渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

3党協議の法案修正で相続増税先送り 石原伸晃提案が実現、総裁に近づく

2012年06月15日 09時02分05秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 社会保障と税の一体改革関連7法案の修正協議は、きょう2012年6月15日(金)に期限を迎えます。野田佳彦総理(民主党代表)は一ミリもぶれずに突進するしかありません。要は、有権者や歴史家にハッキリ見える選択肢と材料を提示する。その一点につきるでしょう。何もおそれることはありません。

【相続増税は先送り】

 さて、15日付朝日新聞1面によると、当ブログが指摘し、個人的にも地元選出衆院議員に要望書を出していた「社会保障の安定財源を確保するための税制抜本改革のための消費税法など改正案(180閣法72号)」の第5条「相続税の課税ベースの拡大と税率アップ」に関して、秋の税制改正以降に見送ることで、民主党と自民党が合意する方向になったと伝えています。これは、衆院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(中野寛成委員長)の実質的な初日だった5月21日(月)に、自民党幹事長の石原伸晃さんが指摘したものです。この「石原提案(ノブテル・プロポーザル)」の実現により、石原総裁・シャドウ首相の可能性がぐっと高まりました。もちろん、谷垣禎一総裁は9月に再選しても、党規約からして、2016年9月の総裁選には出られません。ですから、石原さんが谷垣さんを総裁に推せば、2016年9月の時点でも伸晃さんは59歳。今の岡田克也さんと同い年になります。石原さんは様々な選択肢を手に入れたことになります。ぜひがんばってほしい。

 このときの議事録は次の通りです。

[会議録から引用はじめ]

衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 第180回国会 第4号 平成24年5月21日(月曜日)

(前略)

○石原伸晃委員(自民党・無所属クラブ) 

 あと、税法の話もちょっとさせていただきたいんですが、余り時間がないので一方的になるかもしれませんが、今度の改正の中で、かなり乱暴な改正が含まれています。それは、一つは相続税ですね。

 これは東京プロブレムと言われるかもしれませんけれども、基礎控除を一気に六割にしちゃった。普通、そういうものは段階を追って、最終的な目的がどういう税制であるからどうなんだということで仕組んでいくけれども、これは乱暴ですね。だって、相続税というのは、明治三十八年のロシアとの戦争までなかったんですよ、日本で。今、アングロサクソンの国々は、相続税というものをなくしたり、軽くしたりする方向で動いています。

 やはり基礎控除を、五千万、一人一千万というものを三千万、六百万に引き下げたことでどういうことが生ずるかというと、例えば、基礎控除が、一億円の資産を持っていて八千万だった人は、四千八百万、四割引き下げられる。例えば、坪百万、二百万、そういう土地は東京はざらざらあるんですね。そういう人たちが、五十坪、百坪の家を持っていて、相続の平均発生年齢というのは、ちょっと調べてきたら、今東京で六十七歳、もうほとんどの方々が、六三%の人が公的年金、要するに年金収入を中心に生活している人たち。その分、資産に見合った、固定資産に見合ったフローを持っていて、そこで相続税を払えるならいいんですけれども、これは現に、地価高騰時代に起こって、物納がふえて困ったじゃないですか。財務省理財局が不動産屋みたいなことをやっていて、財務省、財務省、財務省というのが、東京じゅうに土地があふれた、そういうことが起こるわけですよ。

 ですから、そういうことは、やはり、どういう最終的な相続税のあり方にするのかというものがあって、そこにいきなり四割、ばんと減らすみたいなことじゃなくて、段階的にやるというのが税の世界の常識である、このこともまた後ほど議論をさせていただきたい。

(略)

○安住淳・財務大臣 相続税については御議論のあるところだと思います。つまり、控除額を五千万から三千万に下げた。それで、相続人、子供も含めて一千万を六百万に下げた。

 ただ、幹事長、現在相続税を納めておられるのは、百人亡くなったとすれば四人なんですね。(石原(伸)委員「地域差がある、千代田区は五十人」と呼ぶ)いや、地域差はあるかもしれません。ただ、富は誰のものか。お父さんは一生懸命稼いで大金持ちになりました、そのお子さんも金持ちであっていいかどうかというのは、私は議論のあるところで、そういう点では、亡くなった時点で、その稼いだ方の富を社会にどういうふうに還元するかというのは、ぜひお時間をいただいて議論させていただければと思っております。(発言する者あり)

○石原(伸)委員 今、やじが出ましたけれども、これは要するに、相続税はやはり半分、取っても五割だねということで大幅な改正をやったんです。その議論をずっと十年間やって、私、そのときの税制改革特別委員会の理事をやっていましたから質問させていただいた。(後略)

[引用おわり] 

【児童福祉法24条および39条「保育に欠ける児童」から「保育が必要な児童」を公明党が提案】

 法案修正の3党協議のテレビニュースでは、「子ども・子育て新システム関連3法案」の事務方の当事者である村木厚子・内閣府共生社会担当政策統括官の姿をよく見ます。入省年次や年齢からして、法案を修正して、衆議院通過、参議院可決・成立したところで、花道という頃合いかもしれません。ただし、民主党政権のシロアリ退治により天下りがしづらくなったのでキャリアは続くかもしれませんが、集大成でしょう。公明新聞はきのう付の紙面で、修正協議に提出したペーパーを全文公開しました。

 このなか、児童福祉法24条、39条を改正し、市町村の保育の最終責任について、現行法の「保育に欠ける児童」から「保育を必要とする児童」=児童とは乳児と幼児のこと=へと拡大するとしました。それだと「おいおい財政負担はどうするんだよ」という市町村関係者の声も聞こえそうですが、「今後の幼児教育・保育の量的・質的拡充を見すえた1兆円超の財源確保が必要であり、その財源確保の全容を明確化する」としています。これについては、委員会で、岡田克也・社会保障と税の一体改革担当大臣は消費税増税では0・7兆円の確保にとどまり、0・3兆円の財源の見通しはないと答弁しています。基本的には、消費税10%では足りない、ということを岡田さんは言っています。この辺で公明党の支持母体である創価学会は低所得者・高齢者も多く、消費税のすえおきを優先して欲しいと意識もあるようです。ただし、パラダイム(日本の国を良くするための基本的考え方)は、公明党と野田・岡田民主党はまったく同じです。もともと新進党という同じ政党員でしたから。「チーム3000(人)」と呼ばれるほど地方議員を多く抱える公明党だけあって、「待機児童が50人未満の市町村は従来通りの保育計画の作成は義務づけない」としています。こういう地域もあるんです。そして、保育計画の作成義務がなければ、その分税金が浮きます。待機児童が一人もいない市町村はいっぱいあります。そして、幼稚園経営者は「定員の半分以下なので、保育もやりたい。預かり保育はやりたいけど、0~2歳児保育は事故があったら困るからどうしようかな」という本音があります。その背中を押すのが、子ども・子育て新システムです。主役は子どもであり、保護者であり、市町村です。実は昨日、公明党員ご夫妻が保育所経営者の方と3人で当家をご訪問いただきました。前日に私が地区後援会役員を務める我が党の現職衆院議員の連合後援会設立総会のもようがNHKはじめテレビニュースで報じられたこともあるのでしょう。あいにく私は外出中でしたが、ぜひ保育所経営者の方とお話ししてみたかったです。また来て欲しいな。

 幼稚園教諭と保育士についても、政府提出法案の「10年間の暫定措置」ではなく、公明党案では「資格の一本化を行うべきだ」としました。そして、「資格の違いに伴う施設間の格差解消」。おそらくこれは保育所の給料を上げよう、という意味合いも含まれていると考えます。「より質の高い幼児教育・保育の提供を実現するため、資格の一本化を行うべきであり、そのために必要な支援と環境整備に向けた検討を進める」としています。昨日ご来訪いただいた保育所経営者の方も、当家で「保育士は100%体力」という趣旨のお話しをしておられたそうです。ぜひ直にお話うかがいたかったな。幼稚園教諭の方は、0~2歳児保育について不安を感じられるでしょうが、それは保育士免許をとりに学校に通うことよりも、仕事の中で教えてもらったり、自分で気付いたりする方が万事いいように感じます。

【年金の最低保障機能強化は「早急に実施する」ことが3党に課せられた使命だ】

 それから公的年金の最低保障機能を強化する法案(180閣法74号)です。公明党の「考え方」では、当ブログが求めてきた受給期間の25年間→10年間への短縮について、「無年金者の早期救済を図るため、早急に実施する」としました。この「早急に実施」がいつか。まさか法案の附則第1条の2015年10月ではないでしょう。ちっとも早急ではありません。2014年4月の消費税8%時以前であることは至極当然です。ぜひ、事務方も、細川律夫さん、長妻昭さんら与党の社会保障分科会実務者に詳細なデータを挙げて、実現可能であることを示してほしいです。

 ところで、繰り返しますが、「最低保障年金創設法案」と「後期高齢者医療保険廃止法案」は提出されていません。提出されていない法案をどうやって修正するのでしょうか。国会議員、新聞記者の猛省を求めます。

 会期末政局では、人間も仕分けられていることを心すべし。  

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