【2012年2月21日(火) 衆院本会議】
平成24年度の特例公債法案(180閣2号)が安住淳・財務大臣の趣旨説明で審議入りしました。各党の質疑もありました。
衆参ねじれ後の特例公債法案の審議は、2度目で、昨年の第177通常国会では、2月15日の衆本で審議入りしています。すでに6日間遅れとなっており、年度内成立は微妙な情勢。それ以上に問題なのは、政権交代後、採決では賛成している自民党と公明党が現時点で「反対」の意向を示しています。当然、参議院では過半数を大きく割り込む状況で、法案は廃案になる可能性があります。その場合は、野田佳彦総理は「内閣総辞職」か「衆議院解散か」の2者択一を迫られることは絶対的に確実です。まさにハムレットです。
それほどの重大法案なので、全文引用します。
[法案全文引用はじめ]
第一八〇回閣第二号
平成二十四年度における公債の発行の特例に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、平成二十四年度における国の財政収支の状況に鑑み、同年度における公債の発行の特例に関する措置を定めることにより、同年度の適切な財政運営に資することを目的とする。
(特例公債の発行等)
第二条 政府は、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四条第一項ただし書の規定により発行する公債のほか、平成二十四年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができる。
2 前項の規定による公債の発行は、平成二十五年六月三十日までの間、行うことができる。この場合において、同年四月一日以後発行される同項の公債に係る収入は、平成二十四年度所属の歳入とする。
3 政府は、第一項の議決を経ようとするときは、同項の公債の償還の計画を国会に提出しなければならない。
4 政府は、第一項の規定により発行した公債については、その速やかな減債に努めるものとする。
附 則
この法律は、平成二十四年四月一日から施行する。
理 由
平成二十四年度における国の財政収支の状況に鑑み、同年度の適切な財政運営に資するため、同年度における公債の発行の特例に関する措置を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
[法案全文引用おわり]
これだけ!
第45期衆議院の解散にかかわる重大法案なのに、文字数はたったの458文字(提案理由除く)。原稿用紙1枚ちょっとです。しかし、これがないと予算委員会(中井洽委員長)が審査中の平成24年度予算書の予算総則第6条の「財政法第4 条第1 項但し書きの規定により平成24年度において公債を発行することができる限度額は、5・9兆円とする。平成24年度における公債の発行の特例に関する法律(仮称)の規定により公債を発行することができる限度額は、38・3兆円とする」という規定を裏付ける法律ができなくなります。つまり、44兆円の国債(建設国債5・9兆円、赤字国債38・3兆円)発行にともなう現金収入(歳入)を国は得られなくなりますので、44兆円の歳入欠陥が生じます。そうすると、一般会計の執行は50兆円ほどになります。この場合は、地方交付税交付金もカットせざるを得なくなります。
円高が問題となっていますが、円高とは私たちの円(Yen)が国際的評価が強い状態でもあり、円の健全性が保たれていることにもなります。平成23年度の特例公債法案の採決・可決・成立に自民党と公明党がサインしてくれたのが、昨年8月9日(火)の3党合意です。この直前の8月4日(木)に円は対ドルで「79円06銭」でした。そして、3党合意による特例公債法案の衆院通過(民自公賛成なので参院での可決成立は確実)後、円高が続きました。ふたたび79円台に戻ったのは、先週の金曜日(2月17日)が初めて。火曜日(2012年2月14日)に、BOJ(日本銀行)が「中長期的な物価安定の目途(めど)」を発表し、初めてインフレターゲット(物価安定目標)を導入しました。これで79円台の円安になりました。ですから、3党合意からインフレターゲット導入までの期間、79円を超えた円高状態だったことになります。この数字でハッキリ示された歴史的事実を、口の悪い人や小沢グループは、「岡田克也さんが3党合意に成功したから円高になって迷惑だ」とか、「岡田さんの父と兄が経営するイオンは輸入だから円高で助かるが、日本を支えたものづくり輸出業者は、岡田のせいで円高になって損した」と批判するかもしれません。しかし、タイの洪水被害や、欧州債務危機は岡田さんがしかけたわけではありません。また3党合意がなければ長期金利は急上昇した可能性があります。円の健全性が保たれながら、国際基軸通貨としてドルは中長期的に壊れていっている。いわば「1ドル50円時代の到来」(浜矩子・同志社大学教授)に対応できなければ、震災後の日本で生きていけません。これは絶対的な真理です。日銀による震災後の円の健全性の確保による混乱回避は評価されるべきです。そして、そろそろ私たちは我慢してきた配当を少しずつですが受け取っていい時期に来ています。
このように特例公債法案は、為替相場を大きく左右します。長期金利も大きく左右します。また、解散につながるかもしれません。国債の価格(長期金利)が大きく変動するかもしれません。小沢グループが後ろから鉄砲を撃ってくるかもしれません。凄まじいばかりの各方面からのプレッシャーに、私たち民主党政権は挑んでいかなければなりません。その、夏休みの重い重い宿題がきょう、目の前に積まれました。
きょうの本会議では、安住淳財務大臣が「平成24年度の特例公債法案(180閣法2号)」、「特別会計法改正案(180閣法3号)」、「国税である租税特別措置法などの改正案(180閣法8号)」を趣旨説明しました。
[画像]衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
川端達夫・総務大臣が「平成24年度の地方財政計画(地財計画)」、「地方税法改正案および国有資産所在市町村への交付金改正案(180閣法13号)」、「地方交付税法の平成24年度当初予算における改正案(180閣法14号)」を趣旨説明しました。
[画像]衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
この6議案が審議入りし、おのおの、衆院財務金融委員会(海江田万里委員長)や、衆院総務委員会(原口一博委員長)で審議します。
きょうは、今年度最終補正予算を仕上げた2月3日(金)以来、18日ぶりに開かれた本会議でした。しかし、冒頭に残念なことがありました。横路孝弘議長が「もうちょっと座ってからですね」と開議を遅らす旨を鬼塚誠・事務総長に話す声がマイクを通じてインターネットで流れました。どうやら、集中力に欠いた衆院議員が少なからずいたようです。いったいどこの党でしょうか。本予算審議にかかわる政務三役、与野党予算委員は大忙し。これに対して、与野党衆参の政府外議員が暇なのは当たり前。なんら批判されるいわれはありません。小選挙区で劣勢な人は地元活動に集中し、優勢な人はリラックスタイム。土日がない分、こういうときに政治家は自由な時間の過ごし方をするメリハリが重要だし、そうできる人ほど優秀です。党幹部や党の各政策分野のまとめ役は、一般法案が内閣から提出されているし、3月前後から審議が始まるので、ていねいに「弾込め」をしていきます。ただ、小選挙区で劣勢の与党議員が部門会議で、提出法案の予習をする以外に、何か発言をしたり、政策に口出ししたりするのはおかしなことです。大局観を持たねばいけないのは、衆参与野党とも、最も高く宿題が積まれた厚生労働部門会議・部会の議員です。テキパキと短い時間で多くのタスクを仕上げなければなりませんから、足手まといは排除すべきです。それが震災後日本の厳しさであり、やさしさです。
第180通常国会には、年金交付国債2兆円を発行するために必要な「国民年金法改正案(180閣法26号)と、3党合意によるマニフェスト修正を盛り込んだ「児童手当法改正案」(180閣法10号)が提出されています。しかし、きょう、小宮山洋子厚労大臣による両案の趣旨説明はありませんでした。この法案を通せなければ国民生活は混乱するし、そもそも歳出金額があわせて5兆円以上になる法案です。これをしっかりと勉強してからでないと、部門会議で偉いことを言う権利はありません。
最終的には、公明党や自民党は特例公債法案の採決に応じてくれるとは思いますが、さまざまな精緻な議論が必要です。なるべく、国民の目に見える場で議論して欲しいですが、時には議員会館や議員宿舎の個室で、ひそひそと話し合うこともあっていいでしょう。そのためには、党派を越えた信頼。そして国家国民に報じる姿勢が必要です。ねばり強く、辛抱強く。
まあなんとかなるものです。総理である野田さんが最終的な場面で極めて高度な政治判断ができるように、雑草をとり、心の備え、整理整頓、防災訓練、イメージトレーニングをしっかり毎日やっておかないといけないです。
なお、民主党国会対策委員会(城島光力委員長)は、衆院財務金融委員会、衆院総務委員会の理事を見直し、第180通常国会時点でベストと思われる理事を配置し直しました。昨秋の第178・第179臨時国会では党内外から一部キャリア不足を指摘された理事がいました。交代した理事も一生懸命やりました。ただ、自民党理事、公明党理事はベテラン中堅なので、カウンターパートナーとしては器量不足は否めませんでした。それはさておき、新しい理事をみんなで支えていきましょう。
【追記 2012年2月22日 午後8時半】
ふと思いつき、平成24年度特例公債法案が審議入りした2012年2月21日(火)の経済指標を書いておきます。
10年物の第320回国債の長期金利(日本相互証券)は0・960%。
日経平均株価(Nikkei 225)の終値は9463円02銭。
出来高は23億8000万株ですから商いは最近では多いほうでしょう。
そして、最近は影が薄かった東証2部ですが、東証2部の平均的な株価が26日間連続で高値を付けたそうです。
ニューヨークダウ(NY Dow Jones)工業株30種平均は取引中で1万2992ドル14セント。
円ドル相場(東京市場)は、79円79銭~80銭。
円ユーロ相場(東京市場)は、105円75銭~79銭。
ドバイ原油の現物4月渡しは1バレル117ドル70セント~80セント。
となっています。
【追記おわり】
ところで、3党合意での政策効果の検証について、農水分野の農業者戸別所得補償では行われたのに、文科分野の高校無償化について行われなかった理由が月曜日(2012年2月20日)の衆院予算委の一般的質疑の2巡目での自民党の下村博文シャドウ文科相の質問で分かりました。昨年の第177通常国会の衆院文部科学委員会の民主党側筆頭理事だった小沢グループの松宮勲議員(福井3区で落選し比例復活)が筆頭理事を投げ出してしまったことから、引き継ぎができなかったのが要因のようです。参法の「福島における私学復旧助成特例法案(橋本聖子さんら提出)」の対応について、松宮議員が「党から一任を受けて野党と協議して合意したのに、安住国会対策委員長(当時)からストップをかけられてしまった」ことに反発し、筆頭理事を辞任した、と下村さんは説明しました。しかし、こんな理由で役職を辞めていたら、サラリーマンは毎日辞任です。まさに小沢グループの常識は世間の非常識。小沢グループは難しいことが分からないなら、体を使うべきです。野田おろしより雪おろし。もっと地元に根を張ってください。
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