すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

今年の百冊目

2014年09月27日 | 読書
 「2014読了」100冊目 ★★
 
 『銀座の花売り娘』(伊集院静 文春文庫)

 『あの子のカーネーション』から始まる週刊誌連載のエッセイ集5冊の、いわゆるセレクト集のような形か、「二日酔い主義傑作選」と銘打たれてある。
 1988年から1994年までのこと…このエッセイ集は全て読んでいるなあと、題名を見ながら思った。

 ここ数年、テレビなどへの露出が増えてきた作者。
 本人曰く意識的にそうしているとのこと。それはある意味で「大人」(60歳を越えている人にこういう使い方も変だが)になったからだろうか。

 エッセイに書かれてあることは、「酒」と「博打」と「家族」、そして「花」「美」のこと少々といった趣であり、ある意味では「繰り返されるだらしない日常と後悔」の記録なのである。

 それでも、多くのファンを持ち、男性、女性を問わず「恰好よい男」の代名詞のような見られかたをしている。その魅力については分析している文章も少なくない。

 結局はメディアによって飾られた、造られた部分もあるだろうが、それらを越えてなお、惹かれてしまうのは何故か。
 文章の上手さはさておいても「無頼」の持つ強い引力を感じるのは、人間存在の根本に根ざしているような気がする。

 外的な規制が多い世の中で、それ以上に必要以上に自己規制をかけている我らの精神を、ほんの一瞬でも解き放つ感覚があるのかもしれない。
 伊集院のエッセイはパターン化しているとも言えるが、その感覚を味わいたい者には麻薬的な文章とも言えるだろう。


 この作家との出会いは、たしか90年代の初め。
 研修会へ同行した知人から電車の中で薦められた。
 その小説はたぶん『受け月』だったと思う。
 それからとすれば20年は越している。著作一覧をみたら、間違いなく半分以上、三分の二程度は読んでいると思う。
 小説にある物語性とは違う意味で、作家の生き方の物語に強く惹かれるからだろうと自己分析してみた。