【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

平成27年度予算が成立 在外公館法案は片山さつき委員長「2分遅刻」で「2週間遅れ」に

2015年04月09日 17時20分03秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[画像]平成27年度予算の採決で投票する北澤俊美(北沢俊美)参議院議員(中央)、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

【平成27年2015年4月9日(木)参議院予算委員会】
【同日 参議院本会議】

 平成27年度予算が成立しました。

 投票総数は238、賛成144、反対91。

 予算委での討論では、民維共社が反対、自公次改が賛成しました。

 予算の一般会計総額は96・3兆円で、当ブログは3か月前の政府原案決定の時に、財政ファイナンスの揶揄も含めて「黒田さんよお2倍でゼロ金利(963420億円)こりゃたまらん予算」と語呂合わせしました。


政府、平成27年度当初予算(案)を決定、96兆3420億円、語呂合わせ「黒田さんよぉ2倍でゼロ金利」


 ことしは、組み替え動議も、修正案も出ませんでした。

 きょうは集中審議4日目がありました。民主党の安井美沙子さん(愛知、来夏改選)が、「給付つき税額控除を政府与党が検討しないのなら、民主党が案をつくります」と語りました。予算審議全体で、一般質疑は合計5日間でした。

 本会議の討論では、自民党の岡田広さんが「総理は経済界に賃金を上げるよう何度も要求されていた」、
 民主党の水岡俊一さんが「防衛費を補正予算に前倒して付け替えた粉飾予算で、国債を買い入れた財政ファイナンスだ」、
 維新の党の清水貴之さんが「15か月予算としてみると3年連続で100兆円を超えており歳出の削減が不十分だ」、
 共産党の倉林明子さんが「リクルート事件さながらの政治とカネの問題が立て続いた。政党助成金を廃止すべきだ」と演説しました。

 この後、「都市農業振興基本法案」(189参法5号)が全会一致で可決し、衆議院に送られました。

続いて、片山さつき外交防衛委員長が小走りで登壇。


[画像]片山さつき外交防衛委員長。

 「在外公館位置および給与法案」(189閣法11号)の審査結果を報告。衆から送られてきたときの「4月1日施行」が与党修正で「公布の日から施行」になりました。

 委員長の修正議決の報告は、採決の結果、投票総数237、賛成237、反対0で可決し、衆議院に回付されました。次の衆議院本会議の冒頭に採決され、可決・成立、公布・施行になると見通せます。片山委員長が理事懇談会に2分遅れてきたことで、施行が2週間遅れる事態となりました。参議院自民党幹部が怒るのは当然だし、自民党員こそ擁護せずに戒めるべき出来事だったと思います。片山委員長は終始早口で報告し、降壇後、自席まで小走りで帰っていきました。

【同日 参議院外交防衛委員会】

 上記の理由もあり、日切れ法案がまだ3本残っている状態。

 「特定防衛調達法案」(189閣法20号)が趣旨説明され、審議入りしました。安保法制国会は特別委員会が設置される見通しですが、参議院常任委員会では野党・民主党の大野元裕・筆頭理事が上出来のスタートを切りました。

以上


 


亡国のガイドラインを命がけで阻止するのは現役世代の使命だ 南シナ海の集団的自衛権は絶対だめだ

2015年04月09日 05時49分21秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[写真]アシュトン・カーター国防長官と安倍首相、首相官邸ウェブサイトから。

 安倍晋三首相(第3次自民党・公明党連立内閣、自民党総裁)とアシュトン・カーター(アシュ・カーター)国防長官はきのう平成27年2015年4月8日(水)、首相官邸で30分強会談しました。

 報道によると、国の存立を全うする切れ目のない安全保障法制の整備法案の全体像を再改定日米防衛協力のための指針(日米ガイドライン)に反映させることを確認しました。

 法案の国会提出前に日米の閣僚が安保法制を質的に変えようとしています。暴挙であり、断じて容認できません。

 さらに、カーター国防長官は、リバランス政策による太平洋への関与と分担にもとづき、中国とベトナムなどの権益がぶつかっている、南シナ海での日本の集団的自衛権も含めた平時からの関与を求めたもよう。しかし、南シナ海では、トンキン湾事件ベトナム戦争によるアメリカの集団的自衛権の行使が泥沼の紛争になった歴史から40年しかたっていません。米国務省・国防総省の担当者はその歴史を知らないものと考えられます。

 この海域では、米海兵隊が、フィリピン、シンガポールに艦船を輪番で常駐させる意向。そうなると、紀元前から対立する中越と、台湾、フィリピンに加えて、マラッカ海峡の、シンガポール、マレーシア、インドネシアがひしめく、きわめて危険な海域になります。

 マラッカ海峡有事は、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ブルネイがそれぞれ友好的で、日本とも4か国とも友好的であるため、衝突は少ないと考えられますが、マラッカ海峡で事故などがあると、日本への石油のシーレーンが封鎖される事態になるため、昨年7月1日の閣議決定の武力行使の3要件(新自衛権行使の3要件)にもとづく「幸福追求の権利」により、財産権の確保のために、海上自衛隊などがシーレーン防衛に有事でも派遣される可能性があります。

さて、話は変わるかもしれませんが、同日8日は日本銀行金融政策決定会合がありました。黒田東彦総裁による、異次元の金融緩和、量的質的金融緩和(QQE)が始まって2年。マネタリーベースは2倍になりましたが、物価上昇率は0%台(消費税増税分を割り引く)に過ぎません。このため、黒田総裁は、国債・政府短期証券・株式投資信託・不動産証券を年80兆円ペースで買い取る政策の維持を、8対1で決定しました。木内審議委員という人がずっとがんばっていて、「45兆円ペースへの量的緩和縮小」を提案しましたが、1対8で否決されました。この方は私の大学学部の先輩にあたり野村證券を経たまだ50歳代の方です。ぜひ木内委員は頑張ってほしい。歴史は必ず木内委員の正しさを証明するでしょう。

 それはさておき、なぜ日銀の話をしたか。手元の計算を紹介します。私は長年、予算書の計上ベースで、経済を考えてきた男です。

 黒田緩和が始まった2013年4月と、直近の数字がある、2014年12月で比べてみます。

 内国債と政府短期証券の残高は936兆円から974兆円に増えています。しかし、この間、異次元の緩和による、円の価値の毀損による円安で、ドル換算では10・0兆ドルから8・1兆ドルに目減りしています。

 これを年率換算にすると、内国債と政府短期証券は、ドルベースで年率10%減りました。ところが、円の価値は12・5%減っています。私は財政ファイナンスに基本的に反対ですが、ドルベースで年10%減ることは、正直うれしい。しかし、日本円(JPN Yen)の価値が減っているということは、政府の借金を減らすため、国民の生活はより苦しくなった。

 なお、日銀による買い入れは、最近は政府短期証券が多いので、内国債と政府短期証券の総額で計算しました。政府の市中銀行からの借入金を除いたのは、市中銀行のバランスシートでは内国債は資産で、貸出金は負債になるので、重複している部分があるので、除きました。

 このようにドルベースでの借金目減りをねらったと思われる、異次元の緩和により、円の価値は下がりました。外国為替準備金(外準)もしかり。その分、日本とアメリカの国力の差が開いたと考えられます。

 ここに、集団的自衛権の限定容認による日米同盟の変質により、昨年4月1日の「防衛装備移転3原則」にもとづき、潜水艦(三菱重工業と川崎造船が製造)の輸出ペースを拡大しようという誘惑が官民双方に働く穴ができました。

 ハイデッガーいわく時間の不可逆性がありますが、時間をさかのぼる方法があります。それは金融です。金融を使えば、未来からお金を持ってくることができます。未来から持ってきた現在の8・1兆ドルの返済で首が回らなくなり、戦後70年間の平和主義を転換せざるを得ない、歴史的転換点を迎えたのが、今月です。

 未来からお金をぶんどった挙句、貧しい若者を自衛官として地球の裏側まで送り込み、武器、弾薬を際限なく提供して糊口をしのぐ日本にしてしまった、特例公債の発行が始まった時にすでに有権者になっていて、かつ戦後世代の60歳代は、この責めをどう考えるのか。今さら考えても無駄です。ガイドラインの粉砕のしかたも分からないし、なぜ円のマネタリーベースを2倍にすると円安になるのか分からない、政治音痴、金融音痴です。

 未来を変えるために、ガイドラインは絶対反対しないといけません。