【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

国会で、地方自治法改正案、地方公務員法改正案の審査進む きらり光る、原口一博ネクスト総務大臣

2014年04月12日 19時25分16秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

 今週の国会では、地方公務員の能力本位任用と人事評価を導入する「地方公務員法および地方独立行政法人法の改正法案」(議案番号第186会国会内閣提出法案第47号)が衆議院で可決し、参議院に送付。

 続いて、「政令市における行政区の格上げ、中核市・特例市の制度統合、基礎自治体同士の連携協約(補完性の原理)を定めた地方自治法改正案」(186閣法75号)が衆議院本会議で代表質問され、来週以降、衆議院総務委員会で審査されます。

 ともに、リアル総務大臣の経験がある民主党6期生、原口一博ネクスト総務大臣が対案を提出したり、代表質問に立ったりして健在をアピールしました。

【2014年4月10日(木)衆議院総務委員会】

 地方公務員法改正案と、昨秋の臨時国会で民主党が提出した対案維新が提出した対案の合計3法案を同時に審査。内閣提出法案のみ採決し、可決し、本会議に上程、可決、参院送付となりました。

 これに先立つ審査では、民主党の黄川田徹・元総務副大臣が質問し、民主党の原口一博ネクスト総務大臣が答弁する場面がありました。

 民主党は、国家公務員・地方公務員への自律的労使関係・労働協約締結権付与を訴え、与野党通じて法案を出し続けています。

 黄川田さんは「私は役場の係長から県会議員となって国会議員になったので、組合活動の経験もないし、(管理職として組合と)対立した経験もない。首長のなかには、組合と話し合うエネルギーを他に使いたい、という人も多いが、時代の流れだし、権利は権利として行使した方がよいのではないかと思います。労使関係があることで、労使が対等に話し合える」と質問しました。

 原口さんは「すでに団結権が実現している消防職員のように、労働者の権利を保持することが行政サービスの向上につながる。労働者の権利として特定の部署における威圧的なパワハラも防げる」と答弁。

 

 これに対して、自民党の新藤義孝総務大臣は「私たちの政権は人事院(と人事委員会・公平委員会)を大事にして、自律的労使関係は認めない考えだ」ときっぱり。

 原口さんは「私は松下政経塾で、松下幸之助さんに師事したが、経営の神様と言われた松下さんは労働組合を大事にした。(黄川田さんも含めて)私たちは、自律的労使関係の確立をずっと訴えているが、自民党から出て、新進党に来ている。労組の応援をもらっていない時期もあった」と語りました。

 連合の笹森清さんらの応援を得られる前から選挙に出ていた政治家として、自治労の支援目当てでなく、行政サービスの向上と公務員の地位向上の両面から公務員の自律的労使関係付与に向けて信念を貫いていく。対案は今後も採決されずに会期末(6月22日)に審議未了廃案になると思われますが、覚悟を示しました。

【2014年4月10日(木)衆議院本会議】

 「地方自治法改正案」(186閣法75号)が議題となり、新藤義孝総務大臣の趣旨説明演説と、それに対する代表質問がありました。

 自民党の橋本岳さんは「昨年、ヨーロッパの地方自治状況を視察する機会があったが、2、3人の自治体もあった」として、日本でも人口減少にあわせた自治体の機能や規模の集約化の必要性を説きました。自民党は自治体首長・議員の支持が厚いので、少し意外な感じがしました。
 
 続いて、民主党の原口一博ネクスト総務大臣が代表質問に立ちました。



 原口さんは、民主党政権でも地域主権(地方分権)を進めたとして、「自民党は民主党の地方一括交付金を批判していたが、唯一残っている沖縄県では高い評価をもらえている」として政権復帰後の地方一括交付金の全国への横展開をアピール。そのうえで、法案に盛り込まれた、政令市の行政区を(条例により)総合区へ格上げし、中核市・特例市の区割りをなくし機能を統合し、広域連携の在り方として(一部事務組合、広域連合に加えて)連携協約をっ結べるようにする、改正法案の内容を聞きました。

 今次国会の地方自治法改正案に関する関連エントリーは次の2本。

2013年9月15日付)

中核市・特例市一本化の地方自治法改正法案、第186通常国会に提出、川端答弁実現へ

2013年12月16日付)

もはや合併ではない 「連携協約」で自治体相互補完 地方自治法改正法案、第186通常国会に提出へ

 なお、今国会には、内閣府側から「第4次地方分権一括法案」(186閣法66号)も出ています。現在衆参とも総務委員長は公明党員であることから日程組みがスムーズに感じられます。衆院では、民主党と維新がそれぞれ対案を出すケースが見られますが、最終的には二大政党による修正も含めて、会期内(2014年6月22日まで)に可決・成立し、秋には施行される見通し。

 ただ、抜本的な税財源の移譲は、原口さんの言う「地方一括交付金」を政府が推進する状況。すなわち民主党への次の政権交代後になりそうです。

[お知らせ1 はじめ]

この無料ブログの姉妹版として、有料版の「今後の政治日程by下町の太陽・宮崎信行」を発行しています。

2009年からのロングランの有料会員制ブログに加えて、
2014年4月、メルマガ版(メールマガジン版)を創刊しました!

購読料は、どちらも、月800円(税込864円)となります。
内容は同じですが、ソーシャルネットワークのスタイルにあわせて、会員制ブログ版、メルマガ版、あるいは両方のご購読お願いします。
自動継続のため、安定した収入源として、こちらの無料ブログを6年以上続けられる原動力となっております。 

今後の政治日程by下町の太陽(会員制ブログ版)

購読方法はシステムを提供している「レジまぐ」(メディア・インデックス社)へお問い合わせください。

[おわり]

[お知らせ2 はじめ]

「国会傍聴取材支援基金」を設けています。交通費、資料代、傍聴券をとってもらっている議員事務所への些少な茶菓代に充てたく存じます。日本唯一の国会傍聴ブログの継続にご協力ください。半年に1回、会計報告もしております。

「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

よろしくお願いします。

[おわり]

[お知らせ3 はじめ]

このブログは次の各ウェブサイトを活用して、エントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

民主党ニュース(民主党ウェブサイト)

goo 政治ニュース

インターネット版官報

[おわり]

tags 宮崎信行
http://p-search.kantei.go.jp/ja_kantei/search.x?q=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BF%A1%E8%A1%8C&ie=UTF-8&page=1&submit.x=-1110&submit.y=-52&submit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2
http://nsearch.cao.go.jp/cao/search.x?q=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BF%A1%E8%A1%8C
http://p-search.kantei.go.jp/ja_all/search.x?q=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E4%BF%A1%E8%A1%8C&ie=UTF-8&page=1&submit.x=0&submit.y=0&submit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2
http://regimag.jp/b/sample/list/?blog=65&category=127
http://regimag.jp/sys/tag/contents_list/?tag_id=1215


農業直接支払いの恒久法制化 来週にも二大政党修正合意の歴史的局面か 林農相「協力おしまない」

2014年04月12日 08時39分37秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

 今週、衆議院農林水産委員会は、農業の直接支払いの継続をめぐる政府提出の「日本型直接支払法案」と民主党提出の「農業者戸別所得補償法案」「ふるさと支払い3法案」を審査。

 参考人質疑、地方公聴会とも、民主党政権の農業者戸別所得補償(政権交代で予算書では「経営所得安定対策」に改称)について
 「中長期的な経営戦略のためにも(民主党政権時の)制度を変えないでほしい」
 「規模集約の機能がビルトインされている」

 として、継続を求める声があがりました。

 木曜日の審議で、林農相は直接支払いの継続を求め、自民党の宮越光寛筆頭理事と民主党の大串博志筆頭理事の修正合意に期待する旨を答弁し、「(法案の修文などで)農水省としても協力を惜しまない」と明言しました。

 あいだに、トニー・アボット豪首相の来日を期した「日豪EPAの基本合意」があり、国政調査をしましたが、ふたたび直接支払の審議に戻っており、来週にかけて「静かな構造改革」が大詰めを迎える可能性が出てきました。

 最大のポイントは米(コメ)の主食用米への直接支払いの恒久法制化になります。

【2014年4月8日(火)衆議院農林水産委員会 参考人質疑】

 大学教授合計3人(専門外含む)と、若手農場経営者(全国組織役員)1人の合計4人が参考人として意見を述べました。

 谷口信和東京農業大学教授は民主党案の全販売農家を対象にしたコメの固定払い(10アール1万5000円)について、「大規模経営ほど有利。構造改革に促進的だ。変えるのはもったいない」と発言。

 このほか、「担い手集中の支援には賛成」、農業者の高齢化により「改革のスピードを上げないと間に合わなくなる」、「主食用米、外食、加工など日本の消費の縮図がそのまま(大規模農家の)経営に入り、バランスよくやるのが大事」といった意見が出ました。

 (参考 2014年4月9日付日本農業新聞2面) 

【2014年4月9日(水)衆議院農林水産委員会 地方公聴会(佐賀県、新潟県)】 

 地方公聴会は、佐賀県と新潟県で開催されました。

 翌日の委員会で派遣委員は次のように報告しました。

 佐賀会場に出向いた坂本哲志委員長(自民党)は「急激な農政転換は好ましくなく、農家の死活問題になる」、「規模拡大の好機だ」「農業者戸別所得補償が分かりやすくていい」といった意見が出たと報告しました。

 新潟会場に出向いた宮越光寛筆頭理事(自民党)は「コメ農家に大きな経営判断の転換を求めないでほしい」「法制化して担い手の将来を見通したうえで農業に専念したい」との声があった、と報告しました。

 佐賀会場にいった大串博志筆頭理事(民主党)は、「行政関係者、農業関係者、あわせて4名の意見陳述人に、現在委員会で議論されている農政改革に関し、政府与党案、野党案について意見を述べてもらい議論を行いましたが、農業の現場を踏まえた議論ができてよかったと思います。戸別所得補償政策を継続して欲しいという意見もしっかりいただきました」とブログで振り返りました。

【2014年4月10日(木)衆議院農林水産委員会】 

 このような声を受けてか、林農相は「農政を大きく変えるのは望ましくなく、昨年の農地中間管理機構(農地バンク)法のように、与野党でご修正いただかればありがたいし、農水省としても協力も惜しまない」と答弁しました。