宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

参代表質問終わり、衆で予算案審議入り、週明けテレビ入り質問

2018年01月26日 17時28分04秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ

 参議院での代表質問が終わり、衆参とも予算委が、平成29年度補正予算案に加えて、平成30年度予算案の趣旨説明まで聞きました。週明けに衆予算委のテレビ入り補正予算案審議がある予定。召集1週目のはこびは、与党ペースで進みました。

【参議院本会議 平成30年2018年1月26日(金)】

 政府4演説に対する代表質問最終日。

 公明党の山口那津男代表、共産党の小池晃さん、維新の片山虎之助元総務大臣、民進党2人目の藤田幸久元財務副大臣、自民党2人目の松村祥史元経済産業副大臣、社民党の福島瑞穂元消費者相、立憲民主党の福山哲郎元外務副大臣が質問しました。こうしてみると、参議院がら政府や政党の幹部に成り過ぎだし、二大政党は衆と違い、参では2人質問しています。もう少し参議院議員は身の程をわきまえるべきです。

 公明党の山口那津男さんは、2兆円の政策パッケージに高校授業料無償化が入ったと評価し、安倍晋三首相(自民党総裁)は「公明党と手を携えて実現させたい」と話しました。

 ●社会保障費32兆円は無駄ではなく応能負担を徹底すべきだ

 共産党の小池晃さんは、衆と同じく、森友学園問題から入り、佐川国税庁長官の更迭を求めました。その後、法人税の負担上げを求めました。ただ、私は昨日も指摘しましたが、野党がこぞって「増税の対案」を示す対案主義はおかしいのではないかと考えます。

 この後、小池さんは「社会保障の自然増の削減はきっぱり中止し、応能負担とすべきだ」と提案しました。これは我が意を得たりの面があります。昨年末の予算編成でも、日経新聞などが「社会保障費32兆円」との見出しで、このお金が無駄なものだとの前提で論じます。ただ、保育士の給与アップも、介護従事者の処遇改善も32兆円の中に入ります。

 たとえば、きょう、たまたま参加している組織で、日大医学部教授の講演を聞いたとします。医学のみならず、ユーモア、海外、芸術なども取り入れた素晴らしい講演を55歳ぐらいの日大医学部教授がしてくれたとします。講演料は雑所得として、その人の給料は、日大医学部の学費と文科省からの私学補助金と、日大病院の患者の自己負担と、健康保険7割となります。おそらく、文科省よりも、厚労省・健康保険組合ルートのお金の方が多いのではないでしょうか。そういうお金も、年32兆円の中に入っており、経済が循環している以上無駄ではありません。

 おそらく第2次小泉内閣の頃から言われ出した、「社会保障費の自然増の削減」は今世紀の財務省文学の傑作だと考えます。高齢化により、自然増は避けられず、その中の削減幅をとるべきという立論です。最近の、「消費税率10%据え置きによる代替財源」などという財務省文学は、有り得ない。税率を8%に据え置くことの代替など有る訳無く、議論が混乱するのでやめた方がいいと思います。

 小池質問に戻りますが、「社会保障費の自然増の削減」という言葉は私は続けていいと思いますが、応能負担を徹底することで、削減を強調することはないと考えます。経済は循環であり、政府支出は民間収入です。

 小池質問に対する安倍答弁は見事でした。「全世代型の社会保障を推進し、成長と分配の好循環を実現する」などとしました。つまり、保育などの歳出は増やすことを明言しながら、介護などでも従事者に向けた活性化も示しているわけで、社会保障費32兆円は無駄だ、という論陣を張っている人を今後見かけたら、ちょっと財務省の洗脳がひどいな、と感じることになりそうです。

 小池さんは続けて、働き方改革関連法案(未提出)の労働基準法36条の上限時間規制について、「月100時間とすると、月80時間で過労死した人が合法化されてしまう」と訴え、労働者の働き方ではなく、使用者の働かせ方改革だと批判しました。

 維新の片山虎之助さんは、憲法を改正する必要が生じることを、立法事実ならぬ「憲法事実が必要だ」と定義し、「国民投票が行われることで、憲法について初めて国民が主権を行使することになる」としました。

 藤田幸久さんは「国際NGOの経験からすると、宗教同士が戦争を始めるのではなく、政治家が宗教を使って戦争を始めるのだ」との世界観を示し、「安倍内閣は戦後日本の平和主義、民主主義、基本的人権を否定しているようにも見える」との歴史感を示しました。

 自民党2人目の松村祥史・元経産副大臣は、「人口減は国難だ」との首相のフレーズを再強調しました。

 社民党の福島みずほさんは、安倍内閣の国際援助の表明額が多過ぎると批判。

 立民の福山哲郎さんは「補正予算案のスタンドオフミサイルは中期防衛力整備計画に入っているのか」とただし、首相は中期防に沿っていると答弁しました。

 午後4時12分頃に、質疑が終わり散会しました。

【衆議院予算委員会 同日】

 ●補正に加えて、平成30年度当初予算案も審議入り

 参議院本会議散会後すぐに、全閣僚が出席して開かれました。平成29年度補正予算案に加えて、平成30年度当初予算案についても趣旨説明を聞きました。補正審議1日目、当初予算審議1日目となりました。

 麻生太郎財務大臣の趣旨説明では、平成30年度予算案の歳出は、一般歳出が58兆円、地方交付税が15兆円、公債償還歳出が23兆円の合計97兆円。歳入は租税収入が59兆円で、その他税外収入が5兆円、公債発行に伴う現金収入が33兆円で、合計97兆円となっています。また、復興特会は2・3兆円。財政投融資は14兆円。うえの賢一郎財務副大臣の補足説明では、財投機関債の発行は12兆円。麻生大臣は、平成30年度予算案は、「新しい経済政策パッケージ」を予算化し「子ども子育て安心プラン」を前倒した予算だとしました。社会保障関係は薬価の抜本的改革で抑えたとし、教育費は義務教育の定員配置を充実させたとしました。地方交付税は地方の税収増に伴い国庫支出は減らしたと説明。防衛関係費は、北朝鮮の重大かつ差し迫った脅威に対応するため5兆1911億円をつけたとしました。また、うえの副大臣の補足説明では、復興特会から0.3兆円を譲与税及び交付税特会に繰り入れているとしました。また、ODAが0・1兆円強、JICAが0・1兆円強、国際分担金が0・1兆円強あるとしました。農村基盤整備費用は0・6兆円だとしました。

 続いて、週明け月曜日から質疑が始まる、平成29年度第1次補正予算案について趣旨説明がありました。麻生大臣は、「生産性革命、人づくり、防災減災、総合的なTPP大綱」を補正予算化したと説明。歳出の追加は2・7兆円で、他の経費の減額補正とあわせて、1・6兆円プラスして、今年度予算は補正後99兆1095億円になったと語りました。また、財投も「足元の旺盛な設備投資需要にこたえる」との理由から、今頃になって、0・2兆円積み増しました。

 この後、河村建夫委員長が、日銀総裁と独立行政法人の役職員の参考人招致について一任をとりつけました。ペジー社スパコン問題で、NEDOの理事長が呼ばれることは必至でしょう。この後、補正の審議を、週明け29日(月)午前8時55分から開くと発表し、散会しました。

●参議院でも当初予算案の趣旨説明まで終了

【参議院予算委員会 同日】

 参議院予算委員会は前日設定されており、その後から、衆議院予算委員会も設定されたため、きょうは、予定通り、補正と来年度予算案双方の趣旨説明を聞くという、与党ペースのはこびとなりました。

 平成29年度第1次補正予算案の審議1日目、平成30年度当初予算案の審議1日目となりました。

 麻生大臣の趣旨説明。この後、衆側が本予算審議で白熱しているであろう、2月19日(月)と2月20日(火)の1泊2日で、委員派遣を、京都府と大阪府ですることを決定。段取りは金子原二郎委員長に一任されました。

 来週の水曜日頃から、補正を審議。その後、1カ月以上の冬眠期間を経て、3月上旬以降、本予算審議2日目としていきなり基本的質疑から始まることになります。次回は未定のまま、きょうは散会しました。

【参議院国家基本政策委員会 同日】

 鉢呂吉雄委員長が理事を補い、衆院側との合同審査会の手はずを整えました。

【参議院懲罰委員会 同日】

 溝手顕正委員長が、理事に尾辻秀久さんを補い、散会しました。

●追記
 
【衆議院議院運営委員会 きのう、平成30年2018年1月25日(木)】

 きのうの議運では、本会議の段取り以外に、国会同意人事案である、公正取引委員長の続投と、会計検査院検査官の続投について、各々、本人に対する質疑があったそうですので、ここで追記します。公取委員長10年やったら、すごい収入でしょうね。

このエントリーの本文記事は以上です。
(C)2018年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【刑事訴訟法及びオウム新法の施行状況】公安調査庁がオウムの常時監視継続も、麻原死刑囚らに執行の環境整う

2018年01月26日 13時02分26秒 | 法律の執行状況

[写真]公安調査庁、3年前の2015年、筆者・宮崎信行撮影。

 まず、今月、最も政治的だといわれた最高裁判所長官が交代して、その翌週に裁判官が辞任しました。これについて当ブログは「職業裁判官」、つまり、司法修習を終えてから裁判官をしていた人だとしましたが、検察官出身の最高裁判事でした。また、この方は69歳で亡くなりました。亡くなる直前まで、判事をつとめたことになります。

 さて、いわゆるオウム新法こと団体規制法の執行状況として、オウム真理教改め「アレフ」「光の輪」「山田らの集団」が向こう3年間、公安調査庁の常時監視を受けることになりました。これは、前最高裁長官同様に、法務省民事局長や法務大臣官房課長の経験も持つ、裁判官出身者が委員長をつとめる「公安審査委員会」が決定しました。

オウム観察処分、6度目更新=ひかりの輪、新組織も―公安審査委員会


 公安調査庁は1000名以上いて、暇なはずですが、まだホームページには出ていません。

 「山田らの集団」というので、てっきり衆議院本会議場で、公安調査庁の常時監視の趣旨をまちがえてヤジを飛ばす自民党衆議院議員とその周りにいる同期議員かと思いきや、さにあらず。分派した30人ほどのオウム信者だそうです。

 一方、麻原死刑囚の確定後に、出頭した、元信者の女性に無罪、高橋被告に無期懲役が確定しました。麻原らオウム13死刑囚の執行の環境は整いました。

 刑事訴訟法第475条は以下のように定めています。

 「前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。」。

 これにより、早ければ、第196回通常国会中にも、麻原らが死刑になる公算が高まりました。これに前後して、旧オウムらが「教祖奪還作戦」などをするかもしれず、これに関しては公安調査庁の役割は期待されます。

 陰謀論ではありませんが、なぜ最高裁長官が交代したとたんに、裁判が確定したのか分かりませんが、法務省・最高裁事務総局・公安調査庁が国益と刑法体系をしっかり維持するかどうか、注目されます。

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2018年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする