『歌う船 (創元SF文庫)』
サイボーグテーマということで、手にとって読了。主人公のヘルヴァは身体に障害を持って生まれたために、脳だけ取り出されて機械の中で生きること(その代わり、どうやら、カプセルに格納されている限り生理的には不死のようだ)が余儀なくされた。本作品は、主人公のヘルヴァの成長をめぐる短編集となっている。
サイボーグだが「女の子」だというのが売りではあるが、本作の原作の1969年と現在では、その受け取り方が異なるかもしれない。私としては、読み進むにつれてなにか腑に落ちないものがある。やはり、ジェンダー的な既定的概念が引っかかってしまう。もちろん、サイボーグで宇宙船の「頭脳」として組み込まれているので、生身の「女の子」ではないのだが。ただし、現代的なジェンダー的視点としては、パートナーとなる「筋肉」(男性)には負けておらず、むしろ支配的であろうとするというところか。それなのに「女の子」たろうとするというセッティングについて、気になるということではある。ヘルヴァと同様にサイボーグとなった「男の子」もいるのだが、
もし、ジェンダー視点について、バリエーションをくわえて、本作のアイデアを拡張するとすれば、この「男の子」のサイボーグの活躍やその船の「筋肉」との交流や、「女の子」ヘルヴァとの交流が交えられるともっと、面白かったかもしれない。もちろん、1969年と現在の時間差というのも、考慮に入れなければならない要素ではあるのだけれど。