【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[訃報]山岸章さん、連合初代会長として労働戦線統一、細川護熙内閣の民間最大の立役者

2016年04月15日 21時05分39秒 | その他

連合の初代会長、山岸章氏死去…病名伏せ手術も  

 連合の初代会長を務めた山岸章(やまぎし・あきら)氏が10日、死去した。

 86歳だった。告別式は家族で済ませ、後日、連合などの主催で「お別れの会」を行う予定。

 大阪市出身。海軍の特攻隊要員として敗戦を迎え、戦後は郵便局で働きながら労働運動に参加。1982年7月には全電通(現NTT労組)の委員長に就任した。

 思想の違いや官民の枠を超えた労働組合の大同団結を唱え、89年11月の連合結成に尽力。約800万人(当時)の組合員のトップに立った。就任直後の90年には胃がんの診断を受けたが、発足直後の連合を軌道にのせるため、病名を伏して手術を受け、会長職を務めた。

 ◇

 gooニュース・読売新聞によると、日本の労働戦線統一に成功した連合初代会長で、有権者が政権交代を選択した、歴史的な1993年細川護熙内閣(羽田孜副総理)を裏で支えた最大の歴史的功労者である、山岸章さんが、今週、平成28年2016年4月10日に亡くなっていたそうです。享年86。伝統的に労働運動に関する報道があつい、読売新聞が報じました。

 山岸さんは、公務員である、電電公社の労働組合「全電通」の出身。現在の「情報労連」で、この間、もっとも公務員から民間へ変化した働く仲間の代表でした。

 今で言う電機連合が先鞭をつけた、労働戦線統一に成功し、連合、日本労働組合総連合会会長に就任。


[画像]1989年の連合統一大会と、あいさつする山岸章・初代会長、「友愛会から連合へ 日本労働運動の100年」からスクリーンショット。

 細川内閣では、事実上、民間人の最大の立役者として、7党1会派の馬車をきづきあげ、民主政治の一つの到達点を示しました。

 ただ、山岸会長の後、連合会長には、公務員系労組出身者は一人もついていません。第2代芦田甚之助会長は、UAゼンセン出身で、橋本龍太郎内閣の行政改革会議委員として、「郵政省廃止」を含む法案のとりまとめにあたりました。

 芦田会長の退任で発足した、鷲尾悦也会長(基幹労連)・笹森清事務局長(電力総連)は、たまたま永田町の身勝手な一人の政治家(小沢一郎氏)の行動がきっかけで、誕生した「民主党」の対応を検討。3つの支持政党がある「連合股裂き」の解消策として、連合は政党を支持しない方向性も検討。しかし、鷲尾さん笹森さんは、民主党支援を決め、1998年参院選で民主党が大勝し、橋本内閣は退陣しました。その後、芦田さんは行革会議委員の実績で旭日大綬章を受けました。鷲尾さん、笹森さんは、連合会長として旭日大綬章をもらいました。なので、山岸初代会長のみ大綬章は受けていません。 


[写真]山岸章初代連合会長、友愛労働歴史館展示写真から、筆者(宮崎信行)撮影。 

 私は連合の歴代会長で、山岸さんだけは直にお目にかかったことはないと思います。ただ、そのエピソードで尊敬するのは、党員として最大野党・日本社会党の大会に出席したときのことです。

 公務員系労組中心の社会党では、民間労組との統一をすすめる山岸党員に対して、仲間が背広をビリビリに破るという嫌がらせをしましたが、山岸さんはそのまま毅然と出席したそうです。

 その後、山岸さんは最大野党を離党し、その政党は二大政党から転落しました。

 私は思うのですが、旧民主党が連合の支援を受けられたのは、偶然にも、芦田会長から鷲尾会長(および笹森事務局長)にバトンタッチしていたという奇跡がもたらしたものだと考えます。今、連合の会長は鷲尾さんの後輩、事務局長は芦田さんの後輩になります。組織というものは、しょせんは、すべては人だと感じます。

 重ねますが、山岸さんは旭日大綬章にふさわしい方だと信じます。

 山岸章さんの心よりのご冥福をお祈りいたします。 

このエントリー記事の本文は以上です。


漸進的改正の特区法案審議入り特商法・消契法「先週TPP今週天災」で今国会困難か【4月15日(金)】

2016年04月15日 18時54分16秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

 共同通信の豊田祐基子記者の「共犯の同盟史ー日米密約と自民党政権」(岩波書店)によれば、少しずつ改正して国民の関心を削ぐ、「漸進主義」でやってきたそうです。特区法もまさにそれで、観光立国のために、地区を区切って・・・という条件のもと、白タク解禁の法案が審議入りしました。

 ゆうべ、熊本県で震度7の「平成28年熊本県熊本地方地震」がありました。河野太郎消費者相が「防災相兼国家公安委員長」に専念したようです。特定商取引法と消費者契約法の各々の全面的な改正法案は今週も審議入りせず。先週「TPP」、今週は「天災」で2週以上審議入りが遅れました。さすがに天災で入れないとなると、秋に先送りの公算が強まりそうです。

【平成28年2016年4月15日(金)衆議院地方創生に関する特別委員会】

 まず、一般質疑。いつも通り、石破さんのよもやま話という風情でした。

 この後、きのうの本会議で別々に趣旨説明と代表質問があった2法案が、委員会では同時に趣旨説明されました。

 「第6次地方分権一括法案」(190閣法52号)と「特区法改正案」(190閣法53号)です。

 上述の通り、特区法改正案には白タクが入っています。私は去年10月からこの動きを報じていますので、関連エントリー2本をこの記事の後ろに貼り付けますので、興味がある方は読んでください。

【同日 衆議院法務委員会】

 すでに趣旨説明していたものとあわせて、昨年提出の2法案が同時に議題となりました。

 「入国管理法改正案」(189閣法31号)と「外国人技能実習生機構法案」(189閣法30号)です。

 前者は介護人材の受け入れ、後者は独立行政法人の設置です。

 きょうは与党の質疑のみで散会しました。

【同日 衆議院環境委員会】

 「地球温暖化対策推進法改正案」(190閣法51号)が趣旨説明されました。

【同日 参議院本会議】

 きょねん提出されていた、「日本カンボジア航空協定条約の承認を求める件」(189条約13号)と「日本ラオス航空協定の条約承認を求める件」(189条約14号)が両院承認されました。

 「改正サイバーセキュリティ基本法」(190閣法11号)が成立しました。

 「中小企業の生産性向上法案」(190閣法46号、参先議)が可決し、衆に送付されました。

 きょねん提出された「確定拠出年金法改正案」(189閣法70号)は、施行日に関する技術的な修正案を可決し、衆に回付されました。

 与党ペースとみられた今国会で、「4月1日施行」に間にあわず参で修正し、衆に回付するパターンが相次いでいることについて、最大野党民進党の岡田克也代表は、同日昼の衆院内での記者会見で「意図してそうしているわけではない」と語りました。


[写真]民進党の岡田克也代表、2016年4月15日、衆議院内、筆者・宮崎信行撮影。
 責任政党・民進党は健全な審議をしていることを強調。私もその通りだと思います。与党・衆・国対と内閣官房のコミュニケーションがよくないような気がします。

【同日 衆議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会(TPP特別委)】

 まず、安倍晋三首相が、昨晩の平成28年熊本県熊本地方地震について報告。「必要ならば当委員会を離席したい」。この発言を受けて、特別委員長が理事を呼びました。この後、地震対応を優先するために、委員会は審議せず、散会しました。

【同日 衆議院国土交通委員会】

 谷公一委員長の指導で黙祷。この後、谷委員長は「国土交通省は当分、災害対策に専念していただくこととして、本日は散会します」と語りました。

【同日 衆議院消費者問題に関する特別委員会】

 開かれませんでした。河野太郎消費者相が、災害相と国家公安委員長を兼務しているためと思われます。このため、特商法と消契法の全面的な改正案は2週連続で、趣旨説明されませんでした。これはちょっと今国会は厳しいでしょう。天災ですから、どうにもならない。

【同日 官報】

 「戦傷病者の妻に対する特例給付金法の10年延長法」が平成28年4月15日法律28号として公布され、ただちに施行しました。

 「成年後見制度の利用促進法」が平成28年4月15日法律29号として公布されました。国会の成立日の関係で「成年後見人に直接郵便を送ってもらえる法律」が水曜日公布で、「一般の地域住民(顔役)も、研修を受けたり、助言をもらいながら、成年後見人ができる法律」はきょう公布されました。ここ数日新聞で報じられていたのはきょう公布された法律の方です。水曜日の法律は6か月以内に施行、きょうのは、1年以内に施行。なので、同じ日に公布するわけにはいかなかったのでしょうか。さて、きょうの法律に関しては、地域の顔役で名乗りを上げようかという人がさっそく出ています。あるいは、民進党地方議員も、名乗りを上げたらいいかもしれません。

きょうの国会に関する記事はここまで。以下は、過去の関連エントリーのご紹介です。

[当ブログ内の過去の記事から引用はじめ]

「白タク」解禁の特区・政令・省令を検討し必要なら「特区法などの改正法案」2016年通常国会提出へ

2015年10月21日 03時37分13秒 | 第190回通常国会(2016年1月~)

 現在は「白タク」と呼ばれ、禁じられている、自家用車タクシーを解禁する方向で調整が進むことになりました。

 安倍首相が、平成27年2015年10月20日(火)の第16回国家戦略特別区域諮問会議で、発言しました。翌日付読売新聞などが報じました。これに先立つ、20日付日経も報じていました。

 同日の配布資料の中にこの項目はありませんが、仙北市特区から要望が出ているようで、今後、特区、政令、省令のいずれかで解禁できないか内閣官房が各省庁と調整することになりました。

 首相は「過疎地などでの観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大する」と述べた、と報じられており、全国で解禁するには、道路運送法などの改正が必要になります。

 必要ならば、平成28年2016年1月に召集される通常国会に改正法案を提出するかまえ。

 提出時期は、2016年3月になるとみられます。

[引用おわり]

[当ブログ内の過去の記事から引用はじめ]

特区法改正案、ごく一部地域で、白タク・企業の農地取得・薬剤師遠隔指導を解禁

2016年03月03日 11時22分44秒 | 第190回通常国会(2016年1月~)

 政府の内閣府地方創生室の国家戦略特別区域諮問会議は平成28年2016年3月2日(水)の第20回会議で、とりまとめをしました。

 まもなく、第190回通常国会に提出。

 国家戦略特別区域法(平成25年12月13日法律107号)を改正する形態をとって、 道路運送法(昭和26年法律183号)などに例外を設けます。

 当ブログの昨年10月のエントリー=このエントリーの末尾に全文掲載=で報じて反響が多かった「白タク特区」。「過疎地等での自家用車自動車の活用拡大」として、「主に観光客を、市町村・運送実施予定者・交通事業者の相互の連携により協議する特区」を道路運送法の改正で盛り込みます。

 このほか、

 ・薬剤師が特区内の遠隔診療で、テレビ電話により服薬指導する特区(医薬品医療機器法の特例)

 ・特区内の臨床研究中核病院をめぐる革新的な医療機器の開発迅速化(薬機法の特例) 

 ・法定障害者雇用率の通算が可能となる組合を増やして異業種の中小企業の障害者雇用を推進する特区(障害者雇用促進法の特例)

 ・クールジャパンの海外転換や、インバウンド(日本への外国からの観光客)に対応するため、就労の機会を1年以内をめどに検討する特区(本則の改正)

 ・出入国の手続きを迅速化するために民間事業者と連携する特区(本則の改正)

 ・企業の農地取得を5年間の時限措置として認める特区(農地法改正)

 の合計7つの特区です。

 閣議決定の政策パッケージ「日本再興戦略改定2015」(平成27年6月30日)に盛り込まれた、「アベノミクス第2ステージ」の両輪「未来投資の生産性向上」と「ローカルアベノミクス」の推進を法定化するもの。

 ここまで書いて、私自身が何が何やらちんぷんかんぷんですので、自分で翻訳します。

 観光客向けの自家用車の利用、企業の農地取得、薬剤師のテレビ電話での服薬指導に風穴があいたといえそうです。これらが、区域を広げ、時限措置が恒久措置になっていくかもしれないということです。

 法律が施行しても誰も何も実感しないでしょう。

 このような構図の複雑化により情報を囲い込む。法律は天皇陛下が公布し官報で掲載し、インターネットで情報をとれるのですから、文句は言えない。これが自民党政権の常とう手段です。

 既得権益者の方が情報入手力があるので、第3の矢成長戦略(規制改革)の恩恵を得るのは既得権益者です。

 法案は、衆議院地方創生に関する特別委員会、参議院地方・消費者問題に関する特別委員会に付託されると思われます。

[引用おわり]

このエントリー記事の本文は以上です。
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
(http://miyazakinobuyuki.net/)

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