平成24年度本予算の衆院での基本的質疑は、9日(木)10日(金)で与野党が一巡しました。基本的質疑3日間はNHKは以前は3日とも放送していましたが、視聴率が低かったらしく、数年前から2日間のみの放送となっています。これにあわせて衆院予算委も最初の2日間で与野党が一巡する時間割を組んでいます。
それはそうと、本予算の審議がスタートすると、書くことがありすぎるので、私も書いて書いて書きまくらないといけません。
一体改革では、自民党の元厚労副大臣で日本医師会員の鴨下一郎さんが、「岡田さんは答弁の中で、“旧制度”という言い方をしているが、それはおかしい。(自民党・公明党政権が2004年に改正した)現行制度と呼ぶべきだ」とし、「最低保障年金は民主党案と呼ぶ」と議論を整理しました。この後に質問に立った、公明党前政調会長の人柄の斉藤鉄夫さんは「素案というのは現行制度の改革案そのものです。旗を降ろして素案を撤回すれば、明日にでも協議が始まる」と述べました。
自民党の鴨下さんと公明党の斉藤さんは相互の連携にはふれませんでしたが、
「素案・民主党案」vs「自公案・現行制度」
という構図が出来上がりました。これは必ずしも野田政権が思い描いていた構図ではありません。しかし、安住淳財務相によると、「大綱の決定から消費増税法案の提出まで内閣法制局の作業も入れると1ヶ月間かかる」(火曜日のBSフジ・プライムニュース)とのことで、2月末には大綱の決定が必要となります。ということは、今から与野党協議ないしは3党協議での大綱は日程的に難しくなってきました。9日の加藤勝信さん(自民党)の「年金交付国債の償還財源は消費税増税が前提だから消費増税法案も平成24年度予算の関連法案だ」という趣旨の発言は、クセ球でしょうが、大綱を民主党・国民新党・新党大地真民主の与党3党だけで決定しなければいけない可能性が高まってきました。総理は突撃するしかない、と私は考えています。
前政調会長の斉藤さんは、一体改革についての発言はかなり慎重な話しぶりで、紙に目を落としてはいませんでしたが、ある程度党で決まったペーパーのようなものが事前にあるような雰囲気でした。これはやはり、公明党の支持者、とくに創価学会員の生活ぶりが影響していると考えます。まず、やはり消費税率が上がるとサイフに直結するという人は多いはず。そのうえで、最低保障機能を高めた年金の方が助かる、という人も多い。自営業者も多く、ある程度稼いでいる人には国民年金保険料が高くなるのはイヤだ。支持者の中でも賛否が拮抗するでしょうが、おそらく否の方がやや多いか。2004年改正は初代厚労大臣を4年間務めた坂口力さんの功績であり、「100年安心」は批判されましたが、公明党としては協議には応じたくないのが本音でしょう。ここをどう突破するか。新進党解党に最後まで抵抗し、3党協議を進めたことで、公明党支持者にも一定の信頼があるとされる岡田克也副総理・一体改革相は「過去に自公与党案に厳しく言い過ぎたのは事実である」としながら、スウェーデンのように、超党派で政権交代しても変わらない年金制度の構築への理解を求めました。
茂木敏充政調会長は「最低保障年金の不都合な真実」と発信し、「民主党は公助があってから自助、だからうまくいかない。自民党は自助があってから公助だ。政権をとったら生活保護(の制度)は変えさせていただく」とずいぶんハッキリと述べました。これに先立ち、小宮山洋子厚労相は「生活保護受給者も働ける人はなるべく働いていただく。長く生活保護を受けるほど、働けなくなる傾向がある」と答弁しました。
茂木質問に対して安住財務大臣は「交付国債でやることはけっして良い方法ではないが、年金の国庫負担2分の1を何とか維持するために発行させていただく」としました。3党合意による子どものための手当見直し(坂口修正)に関して、茂木さんは「3党合意がなければ、24年度予算の(赤字国債発行の)44兆円枠はどうなっていたか」と質問。安住財務大臣は「半額支給で年間2・7兆円、(マニフェスト通りの)全額(支給)なら4・5兆円。44兆円の枠だったら収まらなかったと思います」と認めると、茂木さんは「渡りに船だったんですよ」と3党合意の恩を強調しました。
このほか、鴨下質問に対して、岡田さんは2007年11月の野党内野党(民主党副代表)時代の、「自民党の野田毅先生と勉強させていただいたときのように超党派での議論が必要だ」とし、「スウェーデンのように超党派で年金制度を変えて、政権交代しても安定した制度が必要だ」と答弁しました。斉藤さんにも同様の答弁をしました。このときの超党派勉強会は民主党代表の小沢一郎さんと自民党総裁の福田康夫首相の「大連立騒動」のなかで、さらに火に油を注ぐ格好のニュースとして捉えられ、それで終わりました。岡田さんはマスコミに恨み節も言いたいところでしょう。ただ、マスコミも記者の人数が限られているので、そのときの経緯は、お互いに恨みっこなしかな、という気がします。
ここからは私の意見です。この日、岡田さんがスウェーデンのことをふれたので、私も10年近く「積ん読」だったスウェーデンの福祉と財政に関する専門書を2冊ほどナナメに目を通しました。この中で、スウェーデンでは「最低保障年金」に当たる年金には、住宅手当があるようです。わが国では生活保護には住宅加算があり、持ち家の人は生活保護は受給資格がありません。一方で国民年金が「例えば月7万円の単身者が家賃で数万円引かれると、食費だけでギリギリ」というシーンをテレビ報道でも見ることができるようになりました。最低保障年金に住んでいる街の相場の家賃を一定額補助するような手当を組み込むという考えもあるのではないかと感じました。とはいえ、「試算」ができなくなりますし、議論を混乱させるので、この一段落でふれるだけですが、そういう考え方も必要では。世論が「年金と生活保護」に思いを馳せることになっています。これは、「年金の最低保障機能」にフォーカスがあたるチャンスです。保険料納付額と年金受給額の「公平性」に関しては、理解が進んでいると考えます。高度に発展したわが国の自由主義経済。そこで大いに成功した人は、やはり成功しなかった人のおかげで今の自分があるという「負い目」があると思うんです。もともと農耕社会の島国で、アメリカのようなことをしてきたわけですから。そこで、罪滅ぼしというわけでもありませんが、年金は最低保障だ、という共通の理解がほしい。私は今、その説得の手応えを感じつつあります。「40年間保険料を納めてきたのに納得がいかない」という人には、「65歳から受給して105歳以上までドンドン長生きして取り返してください」と言って最後は笑って収まる。そういう日本国、日本社会であってほしい。
ところで、みんなの党政調会長の浅尾慶一郎さんから再び歳入庁構想が出ました。よく調べてみると、民主党の09マニフェストには、歳入庁が入っていますが、10マニフェストでは消えています。今通常国会で、みんなの党や新党きづなから指摘が出てきました。そして、10日付で、民主党政調内にこのプロジェクトチームができたように聞きます。しかし、これはいただけません。安住さん、岡田さん、小宮山さんというところが、歳入庁構想に前向きでない気配があるのですから、党が推進するのならいただけません。身代わりになって、閣僚に「今党が議論していますから」と答弁してもらうのだったらいいです。しかし、橋本行革でなぜ大蔵省から国税庁が分離できなかったのか。前原誠司政調会長もよく抑えて欲しい。2正面作戦はいけません。年金の手直しと公務員制度改革です。歳入庁はもう忘れましょう。
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