[写真]小沢一郎さん(筆者撮影)。
国会空転は3日目を迎えました。社会保障と税の一体改革関連法案の衆院段階での不正常採決の後、衆参とも本会議・委員会が開かれないまま6月政局が終わり、来月に持ち越しました。国会正常化のめどはまったくつかず、国難のなか、「小沢空転国会」は時間だけむなしく過ぎていきます。この事態は民主党造反議員全員が共有すべき責任で、歴史は必ず彼ら彼女らを罰することになるだろうし、有権者はそのふるまいを罵倒すべきだと、私は考えます。
報道によると、小沢氏は民主党の輿石東幹事長に2012年6月28日(木)、参院民主党の役員室で2回会い、「法案の撤回」と「参院で採決した場合は離党する」と申し入れたそうです。このうち、小沢氏が言及した「法案の撤回」は参院送付済みの関連法案のうち6つの閣法(内閣提出法案)を撤回することは国会法59条但書違反です。
国会法59条は、「内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となった議案を修正し、又は撤回するには、その院の承諾を要する。但し、一の議院で議決した後は、修正し、又は撤回することはできない」とされています。
この規定ができた経緯ですが、帝国議会の議院法第30条は、「政府はすでに提出した議案をいつでも撤回することができる」とされていました。この規定が国会法制定時に問題となり、「国会単独主義の原則」に立って、議題となった後は院の承諾を要することに改めました。さらに昭和30年(1955年)の改正で、但書が加えられ、先議の院で議決した後は、内閣は撤回要求することができないことになっています(参考文献浅野一郎・河野久編著『新・国会事典第2版』)。
「社会保障の安定財源を確保するために税制を抜本改革する消費税法改正法案(180閣法71号)」を内閣は撤回できません。されば、小沢氏は参議院での9月8日までの審議未了廃案を輿石さんに要望したのかもしれませんが、おそらくそこまで分かっていないのでしょう。
政府による閣法の撤回要求は衆参ねじれの第45期衆議院・第21・22期参議院で激増しています。小沢さんは本会議出席時は、よく聞いているように見受けられますから、そこで閣法の撤回がすぐにできるように錯覚したのかもしれませんが、衆議院通過後に参議院で撤回することはできないきまりになっています。
小沢氏の知恵袋といわれる元衆議院事務局委員部長の平野貞夫さんが昨年2月の会派離脱騒動では動いていた節がありますが、今回は動いていないのかもしれません。
「法案の採決の撤回」を求めたという報道もあり、情報が混乱する「小沢混乱状態」になっていますが、これは記者が悪いのではなく、小沢氏が悪い。国会空転で、特権階級である衆参両院の国会議員は休んでいるでしょうが、働きづめの記者はそこまで余裕がありません。
いずれにしろ、小沢さんは筋を通す人だそうです。一度言ったことは守って欲しいです。
野田佳彦総理(民主党代表)は、27日、民主党1期生11人から造反者の厳正な処分を求められました。それは当然のことだし、11人の背中を強く押します。さりとて、その翌日である28日夜、129時間審議を差配した中野寛成・特別委員長を慰労したのは順番が逆でしょう。岡田克也・一体改革担当大臣として、本会議散会の数十分後にお礼に訪れました。安住淳・財務大臣は「先生、あのときは生意気で申し訳ありませんでした」と前々から頭を下げていますが、わずか2ヶ月で鳩山代表・中野幹事長・岡田幹事長代理を引きずり降ろした反乱軍の主謀者である野田さんはそのことを謝ったことがないとされています。だから、あんたはダメなんだ、巡り巡ってこういう目に遭うんだと言いたい。とはいえ、野田さんは現時点での総理・代表です。国難の中の総理です。一体改革を実現し、定数是正と区割り変更をし、特例公債を成立させるためにはギリギリのところまで来ており、総理は一ミリたりともぶれずに解散も辞さずにやらなければなりません。一体改革の衆院可決ですでに歴史に名を残しています。野田さんは住宅ローンの残債はかなり残っていて、貸し駐車場・貸しアパートなどは持っていないので、「河村たかし的な勇気」がないのでしょう。しかし退陣後の講演や回顧録出版という手もありますから、総理は捨て身で進まなければなりません。
我が敵小沢グループの造反者は窒息死させてしまいたいのが本音ですが、未熟さもあるわけで、国会正常化については、民自公3党首は小沢一郎さん一人の議員辞職で矛を収めるという大人の対応をとるべきでしょう。先送りは許されません。
この政局は鬼が勝つ。
新進党を解党した小沢一郎さんの息の根を止めるという私の思いにいささかの揺るぎもありません。
小沢氏、増税法案撤回を要求 輿石氏と29日にも再会談(朝日新聞) - goo ニュース
民主党の小沢一郎元代表は28日、国会内で輿石東幹事長と会談し、参院で7月に審議入りする予定の消費増税関連法案について「国民への背信行為であり、ぜひ撤回してほしい」と述べ、法案撤回を輿石氏に求めた。会談後、記者団に明らかにした。
輿石氏は小沢氏にとどまるよう説得したが、小沢氏は「参院でも法案が強行採決されれば、民主党の枠を超えて、国民に直接訴えていかなければならない」と述べ、参院で法案が採決される場合には離党せざるを得ないとの考えを伝えた。
小沢氏はまた「私との会談を受け、輿石氏が鋭意努力すると聞いている。その結果にもよるが、また明日にでも会談することになるかもしれない」とも述べ、早ければ29日にも輿石氏と再会談する可能性を示した。
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