【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎社会保障と税の一体改革法がついに成立

2012年08月10日 18時56分15秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]参議院委員会での一体改革法審査終了で握手する高橋千秋委員長と野田佳彦首相、小宮山洋子内閣府少子化担当相(兼)厚労相、首相官邸ホームページから。

 ありがとうございます。

 社会保障と税の一体改革関連法が2012年5月8日(火)の衆議院本会議での審議入りから3ヶ月余り経ったきょう、8月10日(金)成立しました!バンザーイ!

 参議院で成立したのは次の8法。

 改正消費税法。

 改正地方税法および地方交付税法。

 公的年金の最低保障機能強化法。

 共済年金を厚生年金に合併させる被用者年金一元化法。

 社会保障制度改革を推進する国民会議設置法。

 子ども・子育て新システム法。

 改正認定こども園法(改正就学前の子どもに関する、教育、保育などの総合的な提供の推進に関する法律)。

 子ども・子育て新システムにともなう関連法律整備法。

 の8法です。

 消費税は、2014年4月1日から8%、2015年10月1日から10%になります。

 本会議では、改正消費税法が賛成188、反対49の圧倒的多数で可決・成立しました。

 過去の消費税創設、増税はすべて、減税とセットになっていましたが、今回の法律は増税のみ。国庫から見て、歳入増(増税)と歳出増(社会保障4分野の年金、医療、介護、子ども・子育て)の一体の改革ということになります。しかし、現在、消費税5%のうち4%は国債償還の利払いで消えている計算で、これが社会の閉塞感になっています。公的年金の最低保障機能強化に加えて、低所得者・低年金者対策も整っています。政府はこれからも「明日の安心対話集会」の精神を引き継いで、国民に説明、説得することが必要です。

 このうち、参議院では附帯決議が3つつきました。参議院らしさを示しました。社会保障制度改革を推進する国民会議設置法について「社会保障の給付について、受益と負担の明確化を図る」としました。これについて、公的年金の最低保障機能強化法で、年金受給資格を25年から10年への短縮が2015年10月施行となっていますが、例えば24年間厚生年金保険料を納めたという人などの「受益と負担」を考えれば、施行を前倒しする法改正も必要でしょう。公的年金の最低保障機能強化法に関しては、さる7月31日(火)の閣議決定で、提出済みの「年金交付国債を年金特例公債につけかえる国民年金法改正案」の内閣修正により、法改正が衆議院に提案されています。被用者年金の一元化については、もともと自公政権時代に提出し、野党・民主党が審議しなかったことへの恨み節が続きましたが、衆参での合計200時間の審議の中で、徐々にわだかまりが解けていくのが感じられました。

 子ども・子育て新システム3法案では、自民党議員が合計19項目の附帯決議をつけました。これについて、委員会可決後、本会議前に定例記者会見した岡田克也一体改革担当大臣は「やや驚きました」と語りました。私は、これだけたくさんの要望を各種団体から受けながら、一致団結して幼保一体化(幼保一元化)法を成立させた自民党を尊敬します。なお、衆議院一体改革関連特別委員会に唯一残っている議案「総合こども園法案」に関しては、「これに替わるものが今の法案ですので、認定こども園の改正案ですので、当然廃案ということになるということでお考えいただいていいと思います」(岡田副総理)として、9月8日の会期末で審議未了廃案にすることを容認しました。これにより、すべての保育園を総合こども園に移行させるのではなく、認定こども園への移行は任意になります。人口過密都市では、施設が整った「幼稚園」で、0~2歳児保育や、延長保育、預かり保育などをしてもらうことで、就学前教育を受けながら保育のサービスを受けられることになり、待機児童解消が期待できます。過疎地では、定員割れの幼稚園が保育に参入することで、より質の良い就学前教育、保育が受けられます。いずれにしろ、子育てがしやすくなると同時に、フレーベル以降の就学前教育がなるべく多くの子どもに提供されることになりました。3党合意にともなう「改正認定こども園法」により、株式会社の保育参入は拒絶されました。また3党は幼稚園教諭と保育士を一本化することで、現在は相対的に給料・勤務時間とも環境が悪い保育士の待遇を改善できるとしていますが、具体策は今後に持ち越しました。保育の量と質の改善に1兆円が必要ですが、0・3兆円は消費税10%でも足りない状態が続きます。
 
 大型連休(ゴールデンウィーク)明けからお盆休み前までという長い長い旅路でした。

 この間、衆議院特別委員会では民主党、自民党、公明党による法案の修正協議が行われ、6月15日(金)に3党合意。新規提出衆法や閣法の衆議院修正は6月22日(金)に審議入りしました。しかし、6月26日(火)には、3党のうち、民主党からおびただしい造反者が出るという不正常採決で、暗雲がたれ込めました。参議院での審議入りは7月11日(水)にずれ込みましたが、順調に審議が進む、いよいよ採決かと思った今週、野田内閣不信任決議案とセットで参議院に野田首相問責決議案が出され、採決できずに会期末を迎えかねない重大局面となりましたが、8月8日(水)夜に3党首合意ができ、8月9日(木)に不信任を大差で否決。ようやくきょう、採決に持ち込めました。

  参議院での80時間審議では、民主党、自民党、公明党の衆議院議員が答弁。年金は長妻昭さんら、税制は野田毅さんら、子ども・子育ては池坊保子さんらが味のある答弁を繰り広げました。締めくくり質疑のラストの質問者への答弁では、民主党の1期生衆院議員で愛媛3区の白石洋一さんが答弁。副大臣席から立ち上がり答弁した白石さんでしたが、答弁後は先輩に促されて大臣席に。テレビ入りの審議では、総理の後ろの官房長官が座り席に促されて着席し、可決を見届けました。

 もちろん、これで終わりではありません。国民会議では、最低保障年金をめぐって長期的な社会保障の全体像をわずか1年間で決めなければ行けません。公明党の提案などによる「年金生活者支援給付金の支給に関する法律案」(180閣法83号)やマイナンバー法案(180閣法31~33号)、年金交付国債を削除する一連の法案(新・特例公債法案、 国民年金法改正案の内閣修正案)、時期は不明ですが年金交付国債を年金特例公債にとりかえる補正予算案。そして、転嫁を確実にする独占禁止法の改正に関する審議、低所得者対策の現金給付の設計、輸出関連会社の益税、日本医師会会員医療機関の損税対策などが必要です。そして、何より大事なのは、景気弾力条項に伴う、来年秋ごろまでのデフレ脱却と経済成長の足取りの確認です。これには、政府だけでなく、日本銀行も協力してほしいですね。

 私自身、まったくバテることなく3ヶ月余りの審議をウォッチし続けました。

 子ども・子育て新システム。子どもの0歳、1歳、2歳・・・はそれぞれの人生で一度きりしかありません。そのためには、これはたとえ交戦状態にあるときでも、国家が最優先に税金を振り向けないといけない分野だと感じました。その思いが3党合意につながったのであり、3党談合ではありません。衆院段階で野党筆頭理事を務めたイブキング(伊吹文明さん)、参院で答弁した野田毅さんを見ていても、信念のある人は強いな。というよりも、およそ政治家はそれがすべてだと感じました。

 その一方、きょうの特別委員会では、冒頭に国民の生活が第一と日本共産党が委員長不信任動議を提出。さらに本会議では平田健二議長不信任決議案が提出し、抵抗したため、採決時刻が遅れました。まして、議長不信任決議案の賛成討論では、あろうことか、国民の生活が第一のはたともこさんが数分間にわたって前日の衆議院本会議での渡辺喜美みんなの党代表の演説を引用する残念が事態がありました。昔は「参議院は衆議院のカーボンコピー」と言われましたが、これでは、「参議院は衆議院のコピペ(コピー&ペースト)」です。せっかく衆参ねじれで参議院らしさを発揮するチャンスなのに、附帯決議をつけた自民党や公明党と違い、抵抗野党は大きく存在感を損ねました。委員会の討論では国民の生活が第一の姫井由美子さんが「私たち、自公を除く、純粋野党は~~」と繰り返し、失笑を浴びました。自民党、公明党、たちあがれ日本は責任野党、それ以外は抵抗野党ということになるでしょう。こういう仕分けができたのは良かったと感じます。

 実務者が集まれば飛びっきりの夏が来る。

 一体改革が実現すれば飛びっきりの夏が来る。

 メダル最多記録まであと4個になったロンドン・オリンピック、節電の夏の順調さ、日本が再び甦ろうとしています。それが法案成立であり、この3ヶ月間の一体改革審議だったと感じます。日本は大きく前進しました。議論から説得へ。説得という面ではなかなか難しいな。そう思いつつも、自分なりに経験を積めたと感じます。

 参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会は、委員長が高橋千秋さん(民主党、三重、来夏改選)、野党側筆頭理事が桜井充さん(民主党、愛知、2016年改選)、次席理事が大久保勉さん(民主党、福岡、2016年改選)、三席理事が吉川沙織さん(民主党、比例、来夏改選)。与党側筆頭理事が衛藤せい一さん(自民党、比例、来夏改選)、次席理事が中村博彦さん(自民党、比例、2016年改選)、三席理事が石井準一さん(自民党、千葉、来夏改選)、公明党理事が荒木清寛さん(比例、2016年改選)らでした。

 決められない政治から決められる政治へ。

 当ブログは大型連休(ゴールデンウィーク)を前に国立国会図書館で祖父のたった一つの自慢だったという一級建築士資格の番号(14423号)が田中角栄さん(16989号)より早いことを発見。国家資格を運営し、この名簿を保管している明治維新以来の「日本国」を守るためには、消費税増税(5%引き上げでおよそ10兆円の国庫増収)が必要だとの強い信念を持ち、そのためには、5月8日(火)の衆議院で審議入りした一体改革法の成立が絶対に必要だと考え、この3ヶ月間一意専心してきました。お盆前に成立して万感の思い。おじいちゃんも同様だと感じます。

 ヤッター!!!

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