宮崎信行の「新・夕刊フジ」

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

【法案提出】田中愛治早稲田大学総長が主導権を握った私大改革でDX学部新設に100億円概算要求「学位授与機構法改正案」を2023年通常国会に提出へ

2022年08月30日 21時32分12秒 | 第211回通常国会(2023年1月)
[写真]黒髪にそろえて政治学・経済学の勉学に励む日本人の若者たち、東京・新宿の「早稲田大学3号館」で、5年前、宮崎信行撮影。

 文部科学省はきのう付で「令和5年度概算要求」を発表し、あす財務省に提出します。

 この中で、「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた継続的支援策の創設」を新設し、100億円を概算要求することにしました。

 予算関連法案として「独立行政法人大学改革支援・学位授与機構法改正案」を2023年通常国会に提出することになりそうです。

 文科省は「デジタル化の加速度的な進展や脱炭素の世界的な潮流は労働需要の在り方にも根源的な変化をもたらす」とDXとGXをめぐる時代の変化の大枠を提示。そして、現状として、理工系学部は、国際比較で日本では学生に占める割合が35%で、アメリカが38%だなどと指摘。そして、日本国内では国立大学が57%なのに、私立大学では29%だとのデータをひもときました。これを踏まえて、「成長と分配の好循環を実現するために、大学等が予見可能性をもって大胆な組織再編に取り組める安定的な支援が必要だ」との方向を打ち出しました。

 このため、私立大学・公立大学・高等専門学校で、DX・GXへの学部等の組織再編に要する初期投資や当面の運営経費として、100億円の基金を、NIADーQE(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)の中に設けて、お金を支援するとしました。

 これに伴い、上述した「平成15年法律114号」について、第3条の「機構の目的」の中に、上のイメージを書き込んだ改正法案が国会に提出されることになります。

 政策プログラムとして今年5月10日の「教育未来創造会議第1次提言」→6月7日の「骨太の方針2022」と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」で閣議決定されました。当然ながら、野党は全く関与していません。

 筆者は1992年に早稲田大学政治経済学部政治学科に入学し、1997年に卒業しましたが、当時は「青山学院大学教授」の肩書だった田中愛治さんに「世論調査と政治」に関する授業を受けて単位を認定されています。その後、田中さんは学校法人早稲田大学に入社され、中途採用組ながら、理事長兼総長を現在勤めています。きょねん、日本大学の理事長らの不祥事により文部科学省が設置した私大ガバナンス委員会では、構造改革派の野村修也・中央大学法科大学院教授が、外部者による評議員会が私大の土地などを処分できる案を内定。これについて、田中さんが「中央大学前総長である会社法学者」をかついで新委員会をつくり、自民党一強政治のなか、先の第208回通常国会で、唯一閣議決定が大幅に遅れた法案となり、私大連盟の主導権維持に貢献しました。今回の改革も、早稲田大学がシステムエンジニア(SE)の養成課程などの新学部の教員や施設を整備するのが最大のイメージとして、改革が進むと想定されます。永岡桂子文部科学大臣は学習院大学卒業ですが、首相・財務相・野党国対委員長が全員早稲田大学同窓生という構図で2023年通常国会にのぞむのが確実な情勢となっています。もちろん、早稲田以外の私大や公立大学も機構から指定されるでしょう。

 法案審議ですが、永岡大臣の下にある文化庁宗務課は、統一教会の名称変更を認めた経緯という現下最大の政局テーマをかかえていますので、衆参の文科委員会では、これをからめた一般質疑・法案審査から始まることになります。

 この法案の年度内成立は極めて有力ですが、その審議までに永岡大臣が大きな暗礁に乗り上げることもありうる展開が予想されます。正直、何があるか誰も分からないと考えられます。

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Ⓒ2022年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki、宮崎機械株式会社。
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