その日、尾車氏と最後に向かったのは、スズキのお店。
最近20年ぶりにフルモデルチェンジしたという、「ジムニー」に触れるためである。
4代目となったこのクルマ。
そのフロントフェイスは、どことなく、初代に回帰したようなイメージ。
軽自動車としては珍しい、5穴のホイール。
175/80R16という、大径でハイトの高いタイヤ。
標準装着のBSデューラーが、このクルマの資質を物語る。
試乗させていただいたグレードは、最上級の「XC」(4AT:税込車両本体価格1,841,400円)である。
オレンジ照明の2連メーターに、スイッチ付の本革巻ステアリング。
質実剛健かつ、ジェントルな作業場といったイメージを、私は、勝手に、持った。
手探り操作性に優れた「ダイヤル式の空調」にも、このクルマの骨太な信念が、見え隠れする。
今回試乗させていただいたのはAT車だったが、全グレードに5MTをラインナップしているのが、素晴らしい。
やはり、このクルマには根強いMTファンが存在し、スズキはそこに応えてくれたのでありましょう。
パートタイム4WD&トランスファーは、本物の悪路というか、道なき道を走るための、重要なツール。
スクエアなボディなので、車両感覚は掴みやすい。
加えて、大きな窓面積で、視界も非常に良好。
ひょっとしたら、このジムニーは、「日本車の中で最も視界のいいクルマ」かもしれない。
走らせても、インフォメーションがダイレクトというか、なにか「人車一体感」までも感じさせる。
昔(昭和の終わりか平成の初め頃)のジムニーのような、「無骨でヒョコヒョコした印象」は、皆無。
市街地をほぼ法定速度で走る分には、じつにスポーティーで、愉しい。
5MTだったら、きっと、もっと面白いんだろうなぁ!
ジムニーでしか、走れない場所がある。
ジムニーが無ければ、生活できない人がいる。
誕生以来、コンセプト不変の、このクルマ。
スズキが産んだ、まごうかたなき、日本の傑作車だ。偉い。