すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

キズついて甘味が出たら,もう期限切れ

2014年09月29日 | 読書
 「2014読了」101冊目★★
 
 『リンゴも人生もキズがあるほど甘くなる』(外山滋比古 幻冬舎)


 「キズのついたリンゴの方が甘い」…科学的にどうなのかはわからないが,というより様々な条件があるので一概には言えないだろうが,その考えが,人生の歩み方に一つの示唆を与えてくれることは確かだ。

 野菜や果物の栽培,出荷では,品質第一とは言いながら,外観,形状が大きく左右されていることは常識だ。
 それは直接携わる農家だけでなく,流通業界や卸し,小売り等々,全般に行き渡っている。

 教育の場では「個性」「多様化」というスローガンが大きく幅をきかせているが,その実,数々の規制があり,結局のところ外観や形状に左右されていることも否定できない。

 そういう世の中に多くの人は違和感を持ちつつ,やはり「常識的な線」とやらを歩んでしまう。自分もまたしかりである。
 そして,おそろしいことに,その常識的な線とは,年々いや日々,窮屈な体制の方が少しずつ少しずつ位置を変えているように見える。
 そして,線自体も硬直化が進んでいるような気もするのだ。


 超一流の学者である著者が語ることに,いちいちもっともと頷きながら,ではどうするかと考えざるを得ない。
 この頃,よく公的な文章を書く場合にも「失敗体験」「挫折」という言葉を使っている気がする。 意図的にそのことを組むわけではないが,それらが価値あることを前提とした活動のあり方,その点を周囲にしっかり認めさせる連携等が,もっとも大事ではないかと考えるようになった。

 その意味では,随所に使える,いろいろと「応援」してくれそうな本だなと思う。コンパクトさもいい。

 ただし,教員にとっては怖ろしい一話がある。
 「教師と生徒の車間距離」にある次の一文には,思わず考え込んでしまう。

 教えるものと教えられるものの年齢差は,二十年以上,三十五年以内がのぞましい


 小学校に勤める自分は,とうに期限が過ぎている。