【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

山尾志桜里さん・阿知波吉信さん、打ち切り動議で時代を前に 陽も陰も

2012年08月31日 23時59分59秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]条約締結の採決のため、質疑の打ち切り動議を提出(朗読)する、衆議院外務委理事の山尾志桜里さん、2012年8月31日、衆議院インターネット審議中継から。

(このエントリーの初投稿日時は2012-09-04 05:59:29)

 会期末前週の最終日となった2012年8月31日、衆院外務委と衆院国交委は参院先議の合計7議案を強行採決しました。会期末週に衆院本会議が開かれれば、与党の賛成多数で可決・成立する運びです。

 強行採決の際は、質疑の打ち切り動議を提出し、質疑の終局を採決。そのうえで議案の採決に進む手順が一般的です。

 当初予算(案)の採決では、与党・自民党の質問のまっただ中に、自民党理事が打ち切り動議を提出し、野党・社会党の議員が委員長席に殺到する乱闘国会もありました。この際は、55年体制のなれ合い国対政治の中で、社会党議員が事前に段取りを知っており、革靴でなく運動靴で着席している姿が撮影されました。そして、理事だった大島理森さんが「委員長!」と言うべきところを、緊張して「議長!」と言ってしまったシーンとあわせて、何度も何度も繰り返し放送され、予算案の中身は放送されず、有権者は日本の貴重な物を失いました。社会党議員が今どこにいるか知りませんが、大島理事は、閣僚や自民党国対委員長を経て、野党・自民党副総裁として大事なポジションを占めています。

 やはり、誰かがやらねばならない、打ち切り動議の提出。それが与党議員の仕事の最たる物です。打ち切り動議提出で時代の扉を開けたのは、外務委ではシオリンこと山尾志桜里さん、国交委ではアッチーこと阿知波吉信さんでした。


[画像]やや緊張した面持ちで打ち切り動議を提出(朗読)する阿知波吉信さん、2012年8月31日、衆議院インターネット審議中継から。

 2009年11月17日付のエントリーにも書いたところですが、2人は初当選直後ながら、衆議院法務委員会理事に起用され、おそらく最初に審議ストップ時の場内協議(委員長と各党理事の協議)に参加しました。政権交代直後なので与野党対決姿勢が強かったのですが、第45期衆議院では、委員会での審議ストップによる場内協議は数少ない場面となっており、政治の新しい時代の扉を開けて、前に進むことができました。

 
[画像]2009年11月17日、衆議院法務委員会。

 このときの法務委員長は現在の滝実法相でしたが、この画像には奇妙奇天烈なことがあります。与党側が1期生の理事しかいません。実は、小沢一郎幹事長(当時)は2期生以上の法務委理事にはどういうわけか小沢グループ側近議員ばかりを充てていました。が、奇妙奇天烈なことに、このときは、小沢グループが自民党理事をつれて委員室から出ていって、「場外協議」になってしまったので、与党側が1期生理事だけになっています。どうやら小沢グループは日の当たる場所が苦手な日陰者のようです。

 山尾さんが民主党1期生の代表格としてよみうりテレビのウェークアップに生出演したり、NHKニュースウォッチ9で地元ルポが放送されたりするたびに、当ブログへの検索によるアクセスが急増し、やはり目立つ存在なんだと感じます。そして、阿知波さんも、社会保障と税の一体改革関連8法案の採決の翌日、首相官邸を11人で訪れ、造反者を厳正処分するよう、野田佳彦総理・代表に申し入れた際には、衆参の先輩議員からかなりやっかむ声が出たようです。しかし、この11人の行動は全くもって正しい。政党政治のあるべき姿を体現した、陽のあたる坂道を登る人たち。


[画像]社会保障と税の一体改革関連8法案の採決の翌日、首相官邸に「厳正処分」を申し入れた岸本周平さんら民主党1期生議員、NHKニュース映像から。

 外務委員会は重要な委員会ですが、衆参ねじれによる与野党(3党)協議体制において、条約締結の承認案件は、与野党修正協議というのはできません。拘束時間は相対的に短い委員会となります。国土交通委員会理事は、与党議員なら垂涎の的。松原仁国土交通副大臣(当時)を招いて600人の満座の前での地元首長らの「公開陳情会」を開いて、同僚議員に呆れられた阿知波さんが結果的に、理事として議事を前に進めたことになります。いずれにしろ、良い方の意味で、民主党らしさを体現した2人です。

 しかし、会期内に法律の成立や条約の承認(批准)を済ませようと、汚れ役を2人がやっていることも事実。絶対的に理想的な政治などありえません。それは政治には与党と野党があるからです。与党として1期目の3度目の通常国会の会期末に汚れ役を買ってでも、時代を前に進めようとしてる2人。与党でも野党か分かりませんが、2期目の扉が大きく開き、国のためさらに飛躍することを今から待ち遠しく感じます。

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岡田副総理、「特例公債法が成立しないリスク判断を」と銀行通じて自民党をけん制 会期末、あきらめない。

2012年08月31日 19時52分06秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 岡田克也副総理は2012年8月31日(金)の定例記者会見で、総務省が9月4日付の県庁向け地方交付税交付金を3分の1に削減(残りの交付の延期)するとの報道について「まだ決まっていない」としたうえで、「(交付税の一部先送りにともなう県庁の運転資金の不足分を)借り入れでまかなうというのは、銀行の判断になるが、銀行は特例公債法が絶対に成立するというリスクを含む判断をしなければならない」と述べました。来週火曜日の交付に関して、伝統的に自民党とのつながりが太い全銀協、地銀協や、知事、県庁幹部を通じて、「財政運営のために必要な特例公債法案」(180閣法2号、衆議院可決済み)を参議院で審議入りさせ、9月8日(土)までに、出席議員の半数以上の賛成で、本会議で可決・成立させるために死力を尽くす方針を示したものと思われます。

 これは、当ブログが「自治体の指定金融機関をはじめとする銀行が国政府や自治体に対して、運転資金を貸し出して利息を得るのは、(国・自治体の信用力が高いので)あまりにも楽な仕事ではないか」の趣旨の質問をしたことへの答え。

 岡田さんは「交付税についてどう扱うかということは、まだ決まっておりません。特に極めて影響が大きく出るということがないように、配慮も必要だというふうに思っています。借入れで賄うというのは、それはある意味では銀行の判断ですね。リスク判断も含めて、それは特例公債法が絶対通るという確信に満ちて対応されるかどうかという問題もあるのだというふうに思います。我々はそれを通す責任がありますけれども、本来、とっくに成立していなければならないものが、いまだにこういう状況になっているということです」と記者会見で答えました。

 岡田副総理は、「自民党が特例公債法案をあたかも人質にとるような態度をとっているのは好ましくない」と語り、政権交代ある政治で毎年度の特例公債の発行を可能とする法案を人質にとることは自民党も民主党もすべきでないとしました。 

 岡田さんは2013年3月31日までに特例公債法が絶対成立するとは限らず銀行にとって貸し出しリスクが存在することを政府の幹部としてはおそらく初めて言及しました。これは、私見ですが、仮に特例公債法が成立しなくても、銀行からの借入金、借換債・財投機関債・政府短期証券の発行でキャッシュフローを回すことが技術的には可能であるという見通しが政府内に存在している可能性があります。

 ただ、自治体向け融資は、新発国債の金利より高いと思われ、有力銀行にとっては、利息収入を増やすビジネスチャンスになる可能性もあります。が、ここで甘えると、日本で働き暮らすすべての人にとて、将来のためになりません。そもそも自治体から銀行支払う利息の原資は税金ですから納税者の生活向上にまったく関係ない歳出が水ぶくれしてしまいます。麻薬です。

 来週中の参議院財政金融委員会での審議入りと採決、本会議上程が必要です。なお、8月28日(火)の衆議院での採決では、昨年と異なり公明党が反対しました。しかし、自民党は欠席しており、議場で判断は示していません。

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