[画像]伊吹文明・自民党一体改革筆頭理事におじぎをする岡田克也副総理と安住淳財務大臣、2012年6月6日正午過ぎ、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
衆議院社会保障と税の一体改革特別委員会(中野寛成委員長)は2012年6月6日(水)午後1時過ぎ、中央公聴会と参考人質疑を設定しました。今週金曜日(8日)には参考人質疑、来週の火曜日と水曜日(12日、13日)に中央公聴会を開催します。参考人質疑は全会一致、中央公聴会は共産党のみ反対。すでに、地方公聴会は今週月曜日(6月4日)に福島県、兵庫県で実施済み。これで、採決の前提がそろい、6月14日(木)以降は修正案趣旨説明、しめくくり質疑を経て、討論、採決が可能な状態になりました。
ただし、民主党と自民党などの修正協議がととのうまでは、採決しない見通し。場合によっては、6月21日(木)午前中の委員会採決、本会議緊急上程というケースも考えられます。ですから、1週間の余裕ができたことになります。
これらを踏まえて、衆議院解散の可能性や時期も含めて「今後の政治日程」を更新しましたので、ご参照ください。
中央公聴会の日程は早ければきょう付の官報で公告されると思います。中央公聴会が2日間になったことで、税制だけでなく、社会保障、子ども子育ての専門家も各党の推薦で登場することになると思います。幼稚園経営者団体から支持を受ける議員と保育所経営者団体から支持を受ける議員が混在する自民党が指名する参考人や公述人がだれになるかも注目点です。
採決に関しては、昨日の委員会で公明党の大口善徳さん(比例東海ブロック、事務所は静岡)が「やっと中央公聴会の日程を話せるようになった。総理が会期内の採決を言っているのだから、(民主)党の中でもしっかりしてほしい」と述べるなど、各党議員から消費税増税法案の早期処理を望む声が出ています。
さらに、きょう(6月7日)の午前中の審議では、幼稚園族の元文科副大臣馳浩さんが自公政権の認定こども園と一体改革法案の総合こども園法案などの「継続性」を確認。「合意できる部分と合意できない部分を切り分けたり、期限を切り分けたり(施行期日を一部先送りしたり)することもある」と修正協議のポイントを提示しました。馳さんは「法案が廃案になるかどうかは私のような一兵卒ではなく、伊吹先生が決めること」と発言しました。
昼の休憩では、岡田さんが伊吹さんに歩み寄り、おじぎをする場面がありました。前日の委員会では、「自民党三木派の“おじぎ三人衆”のような人が民主党政権にいない」と民主党の篠原孝さんが言いました。篠原さんは「民主党はあんまり派閥がないという前提ですが、(野田グループこと花斉会の)蓮舫さんや近藤洋介さんのような生意気3人衆はいる」としました。もう1人がだれかは不明。いわば岡田さんがおじぎ1人衆を買って出た格好です。
一体改革実現の流れはできた、と私は楽観視しています。
【参議院本会議が40日ぶり、23営業日ぶりに開催】
一方、参議院では大型連休入り直前の4月27日(金)以来の本会議が開かれました。5月は1回も開かれず。40日ぶり、23営業日(連休谷間除く)ぶり。内閣提出法案を仕上げる後半国会、終盤国会で、これほどまでに本会議が開かれないのはかなり違和感があります。ほとんどが衆院先議の法案である以上、参院本会議そのものが開かれないことは立法府全体が成果を挙げられなかったと断じざるを得ません。ただし、今国会では、政府が法案を出しすぎていて、成立率が低くなっている傾向があります。政治主導なのか官僚主導なのかよく分からない混沌としたねじれに支配されています。
きょうの本会議も上がり法案(委員会での法案審査を終えて可決した旨を委員長が報告し本会議で採決する法案)はありませんでした。柳田稔・予算委員長を選出しただけ。辞任した予算委員長に関して、議長から「一言申し上げます」と切り出して言及があったぐらいが「良識の府」を感じさせたぐらいでした。参議院だけに設置された「調査会」(3年任期)の中間報告があったのも、必死に存在意義を主張しているようにも思えました。
連休中からきょうまで、政府外の参議院議員はいったい、どうやって過ごしていたのか。全議員に説明して欲しい気がします。人気お笑い芸人の親の生活保護問題で話題になった自民党参院議員は「まだまし」。
参議院のそのものの存在意義が薄れます。尊敬される良識の府であってほしい。他人行儀で無責任な参議院議員が多すぎます。だから、こまめな各党の一部の参院幹部が偉くなりすぎるんです。
[お知らせ1]
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[お知らせおわり]
トニー・ブレアは1997年総選挙でセッジフィールド小選挙区で3万3526票の得票率71・2%の圧勝で4選し、勤続14年目にして初めての与党、それもいきなり総理大臣に任命されるためにバッキンガム宮殿を訪れた際、エリザベス2世女王からこう言われたそうです。「あなたは私が会う10人目の首相です。1人目はウィンストン・チャーチルでした」。エリザベス女王は当時45年目でした。今は60年目で、12人目の首相(保守党党首のキャメロン首相)。
野田佳彦首相が「今国会での成立に政治生命をかける」としている一体改革関連法案。仮に会期末の混乱で、総辞職してしまえば、平成24年の天皇陛下は次の首相に、こう言うかもしれません。「あなたは私が会う18人目の首相です。1人目は竹下登でした」あるいは「あなたは私が任命する17人目の首相です。1人目は宇野宗佑でした」。
日本の失われた20年も当然としか言いようがありません。まさに100年前、漱石の「三四郎」に出てくる広田先生が日英同盟について、たったひと言「滅びるね。」と述べたことを彷彿とさせます。
ところで、宮内庁は昨夜、三笠宮家長男の三笠宮寛仁(ともひと)親王が呼びかけに応じない状態だと発表しました。陛下のおじさんおばさんにあたる三笠宮さまご夫妻はご健在。次男の桂宮さま、3男の高円宮さま(故人)が宮家を創設されながら、長男の寛仁さまが宮家をご創設されていないのは、三笠宮家を継がれるから、というのが衆目の一致するところでした。皇室のあり方についても、総理に重責がのしかかります。その点では、映画「英国王のスピーチ」でのチャーチル首相のふるまいは立派だったと思います。ただ、あれちょっと脚色が強いという指摘があるようですが、やっぱりチャーチルはすごいと感じます。そして、第二次世界大戦の英雄として、1945年7月に解散するという分かりやすぎる戦術に出たチャーチル保守党をいったん野党に転落させながらも、その後、再度保守党に政権をやり、第2次チャーチル内閣をつくり、エリザベス2世の女王戴冠式を成功させた英国民の正直さが立派だと考えます。
◇
報道によると、自民党幹事長の石原伸晃さんが、社会保障の安定財源確保のための税制抜本改革のための消費税など国税増税法案(180閣法72号)について、民自などの修正協議で、秋の税制改正に先送りすることもあり得ると示唆したそうです。これは歓迎したいところです。この後の、2012年6月5日(火)の自民党幹事長会見で、石原さんは「(税法の修正は)簡単ではないけど、わかっている者がやれば、難しくない」「私たちの社会保障の考え方は、基本法という形で既にまとめてあります。これが大前提ですが、これを乗り越えれば、税法の方は、社会保障のものほどは、手間はかからないのではないかという印象を持っています」「税の専門家として過去に修正協議等々をやった経験からして、社会保障ほど大変ではないのではないか、ということです」と語りました。
おそらく実務者は野田毅・自民党税制調査会長ということになるんだろうと思います。昨年の平成23年度の国税改正法の修正協議(民主党・藤井裕久、自民党・野田毅、公明党・斉藤鉄夫の各党税調会長)のときと、衆参の議会構成が変わらず、震災後であるという状況が変わらない以上、昨年と同じ結論を出すべきでしょう。
石原さんは国民あっての国家だということをよく理解してハッキリモノを言う東京っ子の鑑といえる政治家だと信じています。
いずれにしろ、かなり楽観的に考えていいと考えます。
天皇陛下の即位の礼を取り仕切った、海部俊樹首相は「回顧録」で、次のように振り返っています。
「物事がまとまりかけると、自分の存在価値が低くなるから、つぶす。つぶすためには、横車でなんでもゴリゴリ押して、荒れるなら荒れるでよろしい。小沢氏は、そんなことを繰り返した。何かがちょっと育ってくるとゴツン、少し目が出始めるとゴツンと叩いてしまう性癖に、壊し屋という異名が付けられた」(162ページ)。
そのうえで、「なぜ、あのタイミングであえて旧公明系にくさびを入れたのか、未だに私は理解に苦しむ。新進党は、文句を言わずにグッと我慢してみんなでやっていけば、いずれ政権が取れたはずだ。それなのに、小沢氏は自ら喧嘩を売った上、「このままではジリ貧になる。それなら解党だ」と極端に走ってしまった。(自民党)幹事長辞任に次いで二度目の逃亡。あれには私も、お前、またか。おかしな奴だな」としか言いようがなかった・・・・・・。こうしてこと志に反し、衆参214名でスタートした新進党は、3年余りで自壊した。求心力を発揮できなかった責任の一端は私にある。この場を借りて、改めてみなさんにお詫び申し上げる」(170ページ)。
白ゆりは剛腕に勝る。6月は創価学会婦人部の月だそうですが、創価学会婦人部のみなさんは、「私たちが支援した新進党の資金はその後どうなったか」を国会で証人喚問を含めて徹底検証するよう、公明党国会議員をつるし上げ、突き上げたらいいと思います。
昨日の衆議院社会保障と税の一体改革特別委員会で、自民党の坂本哲志さんと民主党の岡田克也副総理の間で、面白いやりとりがありました。結党以来、自民党議員は国会で派閥に言及することがほとんどありませんでした。政治倫理に関する審議では、たまに言及があります。坂本さんは、前日の内閣改造を受けて、本心から現在の日本の政府・内閣が心配で人事の質問をしたように感じました。だから、自ら「私は近未来政治研究会、山崎派に所属しています」と述べたのでしょう。そして、小泉純一郎首相(自民党総裁)が同じ清和会の安倍晋三自民党幹事長を充て、総務会長、政調会長の派閥も挙げて、「初めて脱田中派に成功した」としました。これは野田首相(民主党代表)もそういった気心の知れた人を民主党幹事長に充てるべきだという主張です。これについて、岡田さんは答弁の後に、「ところで、先ほどの話で余計かもしれませんが付け加えます」として、「あのとき、(野党第1党の)民主党幹事長として見ていましたが、総裁と幹事長は別の派閥から出すという長年の自民党の伝統(「総・幹分離の原則」)を破るということで、旧田中派支配から脱却したわけですが、同じ派閥から安倍幹事長を起用したことで、小泉総理は求心力を持つと同時に、自民党内に遠心力を内包してしまったことで、郵政政局で党が割れたと思っています」という趣旨の発言をしました。これに対して坂本さんは「だから自民党はぶっ壊すことにつながったんだ」と応じました。
政策より前に、人事です。それが与党が内閣をつくる議院内閣制のすべてのスタートです。こういった党内派閥の話を自民党議員が国会でするようになったのも、政権交代の成果です。繰り返しますが、坂本議員が自分の派閥に言及したことは、彼が国のことを真剣に考えている証左だと考えています。
与党では執行部への求心力が働き、野党では執行部への遠心力が働きます。だから、3年間常に野党だった新進党は遠心力が働き、ボロボロと離党者を出し、ついに解党しました。第45期衆議院の3年間を見ていると、野党である谷垣自民党が離党者を出さないのに、与党民主党から離党者が出るという逆転現象が起きています。しかし、小選挙区当選者の離党者(宮城2区の斎藤恭紀さんら)がいることを考えれば、単に考えが未熟なんでしょう。
そこで、岡田答弁からすると、野田さんとは院が違う輿石東さんが民主党幹事長であることは、小泉自民党とは逆に党内に求心力を内包したと考えられます。しかし程度問題とはいえ、野田総理の求心力は下がります。第45回総選挙無効訴訟の最高裁違憲判決(ただし原告敗訴)を踏まえた定数是正(0増5減)ができていない状態で「政治生命を懸けた」会期末を迎えてしまったことは、野田さんが仰々しい言葉を軽々しく使うという本人の未熟さによります。解散はできても、総選挙は出来ない。それでは意味がありません。
しかし、修正協議はまとまるでしょうし、会期内に衆院を通過するでしょう。野田総理は今国会の本予算審議中に一度も席を外してトイレに立つことがありませんでした。総理は我慢強いと私は思います。野田さんは輿石幹事長と二人三脚でやっていかなければ道は開けません。総理には、年頭会見で紹介した船橋高校の同級生から贈られた世界で最も有名な6語(Never Never Never Never give up) 。総理は船橋高校の歴史の授業で聞いたその言葉を忘れていたそうです。長い長い通常国会でまた忘れたかもしれません。総理は、会期末にあたりもう一度思い出して欲しい。
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