【衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 2012年6月22日(金)】
社会保障と税の一体改革に関する特別委員会で、民主党1期生の稲富修二さんが答弁に立つ場面がありました。稲富さんは松下政経塾出身で、西鉄沿線の都市部、福岡2区で、自民党の山崎拓元建設大臣に勝って、初当選しました。この選挙区は以前にも民主党新人が金星を挙げたことがありましたが、経歴詐称により失職しています。現在はダーツバーの雇われ店長をしているというような噂を聞きましたが、そのため、候補者選定には慎重を重ねたようです。
稲富さんは質問デビューは比較的遅く、驚かれました。きょうは社民党の同じく1期生である中島隆利さんが「きょうは初めて1時間の質問時間をもらいました」としながら、3党協議参加政党に対して、消費税反対の立場から質問。稲富さんは消費税増税時の事業者の転嫁対策について、転嫁カルテルを認めるなどとする党内のワーキングチームの検討状況を反映したと思われる法案修正案について答弁したようです。おそらく消費増税法案の第7条に関する質疑だと思います。これは3党合意で「転嫁対策については、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、独占禁止法・下請法の特例に係る必要な法制上の措置を講ずる旨の規定を追加する」となっています。
2014年4月の消費税増税の前にやるべきことがあります。それは独占禁止法改正や、簡素な給付措置などの法的措置です。それと議員仕分けです。
きょうは何とも国会らしい国会になってきて、後に、衆議院史において、忘れられない表情となる国会になりそうな気がします。委員長は中野寛成さんです。
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[画像]背広の内ポケットのマニフェストを見せる、長妻昭・法案提出者、2012年6月22日(金)、衆議院社会保障と税の一体改革特別委員会、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
【衆議院社会保障と税の一体改革特別委員会 2012年6月22日】
3党合意による、新規提出衆法2法案と、提出済み閣法7法案の修正案(うち1法案は撤回の見通し)が審議入りしました。
答弁席には、きょうから、民主党から長妻昭さん、古本伸一郎さん、和田隆志さん、柚木道義さん、泉健太さん、江端貴子さん、自民党から鴨下一郎さん、田村憲久さん、野田毅さん、加藤勝信さん、馳浩さん、公明党から西博義さん、池坊保子さんが座りました。ちなみに、参議院でも100時間審議になれば、この人たちが法案・閣法修正案提出者として座ることになるんでしょうが、選挙区は(油断しなければ)大丈夫そうな人がそろいました。なお、公明党は3党協議参加者は答弁者に入っていないようです。
きょうは、3党協議に参加していない、各党の質問がありました。
長妻昭さんは、新党きづなの小林正枝さんから、「マニフェストを持っているのか」と聞かれ、内ポケットを見せ、きょうは持っております」と答弁しました。
これに先立つ、日本共産党の佐々木憲昭さんの質問に対して、「政権交代可能な政治体制になったが、ねじれ国会という現状がある」として、マニフェストの修正実現が必要だとしたうえで、年金制度に関しては「政権交代のたびに制度を変えることになっては国民の迷惑になる」とも指摘しました。
長妻さんはあくまでも第45期衆議院で勝利したマニフェストを土台にして、第22期参議院での直近の民意である衆参ねじれの下、3党で粘り強く修正マニフェストを実現させようとの気概を見せました。
これについては党内手続きにおいて、厚生労働委員の民主党・三宅雪子さんから「マニフェストを持っているのか」との指摘を受けたと報じられており、三宅さんの指摘を受けて「きょうは持っている」と発言したと思われます。
[写真]民主党議員で衆議院厚生労働委員の三宅雪子さん、本人公式ホームページから。
佐々木さんは、「支えあう社会」という言葉が年金の最低機能強化法案から3党修正したのはどの政党かと質問しました。民主党の古本伸一郎さんに聞きました。古本さんは「違う」。公明党の西博義さんも「違う」と答弁しました。ここで、伊吹文明筆頭理事(自民党)から「西さんは実務者に入っていないよ」とヤジを飛ばしました。そのうえで、佐々木さんは「だったら自民党ですね」と質問すると、野田毅さんが支えあう社会という言葉は公助の意味合いが強く、「自助・共助・公助」の自民党の新綱領を入れ込んだ、と受け取れる答弁をしました。まるで、裁判の尋問のような質問でした。
3領域を4者(政府と民主党、自民党、公明党)に質問するので、質問者も能力が問われます。
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[写真]記名投票を前提に報道する、2012年6月21日のNHKニュース7
社会保障と税の一体改革については、勘違いした報道を国会議員が鵜呑みに、その国会議員の情報を報道が伝えるという恐ろしい状況が起きています。具体的には「3党実務者による修正協議」とは法案の修正協議なのだから、法案が出ていない「最低保障年金」「後期高齢者医療制度の廃止」を「撤回する」というのは極めておかしな話です。「修正協議」は法案の修正であり、自民党や公明党が民主党のマニフェストを修正するわけがない。それを理解しない民主党議員の未熟さを分かっていて、自民党や公明党は高めのボールを投げていることにまんまと食らいついてポップフライを上げているわけです。
筆者は日経新聞政治部記者出身なので、政治部記者が法案を読み込むという作業をしていないということが分かっているのですが、それでも恐怖心を覚えました。太平洋戦争に転落していった時期と重なるものがあります。
で、このエントリーはマスコミも小沢グループも鳩が豆鉄砲を食ったようになるだろうし、読者の中には恐怖心すら覚えるでしょうが、これが日本デモクラシーの現実です。
社会保障と税の一体改革法案の衆院本会議での採決について、小沢グループから造反者が出て、離党ないしは除籍、新党結成という観測報道があります。しかし、この報道には、「無知の涙」、各社政治部のデスクや与党キャップ、票読みに回る兵隊(記者)が決定的な勘違いをしています。
それは、「記名投票」(堂々巡り)を前提にしていることです。
例えば「ホテルでの会合には「確実に反対票を投じる議員が呼ばれた」とされ、結束は固い。」という表現が大手紙(ネット版)でありました。
本会議の表決(採決)は起立投票が基本です。衆議院規則第151条第1項は「議長が表決を採ろうとするときは、問題を可とする者を起立させ、起立者の多数を認定して、可否の結果を宣告する」としています。ですから、衆議院側の本会議では、起立採決が基本です。
そして同条第2項は「議長が起立者の多少を認定しがたいとき、又は議長の宣告に対し出席議員の5分の1以上から異議を申し立てたときは、議長は、記名投票で表決を採らなければならない」としています。
「起立者の多少を認定しがたいとき」は、民主党、自民党、公明党から150人程度の造反者が出た場合しか想定できません。
「出席議員の5分の1以上の異議」ですから、これは96議員以上の署名が必要です。現在反対票を投じると見られる政党は30~40議席です。仮に小沢グループが協力するなら、60人程度が署名しないといけません。が、これは本会議前に署名する必要があるので、表決前に離党するのが「筋を通す」ことになります。
ケージの前で格好良く青票(反対票)を掲げて参事に渡し、その後、離党して、新党参加という流れにはならないでしょう。
消費税法案が衆議院を通過した昭和63年11月16日の第113臨時国会本会議の議事録を調べてみましたが、このときも起立採決です。ただし野党第1党の日本社会党は欠席していた模様です。
[国会会議録検索システムから抜粋引用はじめ]
第113回国会 本会議 第16号
昭和六十三年十一月十六日(水曜日)
午前一時開議
(略)
─────────────
○本日の会議に付した案件
日程第十二 税制改革法案(内閣提出)
日程第十三 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十四 消費税法案(内閣提出)
日程第十五 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十六 消費譲与税法案(内閣提出)
日程第十七 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
午後一時三十七分開議
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
────◇─────
○自見庄三郎君 日程第一ないし第十一は延期されることを望みます。
○議長(原健三郎君) 自見庄三郎君の動議に御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一ないし第十一は延期するに決しました。
(略)
○議長(原健三郎君) 日程第十二、税制改革法案、日程第十三、所得税法等の一部を改正する法律案、日程第十四、消費税法案、日程第十五、地方税法の一部を改正する法律案、日程第十六、消費譲与税法案、日程第十七、地方交付税法の一部を改正する法律案、右六案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。税制問題等に関する調査特別委員会理事海部俊樹君。
〔海部俊樹君登壇〕
○海部俊樹君 ただいま議題となりました六法律案につきまして、税制問題等に関する調査特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
(略)
○議長(原健三郎君) 六案中、日程第十二、第十三及び第十五の三案に対しては、それぞれ渡辺美智雄君外一名から、成規により修正案が提出されております。
この際、修正案の趣旨弁明を許します。野田毅君。
〔野田毅君登壇〕
○野田毅君 ただいま議題となりました税制改革法案、所得税法等の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案、以上三案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨とその内容を御説明申し上げます。
(略)
─────────────
○議長(原健三郎君) 質疑の通告があります。順次これを許します。
(略)
○議長(原健三郎君) これにて質疑は終局いたしました。
─────────────
○議長(原健三郎君) この際、国会法第五十七条の三の規定により、日程第十三に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案について、内閣の意見を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。
〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) この修正案につきましては、政府といたしましては、諸般の事情に照らし、異存ございません。(拍手)
─────────────
○議長(原健三郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。小谷輝二君。
〔小谷輝二君登壇〕
○小谷輝二君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました税制改革六法案に対して反対、修正部分に対して賛成の討論を行うものであります。(拍手)
(略)
○議長(原健三郎君) 羽田孜君。
〔羽田孜君登壇〕
○羽田孜君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました税制改革関連六法案につき、賛成の意見を申し上げます。
(略)
○議長(原健三郎君) 米沢隆君。
〔米沢隆君登壇〕
○米沢隆君 私は、民社党・民主連合を代表し、ただいま議題となりました政府提案の税制改革関連六法案についての委員長報告に反対、公明、民社のそれぞれの修正合意にかかわる本会議修正案に賛成の立場から討論を行うものであります。
(略)
○議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。
─────────────
○議長(原健三郎君) これより採決に入ります。
まず、日程第十二に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案につき採決いたします。
渡辺美智雄君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、渡辺美智雄君外一名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま議決されました部分を除く他の部分につき採決いたします。
この部分を委員長報告のとおり修正議決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、さきに議決された部分を除く他の部分は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
次に、日程第十三に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案につき採決いたします。
渡辺美智雄君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、渡辺美智雄君外一名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま議決されました部分を除く他の部分につき採決いたします。
この部分を委員長報告のとおり修正議決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、さきに議決された部分を除く他の部分は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
なお、ただいまの議決の結果、附則中に条項の整理を要するものがありますので、衆議院規則第百二十条により、この整理を議長に一任されたいと思います。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、そのとおり決しました。
次に、日程第十四につき採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
次に、日程第十五に対する渡辺美智雄君外一名提出の修正案につき採決いたします。
渡辺美智雄君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、渡辺美智雄君外一名提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま議決されました部分を除く他の部分につき採決いたします。
この部分を委員長報告のとおり修正議決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、さきに議決された部分を除く他の部分は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
次に、日程第十六及び第十七の両案を一括して採決いたします。
両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
────◇─────
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時二十九分散会
[引用抜粋おわり]
このように、消費税を導入したときですら、起立採決です。
政治部記者と小沢グループは水をかぶって頭を冷やした上で、延長会期末までに予想される内閣不信任案採決まで、「新・国会事典 第2版」(浅野一郎・河野久著)を読んでおいた方がいいですね。のたれ死にしますよ。
情けない!
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