「SAPPOROヒグマフォーラム」のパネルディスカッションは札幌地域のヒグマの出没状況やそれに対する対策などについて多くの提言があった。ヒグマの研究者から話を聴く機会などそう多くはないので、興味深く話を聴いた。
2月1日(月)午後、札幌エルプラザで開催された「SAPPOROヒグマフォーラム」は、知床財団の増田氏による基調講演に続いて、パネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションの登壇者は、ヒグマのことについて長く研究されている道立総合研究機構の間野勉氏、ヒグマウォッチングを続けるNPO環境保全事務所の早稲田宏一氏、行政の立場から札幌市みどりの活用担当課長の西紀雄氏、基調講演をされた増田泰氏、そしてコーディネーターも務められたヒグマ研究の第一人者でもある酪農大の佐藤喜和氏の5人であった。
※ コーディネーターを務めた佐藤喜和氏(左)と札幌市の西紀雄氏です。
まず、早稲田氏が近年の札幌近郊におけるヒグマの年毎の出没状況についての発表があった。それによると、H23年度に大量の出没が記録されて以来、それ以降は減少傾向にあるとした。最近の特徴としては簾舞・滝野地区での出没が記録されているとした。
出没の状況をプロットしたものを見ると、H23には市街地にかなり近い藻岩山周辺での出没が記録されている。それが近年減少していた。
この原因と考えられるのは、藻岩や小別沢に出没し、農作物などを荒らしていた母子グマが捕獲されたことがその原因と考えられると話された。
今後の変遷について間野氏は、このまま減少傾向とはならないだろう、と警告した。捕殺された母子グマは札幌近郊における生息数が増えたことによって生息区域が拡大した結果である。したがって依然個体数としては増加傾向にあるという。その中にあって雌(母)グマの行動半径は狭く、札幌から遠くへの移動は考えられないという。(雄グマの行動半径はかなり広範囲らしい)
西氏は行政の立場から、出没時の対応、出没の抑制策、知識の普及啓発が課題であるとした。また、クマの出没が相次ぎ、農業被害を出した小別沢地区には電気柵も導入したが、そうすると電気柵を施していない周辺の農地が荒らされるといういたちごっこの状況も生まれていて、その対処法も課題となっているとした。
※ 写真左から、増田泰氏、真野勉氏、早稲田宏一氏の3人です。
ヒグマを人から守るという対策と同時に現在では生物多様性の保全という問題との間で両ばさみとなっている状況もあるが、この課題に対して多様な価値観が存在する札幌にあって合意を形成することにチャレンジしなければならないとした。しかし、増田氏からは小さな自治体であっても合意形成には難しい面があるとした。斜里町にあっても直接被害を受ける人と、そうでない人。観光面への配慮等、難しい面があるとした。
まだまだ議論はたくさんあったのだが、議論を聴いていて、まだまだ課題は多いことを実感した。
議論には出てこなかったが、どこかで聴いた話として、この問題の一つは、私たちがクマの生息地に近づいて行っている(登山や山菜狩りで)という認識を持つ必要があると言われたことを思い出した。そうは云っても、登山愛好者の行動を制限したり、山菜狩りを禁止したりすることは事実上無理なことである。
私たちは、クマの生態を知り、クマの行動を把握することによって、クマにできるだけ近づかないという、当たり前の結論しか出てきそうにない、と云えようか?¿
2月1日(月)午後、札幌エルプラザで開催された「SAPPOROヒグマフォーラム」は、知床財団の増田氏による基調講演に続いて、パネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションの登壇者は、ヒグマのことについて長く研究されている道立総合研究機構の間野勉氏、ヒグマウォッチングを続けるNPO環境保全事務所の早稲田宏一氏、行政の立場から札幌市みどりの活用担当課長の西紀雄氏、基調講演をされた増田泰氏、そしてコーディネーターも務められたヒグマ研究の第一人者でもある酪農大の佐藤喜和氏の5人であった。
※ コーディネーターを務めた佐藤喜和氏(左)と札幌市の西紀雄氏です。
まず、早稲田氏が近年の札幌近郊におけるヒグマの年毎の出没状況についての発表があった。それによると、H23年度に大量の出没が記録されて以来、それ以降は減少傾向にあるとした。最近の特徴としては簾舞・滝野地区での出没が記録されているとした。
出没の状況をプロットしたものを見ると、H23には市街地にかなり近い藻岩山周辺での出没が記録されている。それが近年減少していた。
この原因と考えられるのは、藻岩や小別沢に出没し、農作物などを荒らしていた母子グマが捕獲されたことがその原因と考えられると話された。
今後の変遷について間野氏は、このまま減少傾向とはならないだろう、と警告した。捕殺された母子グマは札幌近郊における生息数が増えたことによって生息区域が拡大した結果である。したがって依然個体数としては増加傾向にあるという。その中にあって雌(母)グマの行動半径は狭く、札幌から遠くへの移動は考えられないという。(雄グマの行動半径はかなり広範囲らしい)
西氏は行政の立場から、出没時の対応、出没の抑制策、知識の普及啓発が課題であるとした。また、クマの出没が相次ぎ、農業被害を出した小別沢地区には電気柵も導入したが、そうすると電気柵を施していない周辺の農地が荒らされるといういたちごっこの状況も生まれていて、その対処法も課題となっているとした。
※ 写真左から、増田泰氏、真野勉氏、早稲田宏一氏の3人です。
ヒグマを人から守るという対策と同時に現在では生物多様性の保全という問題との間で両ばさみとなっている状況もあるが、この課題に対して多様な価値観が存在する札幌にあって合意を形成することにチャレンジしなければならないとした。しかし、増田氏からは小さな自治体であっても合意形成には難しい面があるとした。斜里町にあっても直接被害を受ける人と、そうでない人。観光面への配慮等、難しい面があるとした。
まだまだ議論はたくさんあったのだが、議論を聴いていて、まだまだ課題は多いことを実感した。
議論には出てこなかったが、どこかで聴いた話として、この問題の一つは、私たちがクマの生息地に近づいて行っている(登山や山菜狩りで)という認識を持つ必要があると言われたことを思い出した。そうは云っても、登山愛好者の行動を制限したり、山菜狩りを禁止したりすることは事実上無理なことである。
私たちは、クマの生態を知り、クマの行動を把握することによって、クマにできるだけ近づかないという、当たり前の結論しか出てきそうにない、と云えようか?¿