(このエントリーは恒三さん「今でも参院は少数与党で法案1本も通せないから衆院で54人いなくなっても問題ない」から切り離したうえで、一部加筆しました)。
[写真]野田佳彦首相。
政府は平成24年度(2012年度)第1次補正予算案を国会に提出することを決めました。6月15日の3党合意で「交付国債の規定を削除する」としたことから、提出済みの「年金交付国債法案」(180閣法10号)を撤回したり、「平成24年度の特例公債法案」(180閣法2号)の修正協議とセットで、当初予算から歳入を2・6兆円程度増額修正する見通し。歳出を1兆円前後減額補正(仕分け)して財源を捻出したりするものとみられます。円高・デフレ対策を中心とした追加経済対策が盛り込まれる可能性もあります。
現在の財務省政務三役は、安住淳大臣、五十嵐文彦副大臣、三谷光男政務官ら。
ただし、名称はどうであれ、公債発行の増額による年金財源確保は、未来の子どもたちのお小遣いを奪い取って、今の高齢者に年金を払う行為であり、私はすべきでないとの強い考えを持っています。3党が知恵を絞って、2・6兆円の財源を捻出すべきです。
2012年6月24日のNHK日曜討論では、国民新党の中島正純国対委員長が「一体改革関連法案の衆議院通過後は、景気対策として補正予算を組み、心がポジティブになるような成長戦略をすべきだ」と提案しました。この後の、特例公債法案について、自民党の岸田文雄国対委員長は「(平成24年度当初予算の歳出には)1兆数千億円のバラマキがあり、特例公債法案(180閣法2号)には賛成できない。今も民主党の意向で、衆議院財務金融委員会にとめおかれており、(民主党は対応を)提案すべきだ」としました。公明党の漆原良夫国対委員長は「3党合意で交付国債の問題は(削除するということで)解消された。(民主党は)全面的に協力して下さいではなく、対応策を示すべきだ」としました。これについて、NHK島田敏夫解説委員が「減額補正をするということですか」とたずねると、漆原さんは「そうだ」と述べ、民主党の城島光力国対委員長は「検討していきたい」としました。中島さんは「特例公債法案が成立していないことについては野党のみなさんにも反省して欲しい」としたうえで「補正予算を組んで欲しい」と再度言及しました。
6月15日の3党合意では、「交付国債関連の規定は削除する。交付国債に代わる基礎年金国庫負担の財源については、別途、政府が所要の法的措置を講ずる」と明記してあります。これは今国会の当初予算審議の初日である2月9日、自民党の加藤勝信さんによる「加藤指摘」から流れができたものです。
これに先立ち、岡田克也副総理は先週金曜日(2012年6月22日)の定例記者会見で、筆者(宮崎信行)の質問に答え、「内容的にどうなるかは別にして最低限、交付国債というものがなくなればその部分については必要になる」と述べ、今国会(9月8日会期末)に平成24年度第1次補正予算案を提出することを明言しています。
交付国債を外すと、一般会計の歳入で2・6兆円の増額補正が必要になります。イチバン技術的に簡単なのは特例公債(赤字国債)を2・6兆円増額補正してしまうことでしょうが、諸情勢から不可能と思われます。ですから、岸田さんが言う「1兆数千億円のバラマキ」の歳出を減額補正することで財源を捻出し、その他1兆円を埋蔵金(フローの埋蔵金含む)から取り崩すことなどが考えられます。
8月9日の3党合意では、バラマキ4kのうち、高速道路無料化のマニフェストの旗は降ろしたうえで、3kについて政策効果の検証を3党合意。これにより、子ども手当は改正児童手当として高所得者の減額も含めて、すべての子どもに恒久法としてこの6月から支給されることになりました。これに加えて、農業者戸別所得補償と、高校授業料無償化と特定扶養控除の削りすぎに関する3党合意にともなう政策効果の検証により、直近の民意である衆参ねじれによる民主党へのお灸を踏まえて、マニフェストを修正しながら前にすすめて予算措置をしています。
このうち、昨年の3党合意の実務者だった民主党の城島さんは日曜討論で、「農業者戸別所得補償は対象になる」としました。これは当初予算審議の衆院での大詰めである、3月1日、民主党の玉木雄一郎さんによる「玉木プロポーザル(提案)」により、与野党で、農業者戸別所得補償の名称変更も含めて、3党合意に基づく政策効果の検証を行い、予算措置や恒久法制化に関する協議が提起されています。これについては、昨年8月9日の3党合意で、民主党の岡田克也幹事長、自民党の石原伸晃幹事長、公明党の井上義久幹事長は「以上を踏まえて、特例公債を発行可能とするための法案について速やかに成立させることとする。以上、確認する。」と書いています。ここでいう「特例公債を発行可能とするための法案」については、菅直人総理の辞任3条件となった平成23年度特例公債法(177閣法1号)のように、年度が明記されておらず、かつ、日本語ですから「法案」は複数形である可能性があります。ですから、8月9日の3党合意に基づき、平成24年度特例公債法案も平成24年第1次補正予算案にマニフェストの政策効果の検証を落とし込み、減額補正(および一部増額補正によるメリハリのある補正を)するなかで、3党合意すれば、成立させられることになります。(◎平成25年度補正予算でも「3党合意は有効」岡田克也さんが見解示す)
これについて、国民新党の中島国対委員長は自ら言及することで、3党協議から4党協議の体制を模索しているものと思われます。また、日曜討論とは別にみんなの党の山内康一国対委員長は、2012年6月22日の衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会のなかで「後学のために(一体改革法案の)3党協議のやり方について教えてほしい」「次回はぜひみんなの党も入れて欲しい」と述べています。
民主党のしめつけは、クリーンでオープンなしめつけ。しめつけのない政治というのは政治ではありません。その中で、最近はそれがオープンになる機会が増えています。そのため、うんざりしている人も多いようです。政治家はさまざまなしめつけの中で落とし所を探る仕事。政策を一から立案するというのは政治家の仕事ではありません。
岡田副総理は会見で「(交付国債を外した事による基礎年金の国庫負担の財源措置の補正に)プラスアルファするかどうかというのは現時点ではまだ議論しておりません」述べ、今後の追加経済対策に含みを持たせました。円高やデフレの現況と、火曜日の採決における小沢グループ造反状況を判断した後の補正編成着手になります。小沢グループ・鳩山グループに加えて、中間派としての振る舞いに問題があった鹿野道彦氏率いる鹿野グループがらみの予算を減額補正することになるでしょう。
そして、「各党間で協議して決着がつかないと(1次補正予算を国会に)出しても、先が進みません(参議院で少数与党なので30日以内には成立しない)ので、しっかり協議をして結論を出す必要がある」としています。今後は、民自公に加えて、国民新党とみんなの党も加えた5党協議の可能性も出てくるでしょう。いずれにしろ、民主党も、あるいは自民党・公明党も参議院で過半数を持たない以上、衆議院会派の所属議員は責任を持って、「可決ではなく成立」を合い言葉に、法案修正を引き続き進めていく必要があります。それが元々の議会のあるべき姿であり、120年目からのビギンになります。さあいよいよ新しい政治の始まりです。
なお、この記者会見で岡田副総理は「(記者会見の)最初(に)良い質問2つしましたね、宮崎さんさすがに」と発言しました。その場では、とりあえず頷きましたが、なぜ岡田さんがこう言ったのか。この日は日程上、質問時間が限られていることが司会の内閣府課長から言われていたので、そういって後は質問するなという意味なのか。あれやこれやと考えましたが、どうにも分かりません。帰宅後、母にインターネットビデオを見せたら、翌朝、「ここ10年間でイチバンぐっすり眠れた」と言われました。何一つ取り柄がない私だけど、両親が生きている間にこういったやりとりが内閣官房や内閣府のホームページに載ったのは、良かったような気がします。こういうことは、毎年6月に多いような気がします。これからは、ホームページが載った場所、すなわち日本国政府がなくならないように頑張らないといけない。
【追記2012年6月26日朝7時】
首相官邸ホームページに会見録が載りましたので、転載します。
[首相官邸ホームページから引用はじめ]
質疑応答
(記者)
フリーランスの宮崎信行と申します。技術的なことをまず2点お伺いしたいと思います。
まず、一つ目に、認定こども園法改正案が3党によって提出されました。今日の委員会では、まだ閣法である総合こども園法のほうが、法案のほうが残っていますけれども、総合こども園法案はこのまま採決まで持っていくのか、それとも閣議決定の上、衆議院に対して総合こども園法案に関しては撤回を要求されるのでしょうか。
(岡田副総理)
これは各党間で協議をする話です。私が決めることではないと思います。
(記者)
それと、もう一つですけれども、3党合意の中で年金交付国債の削除が合意されています。これは当然当初予算のほうに既に入っております。この国会の中で年金交付国債の削除に関係した所要の措置というのは、この国会中に内閣は提出されるのでしょうか。
(岡田副総理)
我々としては、是非そうしたいというふうに考えております。ただ、これは各党間で協議して、決着がつかないと、出してもその後が、先が進みませんので、しっかり協議をして、結論を出す必要があるというふうに考えております。
(記者)
そうなると、今のお答えは3党によって協議をした上で、第1次補正予算案を今国会に提出する可能性もあるということでよろしいでしょうか。
(岡田副総理)
内容的にどうなるかということは別にして、最低限、交付国債というものがなくなれば、そこの部分については必要になるということであります。
それにプラスアルファするかどうかというのは、現時点ではまだ議論しておりません。
宮崎さん、いい質問しましたね、二つ。
[引用おわり]
【追記おわり】
時計の針は完全に小沢グループを置き去りにして、進んでいます。第46回衆院選、第23回参院選、第47回衆院選を通じて、「決められる国会、決められる政権」を有権者が編成し終えるための材料集めになるのが今週火曜日の採決です。そこから先は時代はあっという間に進んでいくのが国会の習わしですから、日本の明るい兆しは十分にあると感じています。楽しみです。
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