレビなし)で若泉征三・元福井県旧今立町長逢坂誠二・元北海道ニセコ町長の首長経験者コンビが登場。若泉さんは原発と自治体について質問し、細野豪志・環境大臣が「福井県は長年、日本のエネルギー政策の根幹を担って頂いています」と重みのある答弁。逢坂さんは2009年の第171通常国会の本予算審議で当時1期生ながら唯一予算委員になり、締めくくり総括質疑や本会議での討論に抜擢されました。それ以来の予算委登場だと思います。実は逢坂さんは初体験の予算審査をしめくくり、予算審査のあり方について、国会図書館につくってもらった他国の事例を示しながら、問題点を指摘しました。世論調査に関する質疑では、野田佳彦首相はこの週の金曜日のNHK「ニュースウォッチ9」に出演した際、内閣支持率のことを聞かれましたが、その答えは逢坂質問で学んだ内容だったように思えました。逢坂さんは3党合意の政策効果の検証に関連して、「高校無償化では経済的理由による高校中退者は減ってきている」「農業者戸別所得補償では平成23年度の施行者は大幅に増えている」と語りました。

 15日(水)の一般的質疑では、YAMACHANが応援している岐阜4区の1期生、今井雅人さんが前日のBOJのインフレターゲット導入について「夕べ海外マーケット関係者数人と会話したが歓迎する声が多かった」とキャリアをいかした上で、「昨年12月の日中首脳会談ではあまり注目されていないがクリーンヒットがあった。ドル円、ドル円とみんな言うが、日本の最大の貿易相手国は中国だ。円-ドル-円による日中貿易では、為替リスクもあるし、手数料は二重になる」として、円と人民元取引の拡大を促しました。私はまったく賛成で、YAMACHANは良い代議士が地元に居て幸せです。ぜひみんなの力を結集して、第46回衆院選では「パジェロ金子」こと金子一義・元産業再生担当大臣と対決します。標高も高いが見識も高い飛騨高山の有権者の答えは、マット今井か?はたまたパジェロ金子か? 金子さんは野党になってみて意外と野党向きな攻撃的な予算委員ということが分かっていろいろ面白かったですが、最近はお見かけしません。そろそろでしょうか。

 20日(月)の一般的質疑2巡目では、岡山5区の1期生、花咲宏基さんが登場。中井委員長から「ハナサヒロキ君!」と呼ばれとっさに「委員長、ハナサキです、ハナサカではありません」と訂正を促した度胸満点の花咲(はなさき)さんは、予算書の中味を質問。目から鱗が落ちたのは、国家公務員人件費のうち1500億円が超過勤務手当なんだそうです。与党の花咲さんは「質問通告は早めにすませて超過勤務手当を削減したい」と生産的な指摘をしました。少子化対策にもなりますしね。最近では自民党が質問主意書を連発しているようで、困ったものです。連中は暇ですからね。民主党も次に下野したときには、官僚は野党にもしっかり情報提供をしてほしいと思います。第171通常国会では、「国交省、農水省などが野党・民主党に資料を提出する際は、自民党の村田吉隆国対委員長代理に事前に許可を取るように」という部内資料が通達されました。私はこのペーパーを現在も保存しています。このような振る舞いは民主の敵であり、村田さんの行為は断じて許すわけにはいきません。花咲さんは岡山5区で、村田吉隆さんと対決します。ここはコスタリカなので、比例単独に回る加藤勝信後援会も応援しますから、極めて厳しい闘いです。その状況で、予算委員になっている花咲さん。ぜひ頑張っていただきたいものです。

 前置きがかなり長くなりましたが、橘慶一郎さん(富山3区)の16日(木)の一般的質疑がとても良かったです。第45回衆院選の逆風で当選した自民党猛者1期生4人組の一人。すでに、斎藤健さん、小泉進次郎さん、伊東良孝さんはテレビデビューしていて、橘さんだけテレビデビューしていないように思いますが、良心的で力のある人です。4人は正午から始まる衆議院議院運営委員をやり、その後午後1時からの本会議では、議長の真ん前の議席番号47~50の4人席にお行儀良く腰掛け、よく議事を聞いています。

 橘さんの質問はいつも万葉集から始まりますが、この日は万葉集巻8の1426番の山部赤人の歌を詠みました。以前は、総務委員会などで「委員長のご承諾をいただいていますので~~」と言っていましたが、いまや与野党に定着し、第1委員室でも、登場するや、サッと。ぜひテレビ入りでも披露していただきたい。

 橘さんは野党一回生として驚くべきことに、「第180通常国会での閣法の一覧を見ていると多い」と指摘し、間に合うのかと質問します。藤村修官房長官は「前国会の継続案件が多いから」などとします。橘さんは「委員会の定例日は決まっているわけですから、この時期からそろそろ日程をコントロールしていかないといけない」とし、誰が国会日程を調整しているのかと質問します。これについて官房長官は「内閣総務官室が国会日程について各府省を調整している」と本質から逸れた答弁。野党からこんなこと言われていたらおしまいですよ。官邸と民主党国対はもっとしっかりしてほしいです。御輿の担ぎ手でばれないと思って手を抜いている人が多いように感じます。

 口の悪い新聞記者は、「橘慶一郎って橘康太郎の息子だろう。二世でも出来の良い二世っているもんだな」と評しています。ちなみに先代からは間を置いていますので、当ブログの定義では「橘さんは二世議員だけど、世襲議員ではない」ということになります。橘さんら4人は、自民党の「国会対策委員」をしています。ちなみに委員長でも代理でも副委員長でもなく「委員」はこの4人だけ。自民党の人材育成メソッドは参考にしたいところです。

 【橘慶一郎さん「内閣府はたこの八ちゃんだ」と質問し、岡田副総理兼内閣府特命大臣「委員と認識は共有している」】

 橘慶一郎さんは2012年2月16日(木)の衆院予算委員会で、内閣官房の組織図、内閣府の組織図、各庁舎の地図を配布し、「国民のみなさんは内閣官房と内閣府と言うと、ピシッと一つのビルになっていると思われるだろうが、現実にはたこの八ちゃんのようになっている。仙谷由人官房長官(当時)は『温泉の旅館の離れのようだ』と表現していたし、『スパゲッティ』と呼ぶ人もいる」としました。そして、内閣府がたこの八ちゃんのようになる背景として、パーキンソンの法則を紹介しました。パーキンソンの法則は「役人はライバルではなく部下が増えることを望む」「役人は相互に仕事を作りあうという2つの要因により、官僚制内部の総職員数はなすべき仕事の量に関係なく、毎年5~7%増加したと突き止めました。

 このようにして膨張するたこの八ちゃんである内閣府の問題点については、藤村官房長官は「私も併任が多くて嘆き節。簡素でシンプルな組織にしたい」、川端達夫・内閣府特命担当大臣(地域主権、沖縄北方など)は、「役目が終わったら、(部局の存在も)終わるようにしたい」、岡田克也副総理・内閣府特命担当大臣は「(橘)委員と認識は共有している」と答弁しました。

 ちなみに橘さんは昭和59年、旧北海道開発庁入庁の元官僚です。北海道開発庁は総理府の組織で、今の中央合同庁舎4号館にありました。総理府は現在内閣府になっています。しかし、北海道開発庁は、現在は国土交通省北海道局になっています。ですから、橘さんとしては古巣は国交省にあるということもあって、内閣府の批判をしやすい面はあると考えられますが、それは別にいいんです。橘さんは、行革の話についても、行革実行本部について「なぜ組織を減らさなかったのか」として、「総務省の行革を担当する職員にも併任事例がでている。ホントウは整理して欲しかった」としました。総務省には、行政管理局、行政評価局、人事・恩給局という3つの“行革官僚”の部局があります。

 ところで、興味深いことに、公務員庁設置法案(177閣法76号)が継続審査になっていますが、この法案に付随した承諾案件として「地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、管区国家公務員局及び沖縄国家公務員事務所の設置に関し承認を求めるの件」(177承認6号)が出ています。摩訶不思議なことに、この新しい出先機関のブロック割りが総務省の管区行政監察局とまったく同じ区割りになっています。もちろん、衆院総務委員ならそのことに気付くでしょう。しかし、この承認案件は、衆院内閣委員会に付託されています。内閣委員はこの区割りが行政監察局とまったく同じ区割りだということに気付いているでしょうか。ひょっとしてひょっとしたら、公務員庁をつくったら、その出先機関である管区国家公務員局に行政監察局職員を付け替えるつもりではないでしょうか。この法案をめぐっては、総務省の田中順一人事・恩給局長ががんばっているようです。この人事院と総務省の争い、私は人事院を応援したいと思います。労働協約権の締結で、責任ある労働環境の確立を国家公務員は先陣を切るべきです。内閣法制局職場の労働協約は、労働界の注目を浴びるでしょう。

 岡田行革は、私に言わせれば行革ではありません。公務員制度改革です。たこの八ちゃんから、省益より国益へ。やや給料は下がり、官舎に入りづらくなっても人間らしい生活をし、子を作り、育てる。国益に資し歴史に殉じる。果てしない水平線のかなたにひろがる官僚たちの夏を実現するために今こそ岡田公務員制度改革にすべての国家公務員の力を結集すべきです。

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