社会保障と税の一体改革関連法案の会期内(6月21日)衆院通過と第180通常国会での成立が確実になったことから、政府首脳・民主党幹部は、採決の混乱による党分裂を静観する構えとなりました。
許しがたい動きも出てきました。日本共産党国会対策委員長の穀田恵二衆院議員のホームページによると、6月14日(木)の午後6時から、衆議院尾崎行雄記念憲政記念館で、「消費税増税に反対し採決阻止に向けた総決起大会」を実施するとしています。驚くべきことには、民主党常任幹事の川内博史衆院議員や、小沢自由党応援団で前回の参院選にも民主党公認で出馬したライフストア社長の清水信次さんが音頭取りだということです。昨年6月の「成案」、12月の「素案」、3月の「大綱」、そして法案の100時間審議を6月中旬に終えようとしているなか、「採決阻止」とは非生産的。川内議員はすでに小沢グループオブザーバーとなるなど、5期15年の議員生活をどぶに捨てる自暴自棄な行動に出ていますが、ついにここまで堕落してしまったか。川内さんは、真人間(まにんげん)に戻って欲しい。
「ガソリン値下げ隊長」に限らず、国交省公用車談合疑惑を衆院国交委のさいちゅうに公正取引委員会に申告した輝いていた野党時代(きっかけは“ガソリン値下げ隊長”だった 公取動く、国交省の公用車談合問題 川内博史さん)(公取、国交省の公用車談合で排除勧告へ 川内博史さんの告発から1年)。与党5期生として人事面で不遇をかこい、自暴自棄になって小沢グループオブザーバーに。そして、なれの果てが、共産党とともに「採決阻止」の集会を開くところまで堕落してしまいました。だいたい、ここまできたら、採決阻止ではなく、条件闘争でしょう。
鹿児島1区では自民党支部長の保岡興治(やすおか・おきはる)元法相(73)がかなりポスターを貼っているようです。昨年都内でお見受けしましたがお元気そうでした。
[写真]自民党鹿児島1区支部長で元法相の保岡興治さん
第1次民主党の遊説局長として、新橋駅前の街頭演説で、「中野寛成先生はだじゃれの名手です。それもご期待ください」と前振りされた寛成さんは司会の川内さんを無視して、いっさいだじゃれなしに演説しました。カンセイさんは当時、党の長老格から、だじゃれを禁止されていました。
1期生のころは、新・民主党の代議士会で、挙手し、「新進党分裂後、新党平和など旧公明党がどうもこちらに来ない。ひょっとして自民党についてしまうのではないか。その点どうなっているか執行部の情報を教えていただきたい」と質問。まさにオープンでクリーンな民主党らしかったのですが、石井一国対委員長は「なかなかこういうマスコミも入った満座の前ではお答えしづらいですね」と困ると笑い声。終了後すばやく公共放送局の番記者がピンさんにかけより、「何なんですかねえ、あの第1次民主党の1期生は」とご機嫌伺い。しかしその記者はその後、民主党が与党になったとき、謙虚さに欠ける行為があり、会社内の立場が悪くなっています。
鹿児島市出身で鹿児島県内に3つ工場をもつ京セラ稲盛和夫創業者も与党になった当初は川内さんに「民主党内で、鳩山総理・代表、小沢幹事長、菅副総理に等距離で話せるのは君なんだから、裏の官房長官をやってくれ」と言われ、実際にその通りに動きました。稲盛さんの言葉に川内さんは純粋に顔を赤らめました。
[画像]稲盛和夫京セラ創業者、2008年民主党大会の民主党ホームページ内中継動画からキャプチャ。
それも含めて、川内さんの無邪気さは僕にとっては、民主党の11年間の苦難の歴史に重なるので、なんでこんなもったいないことするのかなあ。与党になってから政務三役入りを逃し、衆院国土交通委員長更迭、衆院予算委理事更迭、衆院科学技術・イノベーション特別委員長更迭、衆院政治倫理審査会長更迭が続き、衆議院公用車もなくなり、自暴自棄になるのも分かります。でも、共産党国対委員長と「採決阻止集会」だなんて。私は「小沢一郎さんと交わった人間は必ず不幸になる」という人生訓をもっていますが、5期生になってから、小沢グループオブザーバーなどという中途半端な立ち位置になってどうするんでしょう。ちょっと川内さんは終わりだなあという感じがします。雄弁会同級生の安住淳財務相、渡辺周防衛副大臣と差がついただけでなく、政治生命の危機だと感じますし、もう無理なんではないでしょうか。
民主党主流派と反主流派の感情的な対立は第45期衆議院中の融和は不可能な状態になっており、グランドキャニオンより深い溝ができています。政府首脳関係者は「小沢グループの名前や顔を見たり、対応を練るのも嫌だ」「一体改革法案が、成立するかどうかよりも、採決時に大小は別としていずれにしろ不正常なことが起こるのが耐えられない」としています。
小沢グループの説得に関しては、どうせ次の選挙でいなくなるのだからやりたくないというのが主流派の本音。そんななか一人気を吐くのは、国会対策委員会の筆頭副委員長の三日月大造さん。ただ、「三日月さんのように苦労すれば、党内出世する。 それが分かっていても、党内出世よりも、小沢グループと話すのはもっと嫌だ」(主流派)というところまで来ており、もうこの任期中は無理です。
とにかく、21日までの衆院通過と延長会期内の成立を、国家のため、未来のために強行するしかないでしょう。
民主党の総支部ごとの現職を含めた予備選挙の導入も第46期衆議院以降は検討課題になりそうです。
3党合意は15日(金)にととのう見通しで、ポイントは消費税法案第5条の相続増税の秋の税制改正以降への先送りと、年金の最低保障機能強化法案の附則第1条、施行日を2014年4月以前に前倒すことになるでしょう。手堅い答弁で存在感を示している五十嵐文彦財務副大臣も、社会保障の安定財源を確保するための税制抜本改革法案の相続課税ベース拡大については、「以前は6%だったのが、今では4%に下がっている。もうそろそろ(6%に戻しても)いいのではないか」という趣旨の、彼らしくないあやふやな答弁をしていました。ここは、激変緩和措置や地域特例を盛り込んでしっかりと制度設計をし直すべきでしょう。最低保障機能強化法案の附則第1条も、無年金者の年金は、そもそも積み立てた保険料を返す作業から始まるので、単年度の財政負担が大きくなるのならば、政府が借り入れてでも払うべき性質です。これは民主党にとっても、自民党にとっても、公明党にとっても、厚労省にとっても、財務省にとっても、2014年4月以前に前倒した方が得策です。
「総合こども園」に関しては、子ども・子育て新システム法案のミソは「子ども・子育て支援給付」です。すべての保護者に給付をすることで幼保一元化の呼び水にすることですから、認定こども園を市町村が認定しやすいようにすれば、政府民主党からみても、名を捨て実を取ることが可能です。あくまでも保育の現場や最終責任者は市町村であり続けます。被用者年金一元化法案はほとんど原案のまま採決されるでしょう。
また、法案が出ていない「最低保障年金」「後期高齢者医療制度廃止」を撤回するという意味が分かりません。なぜここで混乱が出るかはよく分かります。それは議員も記者も法案を読んでいないから混乱するのです。これは主流派の議員にも言えることで、税制2法案だけ先に採決して、だれが得をするのでしょうか。民主党も自民党も公明党も財務省もだれも得をしません。私は5月22日のエントリーですでに、消費税増税2法案よりも、子ども・子育て新システム3法案の方が修正の焦点になると指摘していました。これも私が法案を読んでいたから分かることです。法案を読まないと、自分の政治生命が危うくなることを自覚すべきです。
大人の事情より、子どもの事情。
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