【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

しっかり組んでね 平成25年度予算概算要求くみかえ基準、グリーン、ライフ、農林漁業に「魔法のてこ」

2012年08月17日 21時39分42秒 | 第182特別国会(2012年12月)安倍再登板

[写真]安住淳財務大臣と阿知波吉信・民主党岐阜5区衆議院議員、「あちは吉信」ホームページから。

 第45期衆議院最後の当初予算となる平成25年度予算編成に向けて、野田内閣は2012年8月17日(金)、「平成25年度予算の概算要求組み替え基準について」を閣議決定しました。事業仕分け(行政事業レビュー)による歳出のむだづかい削減と埋蔵金発掘(税外収入)の総仕上げになるとともに、デフレと震災からの脱却の経済対策のスタートになります。

 野田内閣は同日の閣議で、勝栄二郎・財務事務次官が退き、真砂靖(まなご・やすし)財務事務次官、木下康司・財務省主計局長の新体制に切り替えました。参院選惨敗による衆参ねじれと震災・原発事故を乗り越えて、第46回衆院選に向けて最終テストに臨みます。財務省理財局長には古沢満宏・IMF理事が就きました。さらに週明け20日月曜日に史上最多メダルとなったロンドン五輪選手団に野田総理が感謝状を贈ることを決めるなど素晴らしい閣議になりました。パチパチ。

 財務省の平成25年度予算編成・審議に関するホームページもスタートしました。

 「平成25年度概算要求組み替え基準」はまず、高齢化にともない全府省で8400億円自然増する、と認めました。が、生活保護の見直し(削減)をはじめとする合理化・効率化に最大限取り組み、極力圧縮に努めることとする、と書きました。

 そして、歳出の大枠として、(一般会計で)71兆円をがっちりはめました。

 なお、平成24・25年度の基礎年金の国庫負担分に年金特例公債(消費税増税による増収分での返済を約束する赤字国債)を発行することにし、第180通常国会に法案を提出していますが、その法案の成立を見越して、この年金特例公債も「71兆円」に入れ、財政健全化に抜け道無し。

 歳出では、各府省に対して、新規事業をみつもり(概算要求)うえで、既存歳出を削る「ペイ・アズ・ユー・ゴー原則」を引き続き求めます。今回の予算編成では、ペイ・アズ・ユー・ゴーに魔法のてこ(レバレッジ)を渡すという工夫をしました。グリーンは4倍、ライフ・農林漁業は2倍、その他は1・5倍・・・と言っても競馬じゃないよ。既存事業を削って、グリーンの予算を概算要求する場合は、削りしろの4倍の見積りを認めることにします。

  もちろん、概算要求は71兆円を大きく上回り、12月の政府原案決定までには財務省主計局による予算の査定、刈り込みがあります。ここで、横串をさします。「根っこからの府省間横断的な横串的見直し」のために、「縦割り」という批判用語を逆手にとって、「横割り的な重複排除」を目指します。マスコミでは「省庁版事業仕分け」とも報じられた「行政事業レビュー」による概算要求前の段階からの既存事業に対する官僚の意識変革を積み重ねて、「行政事業レビューの結果の反映も活用した見直しで、財源を捻出し、グリーン、ライフ、農林漁業に思い切ったシフトを図る」という思い切ったメリハリをつけます。横串を刺すことで、デフレ・震災を脱した成長戦略の幕をあけたい方針。

 大臣には、「各府省の類似施策の重複排除を徹底するため、概算要求前に府省の垣根を越えた連絡調整の場を設けて、要求内容について調整し、当該政策分野の概算要求方針を取りまとめた上で、概算要求する」ことを求めました。事業仕分けと行政事業レビューの成果については「廃止や抜本的改善を求められた事業そのものを概算要求しないことはもちろん、類似の事業についても、名称を変えて新規に要求することがないようにしなければならない」としました。これは行政刷新会議事務局が目を光らせることになります。

 民主党マニフェストの「4k」については、児童手当(旧・子ども手当)、高校の実質無償化、農業者戸別所得補償(農業直接支払い)の3kについては「所要の額を要求する」。昨年8月9日の3党合意で撤回した「高速道路の無料化」は「平成25年度予算概算要求においても計上しない」としました。

 当ブログとしても、ご存じのように、2010年6月4日から与党主流派ブログとなって、2年2ヶ月余り。行きがかりとはいえ、与党主流派のブログというのは自分でもどうかなと思いつつも、今でも1000人前後、5000ページ前後のアクセスを連日いただいております。しかし、いつまでもあると思うな親と金、いつまでもあると思うな与党(民主党)と主流派(野田・岡田系)。この予算で必ず第46回衆院選を迎えることになります。今まで「8月といえば概算要求の月だな」という政局感はなかったのですが、今のうちにしっかりとそういうことを学んで、次に備えたいと考えています。

 ところで、一つ指摘したいのは平成24年度特別会計の「地方交付税および譲与税特別会計」の中だけでも、33兆円を銀行から借りています。借り入れですから、おそらく長期金利(10年物長期国債)より高い金利で調達しているのではないでしょうか。そうなると、銀行は国に運転資金を貸して、年間1兆円前後の利息を受け取っている計算になるでしょう。国に貸して利息をもらうなど実に楽な仕事です。そして、その原資は民間の預金です。概算要求組み替え基準では「中小企業の活力を最大限活用する」と書いてありますが、銀行が政府に貸したり公債を買えば、その分中小・零細企業に融資が回りません。日本銀行が金融緩和をしても、毛細血管まで届きません。政府は銀行からの直接借り入れをもっと透明化した上で削減する中長期的なインセンティブ作りが必要です。平成25年度概算要求組み替え基準にその記述がないことを指摘しておきます。

 平成25年度予算編成にあたるのは、野田佳彦首相、安住淳財務相、岡田克也副総理・行政刷新相(兼)公務員制度改革相、古川元久経済財政政策担当相、藤村修官房長官、五十嵐文彦、藤田幸久両財務副大臣、三谷光男、吉田泉、若泉征三各財務大臣政務官。石田勝之、中塚一宏両内閣府副大臣ら。民主党では前原誠司政調会長(9月改選)、藤井裕久税調会長らが担当します。また、概算要求分が前倒しして、平成24年度第1次補正予算案として、第181回臨時国会に提出される可能性があります。

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