宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

デフレ特例水準で年間6000億円が年金上乗せされていた 小泉悪政で世代間格差拡大 参決算委

2015年04月13日 19時26分11秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

【平成27年2015年4月13日(月)参議院決算委員会】

 予算委員会が終わり、久しぶりに「月曜午後1時恒例の参議院決算委」。

 衆参ねじれ、大震災、政権再交代を経て、ようやく国会が以前の姿を取り戻してきました。 

 きょうは平成25年度2013年度決算の省庁別審査3日目。

 これに先立ち、平成23年度、24年度決算の参議院から内閣に対する是正勧告について政府が講じた措置の報告が、会計検査院長や財務大臣からありました。 

 与野党とも、厚生労働省に集中しましたが、きょうは非常に充実して示唆に富む内容でした。ぜひ、厚労省職員は議事録を読んでほしい。

 この中で、自民党の礒崎仁彦さんが、デフレ経済下で、高齢者の票をめあてに、小泉純一郎首相ら自民党内閣が、物価スライド(デフレならマイナス)を発動しなかった「デフレ特例水準」について質問しました。山本香苗厚労副大臣(参議院公明党)は、「平成12年から26年度までに、単純計算で、9兆円の過払いになった」としました。

 ですから、物価スライドを発動しなかったことで、年平均で6000億円の国費が、おもに65歳以上の高齢者に払われてきたことになります。

 さて、日曜日の朝日新聞で格差に関する連載が始まり、所得、資産、地域、男女の格差などを取り上げていくということですが、私が長年関心を持っているのは、「世代間格差」です。実は、このブログも2007年ごろには「団塊ジュニア世代の声を代弁する」という趣旨がタイトルの近くに掲げてありました。これは親友から指をかざしながら、反感を呼ぶからやめた方がよいと強く指摘され、やめました。それによってブログのアクセス数は増えたのかもしれません。しかし、それから8年ほど経って、私はもっと強く世代間格差のことを書いてくるべきだったとの思いが強くなっています。

 2000年から2014年までのデフレ特例水準。

  2000年に65歳だった人は、今生きていれば80歳です。この世代は、生涯負担が1073万円(租税が998万円、社会保険料が74万円)に対して生涯受益(年金や健康保険の公費負担分など)は2096万円となりますから、プラス1023万円と推計されます。これに対して、2000年に20歳として働きだした人は、現在35歳ですが、この世代は生涯負担が6552万円(租税3941万円、社会保険料2633万円)に対して生涯受益が3852万円なので、マイナス2700万円です。この計算は「島澤諭 世代会計入門」に載っているものです。もちろん、現在80歳の世代は現役時代にインフレを経験しています。しかし、80歳がプラス1023万円で、35歳がマイナス2700万円となる、世代間格差が私には許せないのです。私はもっと早くからこのことをこのブログに書くべきでした。とても安定している今からでも書いていこうとは思っていますが、手遅れ感は否めません。

 また、私は最近初めて知ったのですが、この比較でも明らかですが、例えば、今の40歳は今の70歳に比べて生涯の租税負担が2~3倍になっていますが、社会保険料は10倍になっています。これは支え手が少ないこともあるでしょうが、厚生年金保険料などが高止まりしていることや、後期高齢者健康保険への支援料を国民・組合健康保険から供出していることが一因と考えられます。 ですから、私が3年前に強行に消費税引き上げを主張したのは、世代間格差の是正からも正しい考えであり、小沢グループは例えば厚生年金保険料の減額を言うべきだったのです。昨日の統一地方選では、複数の旧小沢ガールズ(国民の生活が第一)に県議選に立候補し、最下位で落選、元職は岐阜市で10人立候補して10位で落選しました。当然の報いです。

 さて、決算委に戻ります。礒崎さんはデフレ特例水準による過払い金の総額が9兆円になることに、「かなりの金額だ」としました。そして、2004年年金改正法にもとづく、所得代替率(年金の支給額を現役世代の収入の50%になるよう計算すること)について、塩崎恭久厚労大臣は「50%になっても給付と負担を考えると、マクロ経済スライドを今月初めて発動しても、今後も検討が必要で、これからはこの調整を極力先送りしないことが大事だ」と答弁し、2004年年金改正法のマクロ経済スライドによる「100年安心」がギリギリの状況に来ていることを示唆しました。デフレ特例水準発動とマクロ経済スライド発動見送りで、現在の所得代替率は64%となっており、設計よりも3割高い年金が毎月高齢者に支給されています。

 これから考えると、21世紀のデフレ社会で、年間0・6兆円の国費が高齢者に渡ったことになります。もちろん一般会計ではなく厚生年金特会の積立金から出たお金もあるわけですが、このお金があれば、幼保一元化のうえ幼児教育(就学前教育)を無料にできます。だったら、子どもがもっと生まれて、年金財政はかえって安定したことでしょう。激しい憤りを禁じ得ません。

 3年前、2012年11月7日。この4日前に、野田佳彦総理と藤村修官房長官と「11月14日の党首討論で16日の解散を発表する」ことを示し合わせていた岡田克也副総理(兼)社会保障と税の一体改革担当大臣は、衆議院内閣委員会で、小泉進次郎議員に対して「さっきから言いそびれていたんですけれども、年金の二・五%特例水準の是正の問題、これは、我々として、政府として法案を既に国会に出しております。いろいろな理由があって、これはまだ審議されるに至っていないんですが、これこそ私は急いでやるべき話というふうに思うんですね。ぜひ、小泉議員も同じ意見だと思いますが、党の中でも大いに議論していただいて、この国会で成立させることができるようにお願い申し上げたいというふうに思っております」と語りかけました。これに対して、小泉さんは「最後にそういう特例水準のお願いをされましたが、お願い事をするんだったら、うそつきと言われないように頑張っていただきたい、それを副総理から総理にお伝えをいただきたいと思いますね」と応じました。これは、小泉さんが前期高齢者の窓口負担の【特例】を1割から本則の2割に戻すべきだ、との議論を展開していた最後に、岡田さんがデフレ【特例】水準の解消の法案を衆参ねじれで成立させるように小泉さんから自民党に働きかけてほしいとしたところ、小泉さんが【特例】公債法案を成立させてほしいならば、3党合意のときのように年内に解散しろ、と言っているわけです。つまり小泉さんは特例という言葉を勘違いしているのです。岡田さんは、小泉純一郎総理が票が目当てでデフレ特例水準をやったのだから、地盤を世襲した小泉進次郎さんに言ったわけです。これは別人格だから把握できなくて当たり前だ、と主張する自民党員もいるでしょうが、だったら、小泉進次郎さんは神奈川11区以外から出馬すべきです。

 特例公債法(平成24年法律101号)デフレ特例水準解消法(平成24年法律99号)は、3党合意にもとづく解散宣言の翌日に成立しました。そして、段階的にデフレ特例水準が解消され、あさって15日の支給から1年間で解消することになります。これとは別にマクロ経済スライドも初めて発動されますが、物価上昇による物価スライドにより年金支給額そのものは2月より増えます。

 きょうの決算委員会ではこれとは別に、又市征治委員の質疑で、麻生太郎財務相が「内閣府の試算によると、年3%経済成長モデルとして税収増は、利払い費の増額分に相当する」と答弁しました。今後の経済成長による税収増がそのまま利払い増加分にあたるのだったら、これからいくら経済成長してもそれは国債償還の利払いというまったく付加価値を産まない使い道しかないではないか。だったら、この財政経済状況を打開する道は、まさに「この道しかない」ということになります。これが新進党解党後の21世紀の政治だったのです。これをもたらした有権者は成仏できずに無間地獄に落ちるだろう、と私は客観的に冷静に考えます。

 なお、きょうは金融庁の省庁別審査でもあったので、与党・参議院公明党が国際決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監視委員会による「バーゼル4」について質疑しましたので、そのことを付記しておきます。

 参議院決算委員会は来週も「月曜午後1時から」開かれることになりました。
以上

(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015

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カーター、中国大陸での日米軍事行動を排除せず 再改定ガイドライン、横田基地で同行記者団に語る

2015年04月13日 11時37分55秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[写真]米軍横田基地内で同行記者団に語る、カーター国防長官、2015年4月9日、国防総省ウェブサイトから。

 先週日本を訪問した、アシュトン・カーター(アシュ・カーター)米国防長官が、帰国時に米軍横田基地(東京都)内で、同行記者団に対して、

 「 the update of the guidelines is significant because it opens new possibilities for the United States and Japan to work together in Northeast Asia」

 と語りました。

翻訳すると、「日米防衛協力のための指針いわゆるガイドラインの再改定は意義深い。なぜなら、アメリカと日本が北東アジアで、共同行動する新しい可能性を開くことになるからだ」としています。

国防総省ウェブサイトの、DoDニュース(Department of Degense)が、2015年4月9日の横田基地内での同行記者団との懇談(?)の発言として伝えました。

 この「北東アジア」は国連など国際法の明確な定義はないものの、中国、台湾、韓国・北朝鮮、モンゴルなど。オバマ米大統領の「リバランス政策」の意味では、北東アジアが中国をさすのは明確。基本的には、南シナ海など洋上での活動を示していますが、発言そのものは、75年ぶりの、日本による中国大陸での軍事行動を排除するものではありません。カーター国防長官が、旧大日本帝国陸軍省(旧関東軍含む)による満州事変などの中国侵略の歴史を知らないものと推測できます。

 今月27日に、カーター国防長官、ケリー国務長官、岸田外相、中谷防衛相の「2プラス2」がニューヨークで署名する見通しの、再改定ガイドラインについて、カーターは、

 「Japan is … changing its security posture in important and truly historic ways and we, accordingly, are changing our relationship to evolve with them」

 と話し、


おおむね、「日本は(安倍自民党内閣によって)安全保障に関する姿勢を変化させており、それは重要だし、実に歴史的なことだが、我が国(アメリカ)を含む日米同盟も変化している」とし、安倍内閣の姿勢が日米同盟全体の変化をもたらすと指摘。

そのうえで、

 「we can cooperate in new ways, both regionally and globally」

とし、日米同盟は、これまでのように地域だけでなく、これから新しく、グローバリーに(globally、地球の裏側まで)行動することができる、と断定的に語りました。

 また、カーター国防長官は、ガイドラインとTPPの2つを、安倍内閣の総理大臣らに迫ったことも、記事から明らかになりました。

 第18回統一自治体選挙前半戦で、自民党が21年ぶりに過半数を獲得し、公明党も1敗のみと堅調だったことから、27日のガイドラインの署名は避けられない情勢となってきました。