参院自民幹部、暫定予算編成を民主に要請 :日本経済新聞
自民党の脇雅史参院国会対策委員長は24日午前の参院議員総会で、2012年度予算案の審議について「参院では3月12日の週くらいから始まるだろう」との見通しを示した。そのうえで「審議日数が限られてくるから年度内成立はほとんどあり得ない」と指摘。年度内の不成立を見越し、民主党側に暫定予算を編成すべきだとの考えを伝えたことを明らかにした。
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〈平成24年度当初予算の年度内成立はほぼ絶望に〉
衆院予算委員会はゆうべ2月23日(木)、本予算採決の前提となる「(中央)公聴会」を3月2日(金)に設定しました。地方公聴会はきょう2月24日(金)済ませ、来週月曜27日には参考人質疑もやります。しかし、この日程では、3月2日(金)に衆院本会議で採決(可決)し、参院に送るのは絶望的。そもそも3月2日採決でも、日本国憲法第60条の「30日規定」を使うとしたら、3月31日の土曜日に衆本を設定しなければならず、30日規定による年度内成立は完全に消えました。
きょう2012年2月24日の参院本会議で、平成22年度(2010年度)決算審査のスタートである「総括質疑」がありました。これを前に開かれた、参議院自民党の議員総会で、脇雅史国対委員長が4月1日以降の暫定予算を組むよう民主党側に申し入れたことを明らかにしました。
〈平成10年を振り返る〉
暫定予算を組むのは、平成10年度(1998年度)の第2次橋本内閣以来。このときの野党第一会派は民友連(民主友愛太陽国民連合)でした。この第142通常国会中に、民主党が結党。それ以降、本予算はすべて3月中に仕上げており、この健全野党ぶりが参院選での連勝(2004年、2007年)につながりました。参院選は常に通常国会閉幕直後に公示されますから。
平成10年度予算は、政府が1月19日に国会提出し、衆・議運委が予算委に付託。審査開始が2月19日と遅く、衆院での採決(可決)は3月20日までずれ込みました。ただ、この第142通常国会は、自民党が111議席、日本社会党・護憲連合(現在の社民党・護憲連合)が39議席、新党さきがけが3議席で、与党3会派で大きく過半数を持っていましたので、楽観的でした。参院は4月8日に予算審査を終えて、本会議で可決・成立しています。
〈衆参ねじれの平成24年は平成10年よりはるかに深刻な事態〉
第2院である参議院が与党少数である第180通常国会では、極めて深刻な事態になります。私はこのブログでも、予算は年度内に成立し、特例公債法案の採決・成立と引き換えに話し合い解散になるのではないかと予想してきましたが、参議院自民党が予算そのものを人質にとる可能性が出てきました。参院予算委員会は石井一委員長を除く44人の委員のうち、民主党は19委員、国民新党は0委員、新党大地・真民主は0委員と与党3会派はわずか19人。社民党の1委員、新党改革の1委員が賛成してもまだ2つ足りない。公明党の4委員のほか、ひょっとしたら「審議拒否に反対」として日本共産党の1委員が賛成に回ってくれるかもしれません。
ただし日本の国会は、委員会で「否決された」と参院本会議で石井一委員長が報告しても、本会議での採決の結果、可決される可能性があります。ただし本会議を開くには、自民党の鶴保庸介・議院運営委員長の承諾が必要。民主党理事が委員長不信任決議案を出しても、鶴保委員長が参議院委員会先例28号に基づき、民主党理事を委員長代理に指名すると、採決は「信任」となります。これは予算委も同様で、石井委員長不信任動議を自民党が提出しても、仮に日本共産党が協力してくれれば、自民党理事を委員長代行にしてしまえば、自公みの3党が協力しても1票差で「信任」できます。
〈東京都国分寺市では9ヶ月間の暫定予算〉
それはさておき、東京都国分寺市の平成22年度(2010年度)予算は市議会で否決を繰り返され、9ヶ月間にわたって暫定予算を組みました。国も2012年4月6日支給の恩給や、国家公務員給与、自治体に委託している生活保護費の国庫支出分、償還国債の元本と利息の支払いなどの義務的経費は、暫定予算により問題なく執行されますから、心配ありません。ただ、公共事業の執行はかなり遅れてくるでしょう。
〈予算成立のずれ込みは、予算と予算関連法案を一体的に国会が審査する時間をつくるかもしれない〉
予算関連法案のうち、「国民年金法改正案(第180閣法26号)」がまだ審議入りしていません。この法案の「第14条の3」および「第14条の4」がないと、年金交付国債は発行できず、2・5兆円以上の歳入が確保できなくなります。さらにこの法案の「国債の償還の請求、償還に要する費用の財源その他の償還に係る事項及び当該国債の返還に係る事項については、別に法律で定める」という条文の「別の法律」とは、「消費増税準備法案」だそうです。そのため、野党・自民党は消費増税準備法案も平成24年度予算案の関連法案だという論理立てをしています。そうなると3月下旬(?)以降、予算案、消費増税準備法案、平成24年度の特例公債法案、国民年金法改正案の歳入関連議案をセットにして、国会審議ができます。そのかわり、自民党は歳入関連法案でも「国税である租税特別措置法などの改正法案(第180閣法8号)」や「地方税改正法案(180閣法13号)」は、おそらく年度内に通してあげるという昨年とは反対の手法を衆参自民党はとってくると考えられます。
前述の通り、平成10年はねじれ国会ではなかったので、楽観的でした。しかし、今年は特例公債法案を媒介にして、予算と消費増税準備法案を一体的に人質にとり、6月21日の会期末を見すえながら、「熟議」の国会になるかもしれません。自民党は衆参バラバラですが、この辺は衆参とも阿吽の呼吸でできるのが自民党でしょう。そして、自民党税調の幹部(インナー)も、予算・特例公債・消費税が一体的に採決の対象となり、最終的に賛成のうえ、話し合い解散ならば、かなり得です。
〈組み替え動議ではなく、憲政史上初の国会による予算修正をすべき時期だ〉
とくに予算書に関しては、憲政史上例がない、国会発議による議員修正をしてほしいと思います。自民党の前回の与党期最後の第171通常国会では、参議院で福山哲郎さんら提出の議員修正案が可決されましたが、両院協議会では北澤俊美・議長・石井一副議長が頑張りましたが、衆院の勝利、政府原案通りの成立となりました。ただし、これは補正予算(定額給付金補正)のケースです。
きょう24日(金)の衆院財務金融委員会の大臣所信表明に対する一般質疑(いわゆる店開き)で、自民党の徳田毅さんが安住淳財務大臣の今年度第4次補正予算に「国連分担金」が計上された経緯について質問しました。何でも聞いて良い一般質疑ですが、4次補正はすでに成立済み。2期生の徳田さんがすでに成立済みと分かっていながら、予算審査に参加するチャンスがなかったのできょう聞いたのでしょう。この出来事は、国会新時代の幕開けを予感させました。ただし、予感であって、まだ開いていません。衆参与野党は、幕を明けるべきです。小沢一郎さんは「40年間、予算書を読んだことがない」と語っていますが、きょうの徳田質問は国会が明るい方向に向かっている証しです。こう見えても。
このほか修正の余地がある議案は、歳出関連法案で、「児童手当=子どものための手当=法改正案(180閣法10号)」などです。
〈内閣官房内閣総務官室作成の「閣法件名・要旨調べ」には欠陥があった〉
内閣官房がつくっている「第180回国会(常会)内閣提出予定法律案等件名・要旨調(しらべ)」という冊子があります。国会議員は誰でも持っています。この17ページをみると、国民年金法改正案について、「平成24年度以降の基礎年金国庫負担割合を2分の1とするとともに」と当たり前のことは書いてあります。しかし、「年金交付国債を発行する」ということは要旨に一言も書いてありません。持っている人は目で確認してください。9日(木)の基本的質疑では自民党の加藤勝信さんが「年金交付国債の根拠法案は国民年金法改正案」だと指摘しました(加藤指摘)。加藤さんは財務省主計局勤務の経験があります。官僚出身でなくても弁護士でなくてもすべての政府外議員は自分の目で法案を読まないといけません。そうしないといつまでたっても成長しません。民主党部門会議での役人の説明もいいですが、公明党や自民党のベテラン・中堅の国会での気になる発言の意図が何か。当該議員と面識がなくても直撃でズバリ聞いたり、同僚と話し合ってみたらいいかもしれません。
とにもかくにも、私の願いは、国会が立法府と機能すること。そのためには、予算修正も含めた議員立法を期待しています。暫定予算を組んでおけば心配ありません。
私たち国民は衆議院、参議院とも1年半以内に構成を変える機会と責任があります。それだけではなく、向こう数十年にわたって日本を支えることができる本物を見つける第180常会になりそうです。
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