『人類が消えた世界』
アラン・ワイズマン、2008、『人類が消えた世界』、早川書房
出張前に読み始めたが第4部を読み残して出かけてしまい、読みさしになっていた。帰国して、早速残りを読んだ。
最近、温暖化関連のニュースや広告が目に止まらない日がないといっても言い過ぎではあるまい。例えば、自動車会社は石油資源の枯渇や温暖化に対応するために、ハイブリッド車や電気自動車などのポスト石油への技術開発に資本投下をつづけている。また、産業革命期以降のいわゆる温暖化により、珊瑚礁に立地する国々が海水面上昇のために存亡の危機にたたされている、あるいは、熱帯生物が媒介する伝染病が温暖化の進行とともに、流行域を北上させているとか、さらには、気候変動が著しかっくなたとかのたぐいである。温暖化については、産業革命期以降の温暖化よりももっと地球科学的なマクロな変動サイクルとみたいと、個人的には考えているが、本書で取り上げられるのは、こうした資源枯渇や温暖化関連の問題ではなく、もっと広い意味での人類による地球へのインパクトである。
本書は、人類が誕生することによって地球がどのように変化を遂げてきたのかを、人類が消滅した以降、世界はどのように変化していくかについて、関連領域のエクスパートにインタビューしてシミュレーションとして示したものである。本書は四部に構成されていて、第1部は人類による生物世界に対する影響力についての検証である。続いて、第2部は、人類が作り出してきた建築や都市、工業生産物、そして、放射能物質についてである。第3部は、引き続き人類が地球刻み付けてきた戦いや欲望の痕跡についてである。第4部は、人類が地球に刻み付けてきたものは、実はさしたるものではなかったかもしれない、という見方で書かれている。
新石器時代以降、新大陸(オーストラリアや南北アメリカ)に侵入していった人類はいわゆるメガロファウナ(大型動物)を殺戮していった。旧大陸においても、同様であった。こういった大イベントでないにしても、人類と動物たち、人類と植物たちの間には、様々なかく乱と殺戮、改変が存在したことはいうまでもない。例えば、品種改良を続けて人類との共存を選択した栽培植物は、おそらく、人類が消滅すれば、同じ道を歩むしかあるまい。
人類は、自然には存在し得ないほどの濃度の放射性物質を作り上げ、抽出し、拡散させてきた。こうしたなかでも半減期の長い放射性物質は、人類が消滅したとしても、地球に大きな影響を与え続けるだろう。しかし、山を削り、海岸線を作り替え、河川の堤防を気づき、町をつくり、地面を掘削し、耕地をつくって人類はその生存圏を拡張してきたが、ひとたび、人類が消滅してメインテナンスや更改が行われなくなると、数百年のオーダーで、自然が飲み込んでいってしまうだろう。
プラスチックなどの人工物は、物理的に粉砕されていくにしても人類が消滅した後も残り続けるだろうが、数万年もたてばひょっとしてこうした「資源」を利用する微生物が進化してくる可能背もあるだろう。
人類は、地球に致命的な影響力を持った存在であったかにみえるが、しかし、考えてみると、その生存圏はごくごく表層にとどまる。もちろん、大気循環や海洋循環によって、人類の生産物は拡散していったが、人類そのものを見たこともない生物は地球には多数存在するはずである。深海は水深200メートル以上深い海洋をさしているが、人類の手がほとんど届かない世界は、地球表面の半分以上もあるだろう。また、我々は生活高度もせいぜいが4-5000メートルぐらいだろう。こうして考えると、人類が地球上に及ぼした影響力は、ひょっとしてわずかかもしれない。
もう少し、謙虚に地球に向き合い、学んでいこうよ、というのがメッセージと見た。読むべしこの本。
出張前に読み始めたが第4部を読み残して出かけてしまい、読みさしになっていた。帰国して、早速残りを読んだ。
最近、温暖化関連のニュースや広告が目に止まらない日がないといっても言い過ぎではあるまい。例えば、自動車会社は石油資源の枯渇や温暖化に対応するために、ハイブリッド車や電気自動車などのポスト石油への技術開発に資本投下をつづけている。また、産業革命期以降のいわゆる温暖化により、珊瑚礁に立地する国々が海水面上昇のために存亡の危機にたたされている、あるいは、熱帯生物が媒介する伝染病が温暖化の進行とともに、流行域を北上させているとか、さらには、気候変動が著しかっくなたとかのたぐいである。温暖化については、産業革命期以降の温暖化よりももっと地球科学的なマクロな変動サイクルとみたいと、個人的には考えているが、本書で取り上げられるのは、こうした資源枯渇や温暖化関連の問題ではなく、もっと広い意味での人類による地球へのインパクトである。
本書は、人類が誕生することによって地球がどのように変化を遂げてきたのかを、人類が消滅した以降、世界はどのように変化していくかについて、関連領域のエクスパートにインタビューしてシミュレーションとして示したものである。本書は四部に構成されていて、第1部は人類による生物世界に対する影響力についての検証である。続いて、第2部は、人類が作り出してきた建築や都市、工業生産物、そして、放射能物質についてである。第3部は、引き続き人類が地球刻み付けてきた戦いや欲望の痕跡についてである。第4部は、人類が地球に刻み付けてきたものは、実はさしたるものではなかったかもしれない、という見方で書かれている。
新石器時代以降、新大陸(オーストラリアや南北アメリカ)に侵入していった人類はいわゆるメガロファウナ(大型動物)を殺戮していった。旧大陸においても、同様であった。こういった大イベントでないにしても、人類と動物たち、人類と植物たちの間には、様々なかく乱と殺戮、改変が存在したことはいうまでもない。例えば、品種改良を続けて人類との共存を選択した栽培植物は、おそらく、人類が消滅すれば、同じ道を歩むしかあるまい。
人類は、自然には存在し得ないほどの濃度の放射性物質を作り上げ、抽出し、拡散させてきた。こうしたなかでも半減期の長い放射性物質は、人類が消滅したとしても、地球に大きな影響を与え続けるだろう。しかし、山を削り、海岸線を作り替え、河川の堤防を気づき、町をつくり、地面を掘削し、耕地をつくって人類はその生存圏を拡張してきたが、ひとたび、人類が消滅してメインテナンスや更改が行われなくなると、数百年のオーダーで、自然が飲み込んでいってしまうだろう。
プラスチックなどの人工物は、物理的に粉砕されていくにしても人類が消滅した後も残り続けるだろうが、数万年もたてばひょっとしてこうした「資源」を利用する微生物が進化してくる可能背もあるだろう。
人類は、地球に致命的な影響力を持った存在であったかにみえるが、しかし、考えてみると、その生存圏はごくごく表層にとどまる。もちろん、大気循環や海洋循環によって、人類の生産物は拡散していったが、人類そのものを見たこともない生物は地球には多数存在するはずである。深海は水深200メートル以上深い海洋をさしているが、人類の手がほとんど届かない世界は、地球表面の半分以上もあるだろう。また、我々は生活高度もせいぜいが4-5000メートルぐらいだろう。こうして考えると、人類が地球上に及ぼした影響力は、ひょっとしてわずかかもしれない。
もう少し、謙虚に地球に向き合い、学んでいこうよ、というのがメッセージと見た。読むべしこの本。
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