【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

公明党友情の退席も野田首相問責 参議院野党は支離滅裂

2012年08月29日 21時32分19秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

【参議院本会議 2012年8月29日(水)】

 定刻から7時間遅れの午後5時にスタート。

 閣法、衆法、参法が入り交じり、17本の法案が可決され、成立したり、衆院に送付したりされました。

 来夏の参院選に出馬せず引退することを発表した公明党の松あきら副代表が、隣席の民主党の小林正夫さんや後ろの席の同党の増子輝彦さんらと談笑し、ねぎらいの言葉を受けたようにみえました。

 この後、午後6時5分に野田佳彦総理がひな壇後ろから入場し、フラッシュを浴びました。

 内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案(180決議14号)が議事日程に追加されました。筆頭発議者は広野允士・国民の生活が第一参議院議員会長。ところが、またしても、同党は登壇しないまま、闇将軍のように会議が進みました。

 ここで、公明党19議員が突如立ち上がり颯爽と退席。私は事前に知らなかったので驚きましたが、野田さんと公明党の友情と受け止めました。同時に立ち上がり、氏名標を立てたまま、本会議場を去る姿は清く正しく美しかったです。

 決議案の趣旨弁明にはみんなの党の小野次郎さんが立ちましたが冒頭から「消費税増税法案は民主党の公約違反である」と演説し、自民党議員が戸惑っているように見えました。山田俊男ネクスト農相や、石井浩郎さんらが少し驚いた顔で後ろの幹部を見ているようにも見えましたが、参院自民党が集団で行動することはなく残念でした。

 反対討論には、民主党から武内則男・予算委理事が登壇。さすがは自由民権運動の発祥の地、高知・土佐の議員だけあって名演説でした。武内さんは事前に決議案をていねいに読んでいたようで、「自民党の諸君は提案理由をお読みになってどう感じられたでしょうか」「自民党が賛成するのは節操がなく、厚顔無恥の暴挙だ」と激しく指摘。そのうえで、ねじれ国会にもかからわず社会保障と税の一体改革を実現した野田首相を褒め、自民党に対して、「決議案の提出は3党合意を反故にするものであり、(3党首合意の)近いうちに信を問うとの言葉は白紙に戻りました」「本院での由緒ある伝統を守るようにお願いする」としました。

 自民党・たちあがれ日本を代表して賛成討論に立った川口順子さんは「参議院は野田総理を今後お迎えすることはない。例え来月民主党が野田総理を次の総裁(?)に選んでも」と謎の演説。そのうえで、「自民党は与党力を持っています。いつでも政権を担当する用意がある」と語りました。

 第21期・第22期参議院での問責政局のしかけ役だと私がにらんでいる、みんなの党の水野賢一幹事長代理も賛成討論に。みんなの党だけ趣旨弁明と討論で2人登壇しました。「消費税増税はけしからん。3党合意はけしからん」と投票行動をともにする自民党を牽制しながら、「野田政権が提案する議案は、今後閣法であれ、国会同意人事であれ応じられない」としました。ところで、水野さんは議運理事ですが、衆院の定数是正法案は衆法ですが、これは今後審議できるのか。これが今国会のポイントになりそうです。

 日本共産党の山下芳生さんは「野田政権は自民党とうり二つの政権になった」と切り出し、場内はまたしても騒然。いったい野田総理が攻撃を受けているのか、参院自民党が攻撃を受けているのか大乱戦国会に。さらに「公約違反と指摘しながら、(民主党に)公約を破らせた自民党と公明党に民主主義を語る資格はない」と長年のライバルで議場にいない公明党を批判しました。

 社民党の山内徳信さんは「沖縄の心を伝える」と違った角度から討論。

 みどりの風の谷岡郁子さんは「民主党内で改革しようと努力したが、万策尽きた」と打ち明けました。

 午後6時50分に討論終局。

 記名投票となりました。この中で、江田五月元議長、石井一さんに続いて、投票した参議院副議長で自民党員(会派離脱)の尾辻秀久さんが投票後に国旗に敬礼しないで降壇してしまったのが残念でした。

 さらに「提案者がいないとはどういうことだ!」という野次がたびたび飛ぶので見てみたら、みんなの党の小野次郎さんが座席にいませんでした。投票はしたようです。

 堂々巡りが終わり、議長が参事に集計を命じました。

 このとき、泰然自若としていた総理が大きく深呼吸をしました。

 投票総数220、賛成129、反対91で、問責決議は可決されてしまいました。総理大臣の問責は、福田康夫さん、麻生太郎さんに続き、3人目。民主党政権では初めて。今後の展開は分かりませんが、突っ走るしかないように思います。また、これで、参議院決算委員会は平成22年度決算の省庁別審査を終えていたにもかかわらず、全閣僚出席の総括質疑が不可能になり、今国会での決算是認は絶望的な状況に。来月には会計検査院から平成23年度決算(案)を受け取ることになり、参議院らしさを発揮することができませんでした。その他にも、失い物が多かったのは、野党であり、参議院であり。そちらの方が失う物が多かったと、私は感じました。

 午後7時5分散会。議場は空虚感。

 ただ、平田健二議長が散会を宣言した後に、民主党議員席から野田さんに「総理頑張れー!!」の声が複数上がりました。参議院民主党はこれまで、輿石東会長が怖いのか、小沢グループが怖いのか、こういった当たり前のような励ましが出てこないことが多かったので、少し安心しました。

 ところで、定数是正法案を参院で採決する前に、問責決議案を採決したのは極めて不思議なことです。どうやらこれは、参議院自民党内に「谷垣禎一総裁は解散に追い込めなかった」ということで、来月の総裁選を迎えたい議員がいるからではないかとの観測が浮上していました。

 また、早朝に鶴保庸介・議院運営委員長が「4会派に対して案文の一本化を指示した」という情報に対して、4会派がどこかわからない参議院議員が多かったという怪現象もありました。これは、自民党・たちあがれ日本、国民の生活が第一、公明党、みんなの党の4会派。これと、与党の民主党の5会派が議院運営委員会に理事や委員で出している会派だからという議会政治の当たり前のようなルールですが、「4会派」というのが分からない人が多かったようです。どうも、参議院自民党の脇雅史・国対委員長が強引すぎる人のようで、秋の役員改選で焦点になるかもしれません。 かさねがさね、参議院の現状は残念ですし、野党大分裂で、第3極どころか、第4極、第5極・・・が誕生しそうです。

 ところで、公明党は午前中の衆議院財務金融委員会で、斉藤鉄夫幹事長代行が質問に立ち、金融商品取引法改正案の採決に加わり、賛成しています。この法案は参院先議ですから、衆議院本会議を開いて、可決・成立させてほしいものです。9月8日の会期末まであきらめずに、しっかりと法律を仕上げる。それが民主党の責任であり、衆議院の責任だと考えます。

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一か八かの参・議運委員長解任動議で徹底抗戦すべきだ 問責審議は全閣僚が傍聴を

2012年08月29日 06時09分32秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]鶴保庸介・参議院議院運営委員長(自民党)

 どういうわけか、新聞では「首相問責へ」「事実上休会のまま閉会へ」「特例公債法案と定数是正法案は廃案」「永田町は党首選、総選挙モード」という論調になっているが、長くて暑い夏の国会で早く休みたいという記者心理が働いているような気がします。そもそも、定数是正法案は衆議院議員(樽床伸二さんら)が発議者で、参院の特別委員長も民主党です。もちろん、議院運営委員長が自民党の鶴保庸介さんで、理事会の過半数、委員会の過半数とも野党が握っていますから委員会付託も本会議上程も難しいわけですが、審議に大臣の出席は不要です。

 国会法で「12月召集」だった昭和時代の「自然休会」を考慮すれば、事実上過去最長となった第180回国会(常会)。最後だからこそ、最後の最後までしっかり、きっちり仕上げなければいけません!

 きょうにも、内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案が参議院本会議で採決されるようですが、これに先立つ議院運営委員会理事会で民主党は徹底抗戦すべし。

 参議院では、議運理事会は本会議の40分前、議運は20分前に開かれます。残り会期も少ないのですから、武闘派路線でやるべきです。定数是正をすることで総理の伝家の宝刀(解散権)を回復した上で、特例公債法は仕上げて、次の臨時国会の召集を11月くらいまで引き延ばせば、民主党も多少は浮上して、次の衆参選挙に望めるでしょう。

 問責決議案は、野党第3会派以降が「増税を理由として」、自民党と公明党がきのう「国家運営能力の欠如を理由として」提出しています。この野党間のまとまりのなさを間隙をつけないでしょうか。

 民主党議員が鶴保委員長解任動議を委員会に提出した場合、鶴保さんが席を退き、仮に自民党理事が委員長代理を務めた場合、民主党から賛成10票が入るでしょう。これに対して、自民党・公明党から反対10票で委員長を守るでしょう。これに、みんなの党の1票、国民の生活が第一の2票が雌雄を決します。しかし、両党の衆議院側の現職議員の地元には、たいてい自民党の現職や支部長がいます。また、みんなの党、国民の生活が第一は増税を問題視しているのに対して、自民党と公明党は増税に賛成しています。この間隙をついて、なんとか棄権や賛成に回ってもらえないでしょうか。とくにみんなの党は11議席あるので、この第21・22期参議院ではたびたび単独で問責決議案を出していますが、一度も本会議に上程されていないのではないでしょうか。これを事実上の衆参両院の国対委員長的存在である水野賢一理事がひとつ存在感を発揮する行動をしてくれるかも知れません。

 さらに本会議では、「野田問責」よりも院の構成に関する議案が先決となりますので、委員長解任決議案を連発し、延会させて、週末まで逃げ切るという手もあるでしょう。たまには参議院議員も長時間拘束されて働いてください。

 これが無理で、問責決議案が上程された場合は、野田内閣の衆議院側の閣僚は、全員が、本会議場向かって左側2階にある衆議院議員傍聴席で傍聴すべきです。この位置はほとんどのテレビ局のテレビで撮れると思います。さらに、民主党は決議案の反対討論に北澤俊美さんを起用すべし。すさまじい野次の中、参議院での問責政局を作り出した張本人である元野党武闘派参院国対委員長の北澤さんが丁重におわびをしながら、参議院のため、日本のために決議(案)を否決することをお願いします。懲罰委員長ですが、本会議での討論登壇は可能だと考えます。仮に可決されても、総理が続投し、参議院で審議できる素地をつくる必要があります。

 政局より政策へ、という人がいますが、会期末前の政局は不可欠だし、世論を反映するための「仕分け」になります。自公とそれ以外の野党の間にくさびを打ち込むチャンスにもなります。攻撃は最大の防御なり。「野田問責」は水際のこと(竹島、尖閣諸島)を国内政治に持ち込むことになりかねません。外患誘致と言っても過言ではありません。

 参議院のイチバン長い一日になります。

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