[画像]記者会見する山口那津男代表、2012年2月14日(火)、公明党YouTubeチャンネルから。
国会は2012年2月15日(水)、衆院予算委員会の基本的質疑最終日の審議が午前9時からスタートし、1日半ぶりに正常化しました。自民党の下村博文影の文科大臣は「1日半も空転するような話ではないですよ」としながら、3党合意の政策効果の検証をやるべきだとしました。下村さんは「岡田さんから輿石東さんへ民主党幹事長として3党合意の引き継ぎができていないんじゃないか」と批判しました。野田佳彦首相(民主党代表)は「政党間協議をしっかりやっていきます」と確約しました。
空転国会の経緯の確認です。13日(月)の下村質問で、「3党合意による高校無償化の3党合意による政策効果の検証の実務者協議がなかったので、議題である平成24年度予算に反映されていない」という指摘に対する答弁が「不誠実だ」とされたことです。これは55年体制で見られた「国会の止め男」の役割を下村さんがやったのではなく、突発的なストップに感じられました。正確には、午前の審議が終わり、委員長が休憩を宣言して、昼の理事会の協議の後、休憩のまま散会した、という流れです。そして翌日も午前9時に委員会が設定されていました。これを理事会が設定したのか、委員長が職権で設定したのかはよく分かりませんが、いずれにそり開会にいたらず夕方に流会(りゅうかい)しました。本予算の基本的質疑が「2月14日」に終わっていないということには、今の時代、与野党とも危機感の共有が必要です。
3党合意による政策効果の検証は、農業者戸別所得補償では実務者協議が昨秋(予算編成期)にありました。民主党から郡司彰・参院議員、自民党から宮越光寛さん、公明党から(おそらく)石田祝稔さん。3人とも「農水副大臣経験者」という政権交代ある政治にふさわしい布陣でした。最終的には民主党が具体的な数字の資料を投げて、「以上で終わります!」という顛末だったように聞いています。
一方で、高校無償化の方はどうなったのかな?と昨秋から思っていましたが、報道がありませんでした。下村質問でようやく分かりましたが、3党実務者協議は開かれていなかったのです。そして、昨年末に平成24年度予算(案)の政府原案を決定し、召集日(1月24日)に国会に提出しました。もちろん、なぜ下村さんは2月の予算委基本的質疑まで言わなかったのかということもありますが、民主党側に不十分な対応があったのは事実。
公明党の山口那津男代表は14日午前での記者会見で、「ではよろしいでしょうか? 私からは冒頭一点申し上げます」として、「今(衆院)予算委員会がストップをして正常化をしておりません」と切り出しました。そのうえで、3党合意を誠実に履行すべきだとして、「その当事者であった岡田幹事長(発言ママ)の副総理としての答弁があまりにも責任感を欠いている」と批判しました。
ちなみに、山口さんは1993年の細川内閣が防衛政務次官として政務三役の重責を担いましたが、岡田さんは2009年9月まで政務三役の経験がありませんでした。そのうえで、「民主党に一義的に責任があり、政党としての取り組みが一貫性を欠いているところから生じた問題だ」とし、輿石東幹事長・樽床伸二幹事長代行ら現執行部を批判しました。記者からの「公明党も高校無償化に賛成のはずだが」との質問には、山口さんは「まずは政策効果の検証をしてからでないと予算の見直しもできない」ともっともな意見を述べました。
民主党、自民党、公明党が3党合意による政策効果の検証のための実務者協議に急速に復帰した背景には、2月14日時点で本予算の基本的質疑が終わっていないことに対して共通の危機感があると思われます。橋下徹・大阪市長が党首を務める「大阪維新の会」が「参議院廃止につながる日本国憲法改正」を打ち出し、一定の支持を得ています。このため、本予算の審議が遅れれば、与党・民主党だけでなく、自民党や公明党への批判があるとの考えがあるでしょう。
政策効果の検証によって、本予算案の組み替え(政府が撤回のうえ、編成替え)を求める声があります。ただ組み替えもいいですが、国会による修正も考えて欲しい。昨年の第177通常国会(震災国会)では様々な内閣提出の議案が民自公の議員発案による修正で仕上げました。参院では3年前の通常国会(第171麻生政権交代解散国会)で野党・民主党参院政審会長の福山哲郎さんが提出した第2次補正予算(麻生定額給付金補正)を修正可決しています。両院協議会で否決されました。
大日本帝国憲法では「帝国議会による予算の協賛」が日本国憲法では「国会による予算の審議」に改正されました。しかし、国会による予算の修正議決の例はありません。「憲政史上初」のことをやらないと、ますます国会支持率が下がってしまいます。フェースブック社の上場が話題になっていますが、創業者のザッカーバーグ社長は「リスクをとらないのが最大のリスクだ」が口癖だそうです。国難の折りだからこそ、勇気を持った対応に期待しています。
【日本銀行がインフレ目標を初めて導入】
2012年2月13日14日の両日、日本銀行(ニッポンギンコウ、BOJ)は金融政策決定会合を開き、これまでの「中長期的な物価安定の理解」から「中長期的な物価安定の目途(Price Stability Goal」として、インフレターゲットをBOJとして初めて導入しました。朝日新聞は2012年2月14日付夕刊の1面トップの前文(リード)で「事実上の「インフレ目標」を日銀として初めて導入したことになる。」と報じました。
先月のアメリカ中央銀行FRBのベン・バーナンキ議長が「Long-run Goal」として2%を設定したことから、BOJもインフレターゲットに追従しました。中長期的な消費者物価の上昇率を2%以内として、当面は1%を目途とする、ということで、これは2%~0.1%という意味にもとれます。今後も政府・国会による注視が必要です。
BOJは長期国債の買い入れ基金を10兆円増額しました。これは特別会計総則第5条によるBOJ所有の長期国債の財務省への償還のときに、買い入れる「日銀乗り換え」で対応するものとみられます。仮にBOJが枠を最大限に活用すれば、国民1人当たり10万円の現金が市中に流れることになります。震災後経済は一息つけそうです。とはいえ、バラ色ではありません。先週の国会では、日銀乗り換えについて自民党政調会長の茂木敏充さん、インフレ目標では西村康稔・影の財務大臣の圧力が功を奏した格好です。そして、閣内から、古川元久・経財相も同調し、今週のNHK日曜討論でダメ押ししたのが決定打になったように私には感じられます。
[写真]古川元久・経財相。
民主党有志議員は政権交代直後から「デフレ脱却議連」をつくり、松原仁会長、宮崎岳志事務局長のほか、経済企画庁出身の金子洋一参院議員らがこの問題に取り組んできた背景があります。ぜひ、これで調子に乗らず、これからも「物価の番人」の番人をしてほしいと考えます。FRBの設置根拠には、「雇用の最大化」が盛り込まれていますが、現行日銀法は物価の安定にとどまっています。「物価の安定」と「雇用の最大化」は車の両輪であり、物価だけでなく、雇用の最大化につながっているか、しっかりチェックいただきたいと存じます。
白川方明総裁も任期を折り返しました。白川日銀の下、国際的な相対評価のなかで、円(Yen)の健全性が高まったのは事実です。関東大震災・昭和恐慌のときのように震災手形の整理に手間取るという政策リスクもありません。しかし、そろそろ円(Yen)に働いてもらわないといけません。バラ色ではありませんが、半歩前進しました。
[お知らせ①]
「国会傍聴取材支援基金」を設けました。
アクセス数を稼ぐためにいたずらに煽ったり、しがらみの少ない本音の国会傍聴記をブログで今度とも伝えいきたいと考えています。
詳細は、次のリンク先でお読みいただけます。
「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い
どうぞご協力ください。
[お知らせ②]
会員制ブログを設けております。
今後の政治日程 by 下町の太陽・宮崎信行
月840円(税込み)となります。最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。「レジまぐ」のシステムで提供しています。
クレジット払いのほか、「ポイント」を購入して、そのポイントを充ててお読みいただけます。
[お知らせおわり]