渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

総合こども園法案を廃案し、認定こども園法改正へ 三方よし

2012年06月21日 21時44分57秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革


 政府は、社会保障と税の一体改革関連7法案のうち「総合こども園法案(180閣法76号)」を撤回する方針を固めました。技術的には衆・社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(中野寛成委員長)が会期末まで採決せず、廃案となる見通し。代わりに、議員立法の「認定こども園法改正案」が成立するはこび。

 これに先立ち、民主党、自民党、公明党の衆議院3党は、

 社会保障制度改革推進法案(180衆法24号)

 と

 認定こども園法「就学前の子どもに関する教育、保育などの総合的な提供を推進する法」の改正案(180閣法25号)

 を提出しました。法案の発議者には、長妻昭・社会保障と税の一体改革関連法案修正協議社会保障分科会実務者代理が名を連ねました。

  小宮山洋子内閣府少子化担当大臣は5月10日の本会議で「子供は、社会の希望、未来をつくる力であり、安心して子供を産み育てることのできる社会の実現は、社会全体で取り組まなければならない最重要の課題の一つです。」としたうえで、「子ども・子育て支援法と総合こども園法の施行に伴い、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律を廃止する」と演説しました。

 この、 「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律を廃止する」のを止めて、「改正する」にしたのが、長妻昭さんらが提出した衆法です。

 これは、認定こども園法を小渕報告に基づいて、補助金の統合や保護者への給付(実質的にバウチャー)で現行制度を修正するというのが、長妻さんの考え方です。児童福祉法24条の「市町村の保育の最終責任」も表現は変えながら残りました。「保育に欠ける子」から「保育が必要な子」になりましたので、拡充なのかもしれません。新法と法案の議員修正は委員会で審議されますので、与野党とも質問してほしいところです。

 小渕報告は自民党麻生内閣の小渕優子・内閣府少子化担当大臣がまとめた認定こども園の修正案です。認定こども園を認定するのは市町村長ですが、市町村長は政治家なので、支持者に幼稚園経営者、保育所経営者がいる場合があり、認定こども園に慎重な姿勢をとる首長が多く、これまで移行が遅れてきました。このため、定員割れしている幼稚園が保育に進出できなかったりして、待機児童対策が遅れています。

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 2009年3月と言えば、長妻さんは「年金王子」と呼ばれていたころ。あのときの長妻さんに「現行法を修正する」という考え方があったでしょうか。なかったと思います。それが責任与党政治家としての長妻昭さんの挫折であり、成長だと考えます。

 いわば、自民党政権の法律を父とあおぎ、父から子へ、子から孫へと受け継いでいく。それが国家であり、社会保障と税の一体改革です。

 
 これは日経新聞木曜夕刊の政界面に載った長妻さんとお父さんの写真です。日経新聞の政界面が日曜朝刊に移動したことはみなさんよくご存じのことと拝察します。乱闘国会の警備を経験したこともある警察官だった長妻さんのお父さんは警視庁世田谷警察署長を務めました。今も長妻さんは立派なお父さんと住むために、郷里(選挙区外)である練馬区に住んでいます。

 野田佳彦総理のお父さんは国家公務員で自衛官でした。野田さんも長妻さんと同様に、お父さんの近くに家があります。地方公務員や国家公務員は大変だなと思いますが、優しく立派な子を持てて幸せだと思います。いや、親が子を育てたんだから、立派なのは親の方です。それこそ、いわばもっとも安心・安定の年金です。

 国家公務員ということでは、小宮山洋子さんのお父さんは元東京大学総長の加藤一郎さん。ちなみに小宮山さんは生まれたときも、今も「加藤洋子さん」が本名です。加藤一郎さんは私立の成城学園長を務めて、4年前に亡くなっています。

 地方公務員では、安住淳財務大臣のお父さんは、石巻で中学校・小学校の校長先生や町長さんをやりました。そして、昨年、多くの仲間から半年遅れで、海に帰りました。

 岡田克也副総理・一体改革担当大臣のお父さんは、イオン創業者の岡田卓也さん。岡田卓也さんは四日市商工会議所の新年賀詞交換会で、「私も歳ですから、こうやってみなさんの前にあいさつするのも今年が最後になるかと思います」と切り出すあいさつをここ数年続けているそうです。毎年必ずこのフレーズが入るようですから、ある意味、笑点の歌丸さんのようです。やはり太平洋戦争従軍(鹿島灘に塹壕を掘っていた)後は、ずっと民間人一筋の方は長生きということになるのでしょうか。岡田克也さんは59年の人生で、おばあさんを100歳で亡くしたこと以外には、近親者の臨終に立ちあった経験はないようで、そのため、つっけんどんなところがあるようです。

 で、私のことをよく知っているなと思った方は、そこに重大なイメージギャップがあることをよく理解して下さい。例えば、小渕優子さん、小泉進次郎さん、安倍晋三さん、福田康夫さんらの父は思い浮かぶ人は多いでしょう。それはこの自民党議員たちが二世議員だからです。一方、民主党幹部は二世議員が少ないので、親のことをあまり知らないというだけのことです。そういう政党の構造そのものを理解せずに感情的に投票行動を決めると損をするのは自分自身です。

 3党協議を談合といわず、それが政権交代可能な2つの政党が存在しているかをつねにチェックすべきです。それならば、民主党が下野して、自民党が政権を担う機能はきょう時点で確保されています。だから、衆参ねじれを突破するために、3党協議で一体改革を実現し、延長国会で3党協議で特例公債法と補正予算を成立させることは当然のことです。

 6月5日の一体改革特別委員会で次のようなやりとりがありました。

 篠原孝委員は「立派なおばあちゃんを持っていると、孫も立派になりますね。ちゃんと子育てを手伝っているんですね」として、「私は純農村で生まれました。母親は農家の主婦です。幼稚園とか保育園は行ったことがありません」とし、「季節保育園というのが公民館でできたんです。私が小学校一年になったとき。一つ違いの弟が保育園に行っていました」としました。

 明治23年に新潟県で赤沢鐘美・仲子夫妻が経営する「静修学校」が授業が終わるまで生徒が連れてくるより子どもを預かったことが日本における保育所の始まりです。子どもがより小さい弟妹をつれてくるわけで、当然にして、親は子どもを連れていく余裕すらない貧困者です。同じく明治23年のに筧雄平が鳥取県に農繁期保育所をつくり、一気に全国的に広がりました。これが都会にも広まり、明治27年には東京紡績に企業内託児所ができ、明治33年には鐘淵紡績(カネボウ)などがどんどんつくっていきました。

 一方明治9年に、お茶の水女子大学が附属幼稚園をつくっています。こちらは、園児をつれてくるお手伝いさん用の待合室がありました。

 このように保育所の「親」と幼稚園の「親」もまた大きく違います。当然にして、幼保一体化は民主党政権の方が自民党政権よりも前に進める力があります。それが「(法案の)修正協議」であり、それが一体改革です。

 篠原さんの質問に対して、川端達夫総務大臣は次のように答えました。

 「この前、ある助産師さんとお話をする機会が、ベテランの方なんですが、そうしたときに、子育て、こども園とか、いろいろな部分の制度は非常に大事なことだけれども、お母さんが、一人産んで、二人目を産むときに非常に悩みを抱えているというふうなことが多いというときの心のケアとか、そういうことというのもぜひとももっと力を入れてほしいという、今、要するに子育てノイローゼとかたくさんあります、そういう意味でいったときに、何か建物とか制度とか手当とかいうことと違う切り口の議論が少し平板というか薄くなっているのではないかという話を、この前地元に帰ったときにしていました

 その上で、

 「今、先生が言われた部分も、やはり、心のあり方というか社会のあり方の根幹にかかわる物の考え方だと思うんですね。非常に手前みそな話をいたしますと、私は近江商人の末裔なんですけれども、近江商人というのは、質素倹約とか誠心誠意とかいうことの普通の家訓以外に、三方よしということを言っているのです。売ってよし。もうけなければ商売にならないから、売ってよし。買ってよし。買った人は、いいものをいい値段で手に入れたということで、よかったと。普通それで終わりなんですけれども、そして、世間よし

 いわゆる地域社会というものと自分たちの商売のかかわりというものを考えたということで、そこの部分がどうも最近希薄になっていることは大変私も感じておりますので、先生がおっしゃるようなそういう議論は、いきなり制度がどうかということではない、教育の問題とか社会のあり方とかいうことは、実は非常に力を入れて政治の世界で議論すべき課題だというふうに私は感じております

 三方(さんぽう)よし。

 売ってよし。買ってよし。そして世間よし。

 売り手も買い手もよし。でもそれだけでない。取引だけではない。自分たちの商売がどうやって成立しているのか。世間よし。社会ではない。世間です。言ってみれば、民主党は社会を知っているけど、世間をしらない。自民党は世間を知っているけど、社会を知らない。そのためには、民主党議員も世間を知る。世間よし。世間体の善し悪しということを肌身で感じなければならない。

 そういう意味では与党になった長妻さんは世間を知るようになったのではないでしょうか。

 例えば、父親が蒸発したショックをバネに東京大学に進学し、政治家になって、厚生労働委員をしているような人は、自民党にはいないでしょうが、民主党にはいます。そういう人間が、苦労は知っていても世間知らずの仲間を「拉致」して、一体改革に反対するようしむけてはいけません。東京大学では見逃しても、世間は見逃してくれません。 人生経験のある有権者は、人生経験の少ない国会議員を諭すことも大事なことです。

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