[画像]衆議院本会議、きょう2018年1月24日、衆議院インターネット審議中継から筆者・宮崎信行がスクリーンショット。
【衆議院本会議 平成30年2018年1月24日(水)】
午後1時1分ごろから午後4時7分ごろまで、衆議院本会議がありました。
昨年は本格的な国会は年前半だけで、年後半は給与法などだけでした。私も半年ぶりに、本格論戦を聞きました。都合により、インターネットで見ていますが、我ながら、3時間、微動だにせず、ずっとメモをとりながらやっていられることに感心します。
政府4演説に対する代表質問の1日目。最大野党党首、与党幹事長、野党第2党党首の順で登場し、動議が出て、無所属の会以降はあすやることになりました。
立憲民主党の枝野幸男代表がトップバッター。枝野さんは「草の根からの民主主義」をかかげて「私にはあなたの力が必要です」としめくくりました。
枝野さんはまず、「待機児童対策をせずに保育の無償化をしたら二重の不公平になる」としながら、総理より先に、厚生労働大臣への質問をスピーチしました。枝野さんは「今次補正予算案と30年度予算案で、保育士の待遇は人事院勧告と比べてどのくらい上がるのか」という、子育て世帯と自治労の双方に配慮した、立民らしい質問から始めました。枝野さんは「保育の無償化の財源を市町村に押し付けるな」とも語りました。生活保護について「生活扶助水準を低い方にあわせる改定はやめるべし」「働き方改革関連法案(の大綱)は評価したいが、残業代ゼロ(労基法14条改正条項)と長時間労働の上限規制(同36条改正条項)は切り離せ」と法案提出前にさばきました。
先に、加藤勝信・厚生労働大臣の答弁を書くと、加藤さんは「保育士の処遇は政権交代後に10%アップしており、人勧による処遇改善は1・1%で、今次補正案で措置している」としました。しかし、介護従事者の待遇は政権交代後に下がったことを認めて、事務職員や年齢による昇給などを加味していない統計だから、堪忍してくれ、という趣旨の答弁をしました。生活保護について、安倍晋三首相は「生活扶助基準は上がる世帯と下がる世帯があり、子育て世帯では上がり、全体として引き下げるものではない」と答弁しました。
時計を巻き返して、枝野さんの質問。改憲をめぐっては「国民投票法改正案を提出する。総理は口を開くごとに対案を出せ、と言ってきた。国民投票法改正案の対案を出して、与党から100時間でも我が党に質問してほしい」と挑発しました。これは、今国会での改憲論議に抵抗する姿勢を示したものです。
これに対して、安倍首相の答弁では、国民投票法改正案については国会に議論を任せるとしました。原子力ゼロについては「責任あるエネルギー合理性とは言えない」と断じました。先の与党税制改正大綱で認められた、森林環境税の新設では「森林経営管理法案を踏まえて導入する」と語り、先週、国会に対して「2月上旬に提出する」と伝えた同法案が、増税(地方税)の骨組みとなる重箱法案だとしました。枝野代表は伝統的なリベラル批判をおそれてか、自衛官の被服の向上という装備増強を求めました。これに対して小野寺五典防衛相は「自衛官の被服と宿舎について言及してくださり、ありがとうございました」と壇上から答弁しました。
2人目は、自民党の二階俊博幹事長。まず、昨日の草津白根山の噴火、熊本地震、東日本大震災、九州北部豪雨に触れて「激甚災害しての迅速化」など災害対策から入りました。東芝、ゼネコンなど企業の不祥事については「現場で何が起こっているのか。世界とたたかうためにはゆるされない」としました。運輸大臣経験者として、1000キロ離れた、小笠原海上保安署を訪れた経験を披露し、海保の増強を求めました。「観光を語らない自治体関係者はいなくなった。今後はインバウンドのみならず、双方向の訪問が必要だ」と語りました。改憲をめぐっては、「自民党は改憲4項目を明示した。各党も出してほしい」としました。また「無駄な中山間地はどこにもない。故郷に責任を持ち、故郷に支えるのが自民党だ」としました。
二階さんへの答弁で、首相は「激甚災害指定の迅速化は昨年11月から運用で行っている」とし、昨秋にあった法改正論とは別に、運用面で改善しており、今後も運用の改善で対応する旨を示唆しました。改憲では自衛隊を違憲だとする論に心を痛めた北海道の自衛官のご家族の話を出して、「自衛隊を合憲だとする改正も有力な選択肢だ」としました。「若い人が日本人が海外旅行に出かける双方向性が必要だ」として、出国税あらため国際観光旅客税の新設であがる増収分を特定財源的に、観光庁の双方向観光の財源にしたいという思惑が透けて見える答弁をしました。
この後、午後2時58分ごろに、立憲民主党最高顧問から、2度目の衆議院副議長となった、赤松広隆さんが、第48期衆議院では初登場。第46期のときと同じく、「えー、議長を交代いたしました」と語りました。これはそれよりも前任者は、この発言はしていませんでした。
野党第2党の玉木雄一郎さんが登壇し、質問。玉木さんは冒頭、「明治維新から150年。総理は内閣を挙げて、お祭り騒ぎをしようとしているが、戊辰戦争から150年でもある」として、「勝てば官軍」の勝者の歴史だけで見ているとたしなめました。玉木さんは「我が党は未来先取り政党だ」と定義づけ、「人口増を前提とする明治レジームを乗り越えていく」と宣言しました。玉木さんは「小泉政権以降の自民党は勝てば官軍の政治で、日本では所得再分配後に格差が広がっている」と問題視。「母子家庭の命綱を削るような、30年度予算案だ」と批判しました。
立民の枝野さんは脱原発に言及しましたが、希望の玉木代表は「石炭火力発電の増設について閣内不一致があるのではないか。安倍内閣はベースロード電源として原発を維持しようとしているが、再生可能エネルギーの促進がより重要だ」という趣旨の質問をしました。現在、希望の党には、電力総連組織内議員はいませんが、発電機を作る電機連合組織内はいます。電力総連は図体の割にはしめつけがきつい産別ですが、希望の党も早く、原発をめぐる論争から脱却する道しるべを示してほしいと、私は望みます。
玉木さんは、情報公開・公文書管理法について「電子データーは30年だけでなく永久保存すべし」と促しました。玉木さんは、改憲について「地方分権で補完性の原則を明記すべきだ」との希望独自の改憲案を提出する意図を示しました。これは初めて出る話だと思います。このあたりの、電力と改憲が、立民と希望の違いです。
玉木さんは演説で「先の特別国会でも示した、大平正芳元総理の楕円の哲学のように、複眼的に俯瞰することでみえるものがある。安倍総理のこの道しかない、と異なる選択肢を排除し、うまくいかないと、道半ば、と連呼する政治姿勢は違う。我が党には多数の論客がそろっており、明治レジームから転換する視座を示していく」としめくくりました。玉木演説はとてもよかったですが、党内ガバナンスがどうなるか。答弁で、安倍首相は「相対的貧困率は下がっている」と、これは正しい統計を示しました。
枝野さんも玉木さんも、金融課税の強化を促しました。ただ、「対案を出せ」と言われても、なぜ、増税の対案を野党が示すのか、私は最近疑問に感じています。ペイアズユーゴー原則ではなく、まず、減税を提案し、その代替財源としての増税を示す。そういう野党があってよいと考えます。
再掲ですが、脱原発の立民と、脱石炭火力の希望。国民投票法議論で改憲を前段階から抵抗する立民と、早くも改憲案を提示した希望。この違いは、総評対同盟かもしれません。ただ、玉木さんも原発に距離を置いたこともいっているし、枝野さんは自衛官の被服に言及。いずれにせよ、イデオロギーの終焉、保守対革新という、政権交代不可能な二項対立はなくなってきたようです。ただし財務省の洗脳はいまだに解けず、なぜか増税の対案を出す。旧民進党の未来は暗いけど、野党の未来は明るい、といったところです。
動議が出て、残余の質問はあすに延期になり、散会しました。
あす午後2時から、いよいよ、無所属の会の岡田克也代表の登場です。
【衆議院議院運営委員会 同日】
本会議のてはずなど。
【参議院 同日】
ありませんでした。
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